異世界
眠りから覚め、目を開く。
お月さまのシャンデリアが目に飛び込んできた。見事に夢の続きだ。
「おおおお…えぇええ!?」
感嘆の声を出すつもりが驚愕の声に変わっていた。
女声だ。全然知らない人の女声なのだ。
さっきは声なんて出なかったのに。
五体に意識を向ける。何だか妙にリアルだ。
シーツの質感。起き上がる感触。地に足をつけて立つ。筋肉を動かし、歩く。
姿見まで移動した。
艶やかな朱色のロングヘアー。はつらつとした目は好奇心に満ちているように見える。
全身を覆う古風なローブからは大人とも子供ともとれるシルエットが浮かんでいる。胸はあんまりない。
右手には全体的にエメラルドグリーンの色合いの凝った意匠の篭手がつけられていて、光沢具合から金属だと思うが、随分と軽い。
夢にしてはあまりにもディテールが細かい気がする。
とりあえず折角なので、頬をつねるような無粋な真似はせずに探索してみよう。
まずは寝室から出るためのドア…に貼られたA3版くらいの巨大なメモ紙に注意を向けてみた。
*おはよう私!起きたらはじめにこのポーズして!*
と書かれた文字の下に難解な絵が描かれていた。
小鳥のようなキャラクターの三本目の足?が腹から伸びて電話の受話器的なものを握り、耳に押し当てている。
うむ。全然わかんない。
とりあえず保留にしてドアを開けると、寝室よりも二回りほど広い部屋に出た。
本棚。薬品棚。UFOキャッチャー。キッチン。電子レンジ。こたつ。あとよくわからないものとかがちらほら。
動物の絵が描かれた窓からは陽光が差し込んでいて全体的に明るい。
うーん、俺以外いないし、俺の家?
キッチンの前で呆然としていたところでドアをノックされた。
「ネッサー。入るよー。」
ドアが開くと、金髪で碧眼のロリッ娘が躍り出てきた。