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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

荒野を照らす太陽(仮)

作者: 森下冬子

私は彼を欲し、彼もまた同じであった。


あれから八年、私たちの運命は情熱を帯びて再び絡み合う。

彼と再会して三か月が経った。

八年間私が探して探してやっと見つけた宝物。そして彼も同じく私をずっと探し続けていてくれたという事実、そしてあの日から枯れていた私の心に再び涙が溢れ出した。


こんなに近くにいたのにどうしてもっと早く会えなかったのだろう。

でもそんなことはもうどうでもいいのだ、もう私たちの糸は結ばれたのだから。



三か月前。


それはたまたま葉書が来た同窓会にて、偶然にそして突然に訪れた。

私は会場に入って目に留まった男の後姿を見てすぐに彼だと解った。

少しヨレ気味のビジネススーツを着ているが雰囲気が昔とまるで変ってない。


まさか彼が同窓会なんて場所に足を運ぶことはない、でも一応見てみようと参加したわけだが。


本当に来ていたとは、八年間の想いが破裂しだして頭の中が真っ白になってしまう。

私は相当に動揺したが一旦冷静になるためにトイレで化粧を直し気合を入れた。


毎日この大きなホールで祝い事が催されているのだろうが、今日は私にとって本当に最高の日だ。


今日の同窓会を企画してくれた幹事の誰かさんに私は心から感謝した。

会場に戻ると私は宝物をとうとう見つけられたという嬉しさで胸が高鳴り、無意識に磁石が引き寄せられるかのように彼の方へ向かっていく。


ずっと、ずっと探してたんだよ。


そして一人グラスを片手に突っ立っている彼の後ろから恐る恐る

「あの、薫だよね・・・」

そう声をかけると、彼はその瞬間すぐにこちらに振り返って私の顔をじっと見た。


「エ、エリカ・・・なのか。本当に、お前なのか?」


開口一番、幽霊でも見たのか様な彼の顔の驚き様は尋常ではなかった。

私は何か悪い事でもしてしまったのかと不安になったが何とか会話を繋ごうとした。


「そうだよ、アンタの相棒だったエリカよ。まさか顔忘れた訳じゃないでしょうね」


「・・・忘れるわけない、忘れるもんか、本当に会いたかった。・・・俺の俺の・・・やっと」


彼は半泣きで体が震えていた。

その時、私は彼が戦時中から心を蝕まれていたことを思い出した。


「もう帰ろう。あなたここにいたらきっと辛いでしょう。私も辛いから」


「俺も・・・帰りたい・・・昔に・・帰りたい」


昔に返るのは無理だけど、せめて心が落ち着く場所へ彼を連れて行かなくてはと思った。


その後は、ちょっと強引というか、私の我儘な展開になった。


「私の家で話さない、朝・・・帰ればいいじゃん・・・」


私はストレートに言った。別にやましい気持ちなんてなかった。


彼と再会した同窓会を途中で抜け出しお互い帰ることになったのだが、私はどうしても彼を帰したくなかった、もっと一緒にいたかった。


彼が一緒にいてくれるならどんなことでもする位の気持ちでいたのだ。


このまま手を離したらまた彼はどこか遠くに行ってしまうのではないかという不安感が頭の中を支配して、私は努めて冷静を装ったがどうか彼が私の誘いに乗ってくれますように心から天に祈った。


