真剣じゃない勝負
結局、朝から感じていた違和感はこれだったのか。
ダルは真剣勝負で、手加減無しで、と何度も言っていた。もしかしたらこうなる事に気付いていて、釘を刺したのかもしれない。
それでもダルと傷つけ合うのは、嫌なのだ。
もう約束は守れそうにない。
真剣じゃない勝負で決着をつけよう。
「ムラ、豚モード。プランBだ」
「はい。わかりました」
「…なんでチャンスを逃したか聞かないの?」
「予想通りだったので」
俺だけが甘ちゃんだったらしい。
「どいつもこいつも、優しいのか厳しいのかわからん…」
ポケットの小瓶を開封し、小麦粉を黒豚に振りかける。
ぱっぱっぱ。
黒豚が白豚になった。
「……」
「チワワのモノマネできる?」
「ええ。得意ですよ」
「それじゃあ行くか」
氷の壁に何度も火の玉を撃ちつけ、溶かしていく。
撃ち込むたびに溶けていく氷とは対象的に、俺はどんどん冷静になっていく。
「よし、*照明* 」
白豚が発光する。
氷の壁は溶けてなくなり、その奥には目をまん丸にしたダルがいた。
「それ……。ジルわん……?」
「わんわん」
「……ッッ!」
ダルは背中を向けて退場してしまった。
「勝者、Aブロック代表のレベル2トオル選手!」
胸の奥がチクリと痛む。
結局両方傷ついてるんだよな…。
「なあ、気付いてたと思う?」
「さあ…」
「珍しく歯切れが悪いな」
むき出しになった白豚の角を撫で、退場する。
その日、ダルとは別々に部屋へ帰った。
辛すぎる
次の話でこのシリアスはぶっ飛ばしたいと思います
書けるといいなぁ




