マブダチカシマシ三英雄
窓から日の光が差し込み、赤とブロンドのPちゃんが朝を喜んでいる。
俺の部屋にはダルとクワハ、あと黒豚のムラが集まっていた。
「さっそくネッサ呼ぼー。」
クワハから受け取ったミスリルの籠手を装着する。
昨日のうちにやらなかったのは、もう夜遅い時間になっていたのでネッサに悪いんじゃないかという意見が出たからである。
「も、もしもし」
例のポーズをやる。何かネタが滑ったみたいな空気になるのが絶妙な恥ずかしさを煽る。
「すぴーすぴー」
寝息が聞こえてきた。まだ寝てるようだ。
「ネッサー。起きてー。朝だぞー。」
ダルが籠手に顔をくっつけて起こしにかかる。ちょっと腕がくすぐったい。
「すぴ!んあぁ、おはよう!久しぶりだねー!」
切り替えはっや。そして寝起きでなおこのテンション。
「ネッサー。トールと結婚したー。」
「ええええ!!!!!!私のダルちゃんがぁ!!!」
声うるっさっ。籠手がビリビリ震えている。壊れるんじゃないかそのうち。
まあ、そうなんだよー!って返したいけど紳士な俺は弁解しておく。
「いや、説明すると長いんだけど」
「トオルは我の騎士となった。身を呈して勇者から護ってくれたのだ」
「ちょっとややこしくしないで魔王様」
むくれてるダルの頭をなでなでしているクワハ。なるほど、それが目的か。ちょっとアリかもしれない。
「クワハまで!? 一度に二人を攻略しちゃうなんてエロゲの主人公かよ! トオル!」
忘れてた。ネッサが身を置く世界の事。懐かしい言い回しだ。
「……やったの?」
「うんうん! 面白いエロゲいっぱいもってるよねー!」
なんか年頃の女の子に言われると妙な心持ちになってしまう。っていうか順応はえー。
そして近況やらトーナメントやらの話から、ムラの話題になった。
「ちょっと普通じゃないよねぇ、その剣」
「聖剣ムラです。よろしくお願いします」
怪しすぎる魔剣ムラ様。持つと剣豪モードになる上に、昨日はなんかチート殺し的なパワーを使っていた。
「僕の目的は女神のところに行く事です」
「ほう。何の為に?」
クワハの長い耳がピクリと動いた。
「今は秘密です。向こうに着いたら全て教えます」
「向こうって、場所は分かってるの? 私達も結構探したんだよ?」
ネッサが食いつく。そういえば3人は冒険者PTだったとか言ってたっけ。
「世界の端っこから行けます。ここからだと北の雪山の奥がいいです。というか船がないのでそこしかないです」
皆で窓から北の方を見てみる。真っ白な地面から真っ白な山がいくつも生えている。
「あんな所にか。 生き物が住んでいるかどうかも怪しい豪雪地帯なのだが」
クワハが不思議そうに雪山を見ている。
「そうと決まれ登山準備だね! マンガ肉一杯持って行こうねトオル!」
やっぱ強引だこの人。まあ体借りてるから文句は言わないけど。
でも質問はある。
「皆なんでそんなに女神に会いたがってるの?」
「まーまー。我々の悲願だからー。」
マスコット人形と化していたダルが喋り始める。
「女神に会ってからのー。世界の秘密を聞き出す。説教する。謝るまで殴る。三つの約束だぞー。」
「ふはははは! やはりダルは律儀だな」
三つの約束か、それぞれ三人で考えたのかな。多分最後のはダルだと思う。
「私は私の魔法の完成の為に色々知っておきたい、クワハは勇者を送り込んでくるのを止めさせたい、ダルは女神を殴りたい、だね!」
やっぱりダルだった。
「多分、僕と皆は利害が一致していると思います。すぐにでも案内します」
ムラの奴やけに急かしてくるな。でもまぁ今までの態度から嘘をつくような奴じゃないのは分かってる。
「なるほど、女神が何者なのかイマイチ想像できないけど俺も会いたくなってきたよ。明日にでも出発しようか」
「すまないが我は行くことが叶わん。ここを離れると情勢が偏った時に対応できなくなるのでな」
そういえばニ国の平和維持の為にここに拠点構えてるんだっけ。
それを考えると、どうみてもクワハが女神に思える。
「クワハの分までちゃんと説教しておくから大丈夫! 私たちに任せろー! ぱりぱりぽり」
「ネッサー。何食べてるのー?」
「ポテチ! 美味しいよー今度作ってあげるね!」
「わーい。」
あれ。 結局生身で登山するのって俺とダルだけなのでは。