こんな罪人の声を神は聴いてくれるだろうか。


「なら・・・じゃあお言葉に甘えて。俺もお前と話したいこと沢山あるし」

霧雨の歩道橋の上、その願いは叶った。


ただ二人でいられれば・・・それだけで。


でもできたら、触れたい、宝物の彼に触れたい。

私は嫌らしい女なのだろうか。


人間の男と女が一晩を過ごす、私はそれとなく帰りに寄ったディスカウントストアで、そのもしかしたらに備えて一箱だけ準備をしておいた。


古い家のアパートの中で気丈な私は精一杯の事をしたと思う。


三つのグラスの中にスパークリングを注ぐ彼は真剣で、決して今を楽観的に生きてはいなかった。


私たちのあの時代、仲間たち、残された者の悲痛、それを忘れることなく同じ様に自分が咎人であることの重圧にずっと苦しめられてきたのだ。


勲章を沢山授与されいくらでも裕福な暮らしをしようと思えばできるにもかかわらず、彼は私と同じように偏狭な薄暗い場所で己の存在を隠しながら生活していた。


そんな彼の想いを聞いた時、同じ様に苦しんできた彼を強く抱きしめてあげたかった。

他人からしたらただの傷の舐め合いなのかもしれないが、私以上に孤独を抱えたこの人に少しでも癒しを与えられたならそれ以上は望まない。

 

あの夜の彼は笑って冗談を言ったりもしていたが、どうにも本気で笑っているようには見えなかったそれが虚しくて、私はとても気がかりだったのだ。


散々家で酒を飲んだ後同じベッドで私たちは眠った。


そしてあの日の真夜中、きっと気づかれないと思って眠っている彼から奪った荒れた唇。


それは以前、争いの終幕の日にどさくさに紛れ砂漠を走るタンクの蓋の上で私たちが交わしたキスと少し似ていた。


私たちの戦いはやっと終わった。

疲労と安堵、そして回転し続ける罪の意識。


彼は起きないだろうと踏んだけれど、目覚めてしまった。

そしてしばらく話を黙って聞いてくれた。


その後、彼も八年間私をずっと探し続けてくれたこと、私をずっと大切に思っていたという事、傍にいたかったけどバラバラになってしまいそれに気づくのに遅かったこと。


そして昔も今も私の事を軍人としてではなく一人の女として見てくれていて、今もずっと変わらず愛していると真剣に言ってくれた。


信じられなかった。

こんなことってあるのねと、私は自分が愛している人にまた逢えただけでも感謝なのに、もう幸せすぎて泣き出して訳が分からなくなった。


それと同時に自分にこんなに幸せになるその資格があるのか急に不安になった。


彼とは十五から二十一までずっと軍人としてのペアで密偵と要人暗殺、戦場の先遣隊や国内のテロリズムの阻止など過酷な任につくことも多かった。


その中でも私は「静寂」異名がつく程、冷徹無慈悲なアサシンとして仲間たちからさえも怖れられる存在になっていた。


「静寂」が動けば敵艦一隻制圧するのに何の物音もたたない間に死体の山が出来、彼女だけで事足りると言われていた。

確かに私の任務の成功率は群を抜いていた。


そして、その返り血の量も群を抜いて多かったことだろう・・・。


その返り血の量が増える度に、上層部から受ける勲章が増えていった。

忌々しい、呪いの勲章が一つ、また一つと私の胸を飾る時また一歩人間から遠ざかっていく自分に気づく。

けれど私には敬礼して勲章と報奨金を受け取る他に選択肢などなかった。


これは与えられた名誉なのだから。


私はただただ悔しかった。


こんなものを手に入れるために私は生きてきたんじゃない。

こんなもの、何の役に立つというのだ。


私はただ、静かに簡単に人を殺せます。

あなた方の家族や大切な人をいとも簡単に葬れる、私は非常に残忍な女なのですと宣言しているようなものではないか。


これが正義?


ならなぜ目の前の人はこんなにも泣き叫んでいる。

どうしてこんなに苦しそうに喘いでいる。

正しいはずの私がどうして彼らの苦しみを増やしていく、どうして救ってあげられない。


立場?護るために引き金を引く?

