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B20F 地獄へ

 

 ガゴンッガゴンッガゴンッ。

 俺だけを乗せたエレベーターは加速度的に下降スピードが上がっていく。窓の外は真っ黒になっている。


 おいおいおい冗談じゃないぞどうなってるんだまずい何とかしないと。

 目につく操作盤を手当たりしだい触ってみるが、反応は無い。


 なんとか冷静を保とうとするが、言いようもない恐怖と、もはや落下と言ってもおかしくない速度のせいで意識が曖昧になっていく。


 遠のく意識の中、限りなく小さな声で、歌が聞こえた気がした。



 *きれいは汚い 汚いはきれい さあ飛んで行こう 霧の中 汚れた空をかいくぐり*



 ドンッ、という衝撃で意識が回復した。どうやら最下層に着いたらしい。

 だが雰囲気が妙だ。


 階層表示を見るとB20Fを示している。


 なんだこれ?B10Fが最下層じゃなかったのか?ボタンだって……あれ?

 エレベータの内装がそもそも全くの別物になっていた。操作盤も存在しない。


 ゆっくりとドアが開かれる。


「お、オエッ……」


 一言で言うならば、地獄。

 赤黒い地面からは人間の手や足のような木が生え、ところどころから赤い樹液を流している。

 紫色の空からは、ほつれあった腸のようなものが飛来し樹液を啜る。

 そして、腐った肉のような臭いが嘔吐感を煽ってくる。


 どれだけ待ってもエレベータが再度動くことはなかった。


「行くしかないのか…」


 なるべく余計なものを見ないようにしながら黄色い石で舗装された道を歩いていく。


 ダークグレーの巨大な岩の横を通ろうとして、気付いた。

 巨大な岩には、翼と、尾と、手と、足と、角が4本生えた頭があることを。


 巨大な悪魔の無数にある目の全てが俺を見る。蛇に睨まれた蛙どころの騒ぎではない。俺は身動き一つ取れなくなっていた。呼吸さえもままならない。


「が…る…ぐ…る…くす…」


 心臓を握り潰すかのような声色で何事かを呟いている。


「ふぉ…る…ふぃく…」


 悪魔の尾がしなると同時に。


 俺の右腕だったものがはるか後方に。


 籠手が微かに光ったような気がして。


 ネッサ、と呼ぼうとしたが。


「いと…」


 腹から生えた悪魔の尾のせいで。


 最期まで声を出す事は叶わなかった。



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