1/1 告白×異世界
22時に次の話を投稿します。
俺、逢坂幹人、17歳は、もうすぐ青春の一ページをめくる。
朝、机の中に手紙が入っていた。今日の昼休みに中庭の桜の木の下に来てください、という内容で隣のクラスの女子からだった。うちの高校では中庭の桜の木というのは大人気の告白スポットとして有名だ。桜の木の下に来てください、はイコール、告白しますよなのである。
告白されるなんて人生で初めてだ。顔はイイはずなのになんでだろう。他がダメなのかな。そういえば最近聞いたのだが、女子の間で俺は''残念なイケメン''って呼ばれているらしい。女友達になんで残念なんだよ、と聞いたところ、ん〜全体的に?と逆に疑問形で答えられた。他の女子からもなんとなく惜しい感じがする、と言われた。ちょっと泣きたくなった。
なんだよっ、なんとなくって!理由を言えよ、根拠を持てよっ!じゃないと改善してモテモテになれないだろっ!現状いくらモテる努力をしても焼け石に水、スマホ壊れてるのに知らずに頑張って電源ボタン押してるバカみたいになるんだよぉぉぉ。。
あっ、ちょっと涙出てきた。
だが、そんな悩みとも今日でおさらばさ。これから俺は今まで味わえなかった青春を味わえるのだ!
ん、ちょっと待てよ。これ、期待させるだけさせといてもしかして告白じゃないパターンなんじゃ…
なんだろう、フラグがビンビンな気がする。
まぁ、落ち着くんだ幹人。わざわざ桜の木に呼んだんだぞ。どっかの教室ならいざ知らず、告白スポットとして人気の中庭の桜の木だ。さっきもいった通り、告白しますよ、と同義だ。そんな誤解されやすい所に別の用事で呼ぶなんて、それはもう意図的なもんだ。
…はっ、意図的。まさか、ざんねーんドッキリでしたー。期待した?、みたいなやつなんじゃ。。
いや、あの子はそんな事をする子じゃない。…いやいや、誰かから命令されてとか、罰ゲームだったらやるのかな?どうする俺、どうする逢坂幹人。
「逢坂くん、何やってるの?」
背後からかかった声に振り向くと、俺を呼び出した本人、水沢茜が立っていた。
「えっ、あぁ何でもないよ。」
周りを見ると他の生徒達も訝しげに俺のことを見ていた。思案中の俺は大層ヘンだったらしい。中にはボソッと顔はいいんだけどなぁ、と呟くやつもいた。
「ふふっ、逢坂くんらしいね。」
茜は清楚系の女の子だ。隣のクラスで委員長をいるので、同じ委員長としてちょくちょく顔を合わせている。会えば挨拶して、少し話すぐらいの関係だったので今回の呼び出しは少し意外だった。
「そうかぁ?…で、話ってなんなの?」
素知らぬ風を装い問う。さっき考えたこともあるので少し警戒する。まぁ、半分以上はこういうシチュエーションに慣れてない故の照れ隠しだ。
「もう、逢坂くんは意地悪だなぁー。ここに呼び出したってことは、わかるでしょ。」
「…本当に?罰ゲームとかじゃなく?」
要件は本当に告白らしい。だが、まだ安心はできない。嘘の可能性だってある。聞くのは失礼な気がしたが、聞かずにはいられない。
「何言ってるの?本気だよ。」
うおっ、自分の鼓動が早まるのを感じる。なんだろう、心臓だけがプカプカ浮いている感じがする。
「初めて見たときから好きでした。一目惚れです。もしよかったら付き合ってください。」
キタァァァァァァ!俺にも遂に青春が訪れた。
しかし、まだ焦るな。落ち着け俺。ここはゆっくりと溜めて返事をするんだ。頑張って言ってくれたんだ、こちらも誠意を持って返事をするんだ。
目を瞑り大きく深呼吸をする。
よしっ、
「よろしくお願い…し…ます?」
目を開けるとそこには見知らぬ男の顔があった。
「誰だ!オメェェェェ!!」
思わず俺は叫んだ。
◇
漆黒の床が広がるだけの場所。光源はどこにもないように思えるが、何も問題なく見える。
さっきまで学校にいたはずなのに、茜や他の生徒達もいないぞ、疑問は次々に生まれるが頭が追いつかない。追いつかな過ぎて逆に落ち着いてしまった。
「えと、大きい声を出してすみません。どちら様でしょうか。あともしよかったら、ここの場所も教えて頂きたいんですけど…。」
さっきはノリに任せて叫んでしまったが、落ち着いて男の顔を見ると途轍もなく怖い。どっかの組の若頭みたいだ。
「■■■■?▲▲▲▲?」
「はい?」
男は何かを喋っているのだろうが何を言っているのかわからない。今まで聞いたことのない言葉だ。
男は困ったように顔をしかめ、そして突然ハッと目を見開いた。
「''■▲■▲''。誠に勝手ながら''翻訳''の魔法をかけました。これで意思疏通が可能かと。」
俺の体が発光したかと思うと急に男の言葉が分かるようになった。
「えー、いろいろ聞きたいことあるんですけど、取り敢えずここが何処なのかとあなたの名前を伺いたいのですけど…」
魔法とか気になる単語を言われたけど、取り敢えずこの質問。現状把握、現状把握。まさか中二病を拗らせて、俺を誘拐したとか?えっ、でもなんで俺?しかも目を瞑った一瞬でとか無理じゃ?