そんなの人を殺したことのない人間たちの綺麗事よ。

多くの子どもの肉が裂け血が噴き出す瞬間を見たこともないような大馬鹿どもの戯言よ。


人を殺すのが正義に繋がっているのなら、いっそそんなもの壊れてしまえばいい。

そんな正義なら私が喜んで葬ってやる。


銃剣から肉を引き裂く感触を知らないあんた達に、一体何が分かるっていうの。

それを思うと、今でもはらわたが煮えくり返りそうになる。


それから終幕の後、きっと私も彼と同じようにしばらく動けなかった日々が続いた。

まるで廃人になった様だったのだ。

部屋の中はゴミ捨て場と大して変わらないくらいの汚れ様だった。


自分のしてきたことを常に肯定していなければ頭がおかしくなる。

相手が悪だったのだと思わなければ、自分の罪に押しつぶされそうになる。


けれど幸いにも時が経ち私は少しずつ、外に意識を向けることができた。

今更、立派な人間にはなれないけれどせめて神が与えてくれたこの人生を全うしようと。

ただそれだけだった。

.

そしてこの同窓会の夜、彼は私の呪縛をさらに断ち切ってくれた。

言葉こそなかった、いやただ舞い上がって覚えていないかけかもしれない。けれど確かに私は彼と出会って自分の重荷が軽くなった、そう感じたのだ。


彼はベッドの中私と向かい合わせになって

「お前と会えてよかった、探し続けてよかった。そして生きててくれてよかった。もしまだお前が俺に本気でいてくれてるなら、これからは軍人としてじゃなくまたパートナーになって欲しいんだ、今度は男と女として」

と言ってくれた。


私が、首を縦に振って、泣きながら。

「勿論です、私でよかったらずっと一緒にいてください」

なんて柄にもない事を言ってしまった。


たまにこういう弱い女の部分が出てしまうが、彼はそんな私のギャップが大好きだとも言ってくれた。


それからはベッドの中で痛いくらい抱きしめられた。


そして腕の中で彼の鼓動が早くなるのを感じながら、彼は女としての私を受け入れて一つになってくれた。

何の躊躇いもなくこんな意地っ張りでわがままで血で汚れきった私を受け入れてくれた。


私はその柔らかな心地よい熱と汗や男性の匂いよって、生まれて初めて何度も気を失いそうになるほど満たされ彼と共に溶けて混じりあった。


彼もまた私の激情に相呼応するように乱れた意識の中で本能のままに私の全てを欲した。

愛は崇高なものだけど、今晩の私たちの愛し方は少し違っていた。


私たちは、罪深く、汚れている、けれどもそれでも生きていく。

そんな想いの中どんどん肉を喰らうライオンの様に野性的に求めるようになって、おおよそここには書けそうにない事を沢山した。


その晩、私は自分がどれ程性欲の強い女かという事を思い知らされた。


私も彼もお互いの全てを感じたかった、ただそれだけなのかもしれない。

私は時々女の部分を演じようと恥じらって見せたが、体は正直でもう芯まで快感に浸かってしまっていた。

どんなに恥じらっても体は嘘をつけなかった。


過去に男と寝たのは一度きり、薫の事を忘れるための愚かな一夜だった。


しかもそれは最低なもので、もう男と身体を重ねるのは止そうと思った程だ。

そんなことで薫の事を忘れることなんてできはしないってわかっていたのに、私はバカな女だった。


でもそんな話も彼は、お前が謝るのはおかしいしそんな嫌な記憶俺が忘れさせてやると本当に心の籠った愛撫をしてくれた。


彼の愛撫はこの世のものとも思えないくらい壮絶で、・・・いやでも彼は女を誰一人知らないし本来は下手なのかもしれないが、もう彼という存在自体が私の癒しであり隣でキスをくれるそれだけで私は信じがたい程体中が昂ってしまっていた。


