一日前の作戦会議
──第10回トーナメント魔王ピック新聞──
さあ大会はいよいよ明日開始です!皆さん心と体の準備はよろしいでしょうか!?
厳正なる抽選の結果、トーナメント表が出来上がりましたのでご覧ください!
大会運営の方々も徹夜でトーナメント表作成ありがとうございました。魔王様がこぼしたコーヒーも何とか絵で誤魔化せましたね!それでは魔王様最後にどうぞ。「今回も錚々たる顔ぶれだな。だれが勝ってもおかしくないぞ! 勇者もいるようだしな? ふはははは! 明日を楽しみにしているぞ! それと20階に馬小屋があるからレベルアップを忘れないように」
「俺はAブロックか」
「二つ名変えてもらうー?」
「いや、もういいや…あとで馬小屋行こうな」
っていうか初戦勇者なんだけど。どうすんだこれ。
「クワハは籠手だけこっそりくれたりしないのかな?」
一応聞いてみる。
「むりー。少なくとも大会終わるまでは話聞いてくれないよ。」
まあ、そういうやつだよな。
「それでダル先生、勇者対策は?」
「うむー。場所を変えようかー。」
──30階──
サンドバッグを叩く乾いた打撃音と、フロアを滑るシューズの摩擦音が絶え間なく鳴り響く部屋。その中央に設置されたリング上に俺たちは居た。
「ヨッシャー! どこからでもかかってこい!」
とりあえず仰向けに転がり、ダルを挑発してみる。
「…勇者は基本、魔法使えないので遠隔攻撃が有効だよー。」
スルーされる。せつない。
「でも俺、あの変な剣しか…ん」
魔法覚えてたんだった、えーとサモン…サモン…
「*サモン・フライシュ*」
「あ。こんなところで。」
全身の血の脈動を強く感じる。心臓から胸、胸から肩、肩から腕、腕から手。指先からするすると抜けていく赤い糸が中空へ伸び模様を描く。幾何学模様、宇宙の誕生。
強烈な目眩を感じながら全ての糸を出し切る。
チカチカと点滅する電灯。辺りは静寂に包まれている。
浮き上がった赤い魔法陣が鈍く光りだす。
一瞬の閃光。
光が収まるとそこには
「おー。召喚魔法すごい。大当たり。」
屈強な一本の骨。それを囲むようについた分厚い肉は絶妙な焼き加減で見る物の目を奪うと思う。
「マンガ肉じゃねえか!!!」
「でもすごい美味しそう。じゅるり。」
「…食べる?」
「ひょいぱく。うめえ!!!」
常に半開きだったダルの目が開眼した。口角が釣り上がり狂気の表情を浮かべている。腹減ってたのかな?
というかダルの覚醒久々に見た。
この日は二人でマンガ肉を食べるだけで終わった。
小さい頃、まんが肉食べたすぎてお母さんに泣きながら頼んだことがありました。