いや、あのくらい怖い顔なら何でも出来そうなオーラがあるな。
…ごめんなさい。失礼なこと考えたこと謝るから男の人、顔をしかめるのやめて。あんたのただでさえ怖い顔がさらに怖くなってるから。
「…ここは幽界にあるバルヘルム様の空間でございます。そして、私の名はサタン、覚えていらっしゃいませんか?」
聞いたことなくはない。確か悪魔の王様とかだったはず。しかし、覚えてるかと言われてもそんなにつけるのに勇気がいる名前の知り合いはいない。
「まさかご記憶を失われたのですか。神核から主様であることは明らか。」
「間違いないですね。記憶を失っていらっしゃる、しかも言葉まで。宇宙を超えた代償ですかね。」
何もない所から男が出てきた。そのまま男はサタンと名乗った男と話し始めた。サタンもそれが普通のように話している。対して俺はあんぐりと開いた口を閉じられない。
「お久しぶりですね。バルヘルムです。以後お見知りおきを。」
サタンとの話を切り上げ、バルヘルムは矛盾したような挨拶をしてきた。
「おっ、逢坂幹人です。よ、よろしくお願いします。」
ビビってちょっと噛んでしまった。
「どこから話せばいいでしょうかね。まず、ここは貴方がいた宇宙とは別のところです。そうですね、いわば異世界といった所でしょうか。」
異世界!?マジかよ。えっじゃあ魔法とか本当?俺も使えたりするのかな?
今までビビっていたのが嘘のようにテンションが上がる。
「貴方のがいらっしゃったところには宇宙の中に沢山の星があります。一方こちらは宇宙 ーそら、と呼びますがー の中に世界という概念のものが四つあります。今我々のいる幽界、そして魔界、神界、人間界です。」
魔界、神界!チョー異世界っぽい。
頭の中に渦巻いていた疑問も吹っ飛んでしまった。
「そして貴方はこの世界を創った神の一柱、アーラ=マユなのです。」
うぉー、俺が神かー!
「って、え?」
「貴方は過去、配下の裏切りに遭い、その傷を癒すため貴方が今までいた地球に向かいました。おそらくその代償でしょう。貴方は神だった時の記憶を失っています。」
幹人よ、一回落ち着け。ここは異世界、俺は神。さっきまでテンションで誤魔化してたけど、もう無理だ。
「嘘だろぉぉぉ!」
俺の叫びは虚しくもこだましなかった。気まずい沈黙が流れる。
「信じられないのは無理ないでしょう。サタン、そろそろ人間界へ。そちらに行った方が分かりやすい。それに貴方達がいますしね。」
「準備は出来ております。」
サタンはそう言って指を鳴らす。俺の足元に大きな魔法陣が広がった。
「えっ、なにこれ?」
「では、マユ様またいつか。」
バルヘルムはそう言って俺から離れた。
「では、参ります。」
サタンが魔法陣の中に入る。
「ちょっと待ってぇぇぇぇ!」
バルヘルムの笑顔が憎たらしい!