一人一人の力は弱くとも、こうして二人がつながっている時、どんなになっても明日に向かって進んでいくという必死さが生まれお互い次第に強くなれた。


もうこれ以上の幸せなんて私にはない、ならもうここでこのまま死んでしまいたいと思う程の究極に満たされた時を過ごした。


そこにはかつて「静寂」と呼ばれた私はもういなかった。

彼の腕の中では私はただの一人の女でしかなかったのだ。



そして翌朝、目が覚め生まれ変わった私が恐る恐るベッドの横を見ると、すやすやと眠る彼の無邪気な寝顔があり私はホッとした。


それが私たちの出会いが夢でないことを証明してくれたからだ。




あれから冬になり、私のお願い通りに彼はこの古びたアパートの隣の部屋に越してきてくれた。彼と共有する時間はとにかく毎日が特別だった。

もう昔の様に汚れたぼろきれの煤にまみれたテントで爆撃におびえることもない。


支給された冷たい泥水の様なスープを啜り、互いに体を震わせることもなく狭いけれども温かい部屋で明かりの付いた家に戻ることができる。


合鍵を持っている彼が勉強を終え、先に帰ってきて毎晩仕事から戻ると私のために食事を用意してくれていた。


その優しさと少し間抜けな笑顔と段々と冗談を自然に言うようになった彼に私は毎晩感謝した。


彼は昔から私にとって太陽の様な人だった。


それは軍人時代からずっと変わっていない、だけど最後の方は私が病んだ彼の代わりに太陽になり彼を支えた。


助けて合い何とか二人は生き残ることができたのだ。


彼は昔から情に脆く仲間想いだった。だからその分、心も繊細で人一倍責任感が強かった。

きっと、終幕後は相当なダメージを負ったことは想像に難くない。


そんな彼が自分の心を闇の内から回復させていくのは少し時間がかかるかもしれない。

でも私はそれでもいいと思っている。

ここ三か月の間にも彼が昔の様に苦しみに陥ったり、ある時は酷くうなされたり大変な苦痛を強いられた時も多々あった。

けれど、そんな時私はいつなんどきも彼の事を面倒に感じたことはなかった。唯々少しでも彼の苦しみが和らぐように少しでも長くそばにいたいと思った。私にできるのはパートナーとして彼の苦痛を和らげることだけだから。


それに彼は私の心配を遥かに上回る程の沢山の幸せを私にくれる。


時にはいつも私の方が支えてもらってばかりな感じもしたりして心苦しくもなるが、素直になれなくて「あんたってほんと間抜けね!」なんて心にもないことばかり言ってしまう。


本当はそんなこと微塵も思っていないのに。

あなたほど頭がきれて仲間想いの人はいないわよって言ってあげたいのに・・・。



それから今年のクリスマスは誰かと共に祝えることを本当に嬉しく思う。


数年前までは仕事帰りの道がこんなにワクワクするなんて考えられなかった。

仕事は楽しいし、一人の家に帰るくらいならいっそ会社に泊まってずっと仕事だけをしていたいくらいだった。


でも今は違う。

帰り道、その一歩一歩を進んでいくのが楽しくて仕方ない。


冬の空は澄んでいて、星が綺麗で私はこの街の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。


今頃、私の家族はどうしているだろうか。

雑草の生えた薄暗いデコボコの近道を進みながらふと頭に過る子どもだった頃の記憶。


終幕が来て六年ぶりに帰った私の住んでいた場所は既に更地になっていて何一つ残っていなかった。

十五の時は当たり前のようにあった場所と景色、今は全て燃えて消えてしまっていた。


もし、もし生きていてくれたなら、ママたちが幸せでいてくれることを願ってやまない。


そんなことを考えているうちに自分のアパートについた。


玄関のドアを開けると明るい部屋からチキンの芳ばしいにおいが私を迎えてくれた。


そして、おかえりと狭い廊下のキッチンから顔を出して笑顔で迎えてくれる彼は三か月前とは少しだけ変わって、全体の固いオーラが柔らかくなった印象を受ける。


相変わらずヨレヨレのジーンズとパーカーを着ていて服装が子どもっぽいとこは変わっていないが。


そしていつもの小さくて華奢なちゃぶ台にはクリスマス仕様の本当に素敵な御馳走の数々。


部屋には似合わない上品なロゼも用意されていて、この汚れた壁紙の部屋が王宮の一室の様に見えてくる。


そして両手をばっと広げた彼が大げさに

「どうぞ、シンデレラ今宵は一緒にディナーはどうです?美味しいですよ」

などと私に語り掛けるのだ。


彼がこういう芝居じみたことを言うと私も思わず役に入ってしまうところがあって、付き合いの長い彼はそういうところも全部お見通しなのである。


「え、あ、はい!私でよければ、喜んで・・・薫はホントに優しいんだね」


「あたり前です。私のシンデレラですから」

こんな、ちょっとバカみたいなやり取りだけど、彼が本気で語りかけてくると自分は本物のシンデレラなんのだと思い込んでしまいそうだ。


しかし初めて彼の作った料理を口にした時、こんなものが作れるなら一人で住んでいる時も料理ぐらいしたらいいのにと思った。


彼はあのボロ長屋にいた時は何一つ作らず一年中同じようなシリアルやレトルトや日雇いの職場から支給された冷たい弁当ばかり食べていた。


でも彼は、独りならわざわざ食事を作る理由がないと言う。


寒い日の冷たいシリアルは昔を思い出すし美味くもなんともないが、いざ料理を始めると一人で鍋に火をかけている間が虚しくて、とても苦痛な時間で耐えがたかったらしく、そんな時に不意に孤独感を覚えると体が震えだし呼吸が乱れてどうにかなってしまいそうでそれ以来作っていないという。


だから冷たいインスタントなものを毎日口にしていた方が心は楽でいられる。


冬に感じる隙間風吹く部屋の冷たいミルクの感覚の方が何倍もマシだったと聞いた時、この人の心はこれ程までに抉れて膿んで痛み切ってしまったのかと私も胸が張り裂けそうになった。


だから私は護りたかった。

彼を傷つける全てのものから

私はこの血を流してでも彼を護りたかった。



「さあ、食おうか今日は結構上出来だとおもうけど、食おうぜ」


そう言ったかと思うと彼は私の隣に腰かけて唇に軽くキスをした。

「え!?何?」


「いや、いつも一人でお互い家族も見つからない。でも今年は違う、お前と家で神のバースデーを祝えるんだ。俺は本当に嬉しいよ、それにお前が食べてくれるおかげで料理するの全然苦痛じゃなくなったんだ。お前が美味そうに食べてるとこ見ると俺すごく幸せでさ。これからもエリカと一緒にいたい、よろしく・・な?」


ほら、こんなさりげない幸せやサプライズを彼は私に沢山くれるから。

彼はやっぱり私の宝物、そして太陽の様な人。


「あなた・・・。すごい今日は優しいのね、あ・・・もしかして今夜仲良くしたいのかなぁ~?ふふ・・でもお礼言うのこっちよ、いつもこんな風に迎えてくれて勉強も忙しいんでしょ?私も今とっても幸せだよ。会社の先輩なんかに話したら三か月くらいじゃなんも分かってないから新鮮なだけよ、お互い知らないところが出てきて倦怠期が来るわよ。なんて言われるかもしれないけどね」


「倦怠期ねぇ。ちょっとほかのカップルと事情が違うからな、六年間も殆ど二十四時間一緒にいた様なもんだしな。確かにエリカと恋人になってからはまだ三か月で新鮮さは確かあるけど、それと同時に昔からの中だから妙に落ち着く自分がいてさ、俺のおかしかった時もありのままを受け入れて看病してくれたろ家庭に入った気分かな。あ~来るのかね俺達にも倦怠期とか」


私は一瞬びっくりした。

家庭って、それって・・・。


「あ、そ、そろそろ食べましょ。折角作ってくれたのに冷めてしまったらいけないから」

「そうだ、忘れてたわ」


そして私のグラスにロゼを注いでくれた。


「エリカ、二人でに祈ろう。ジーザスの誕生日そして俺達のこれからを、メリークリスマス」

「私もあなたと祈ります。そしてこの先も二人でいられますように、メリークリスマス」


これから始まる新たなストーリー。


孤独を超えたその先にある誓いで結ばれた深い二人の絆。




メリークリスマス。



そして全ての人々に神の祝福があらんことを。



第二章 序章 完


そして明日は誰にも分らない。


しかしそれが尊いと思える時もある。

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