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08:南の森、再び

 ヴァースに降り立った地に再びやって来た。

 と言う程、大袈裟な事は無くリリィと一緒に薬草採取にやって来た。

 アングレナの南門を出たらすぐ森になっていて、出入りもギルドカードを見せたらすんなり通れた。

 南の森はかなり広大で奥にそびえるルーエン山脈まで続いており大陸でも一、二を誇る規模だ。

 私が降り立った湖までは割と安全で魔物は少ないが、湖より奥に行くと危険度が増し、凶暴な魔物が住み着いているらしい。

 その為、湖より奥はBランク以上推奨とされている。

 比較的安全な湖の手前側は薬草採取、魔物・動物の狩猟、木材の調達に訪れる人も多い。

 日帰りで危険度が低いから冒険者初心者の定番スポットとなっている。

 今回は赤紫の葉、鈴鳴草、カサの実の採取だ。

 赤紫の葉の木は森の至る所に自生しており、特徴的な赤紫色の葉をしているので見つけやすい。

 鈴鳴草は水辺に生えるみたいなので湖まで行けば見つかる様だ。

 カサの実は人並みの背丈の木になり、黒く棘のある拳程の実で森では珍しくない植物だ。

 見た目を聞く限り美味しそうには思えない。

 実際、渋くて不味いが下熱作用があり薬としてはかなり重用されているらしい。

 そんな訳で湖に向かいながら道中、赤紫の葉とカサの実を採りっている。

 どちらも簡単に見つかるので採取には苦労しない。

 途中で魔物に遭遇する事も無く湖に着いた。


「鈴鳴草は水辺に生えてるんだよ。あった、あった」


 リリィは水辺に生える葉が房になっている草を手に取る。


「枯れるとこの房から音が鳴るから鈴鳴草なんだって」


 そう言って生えている鈴鳴草を籠に入れていく。

 よく採取しているのか手慣れてるいると思う。

 私もリリィに負けじと鈴鳴草を採って籠に入れていく。

 やはりそこは経験の差かリリィの方が見つけるのが早い。

 初めてだから仕様がないかな。

 森にいたいて気付いたのが自分の角をよく枝に引っ掛けてしまう事だ。

 前世では角なんて無かったからつい、頭の上ギリギリでも大丈夫と言う感覚で頭を下げてしまうのだ。

 痛くは無いが人に見られるのは恥ずかしい。

 実際に太い枝に角を引っ掛けてひっくり返った時にリリィから「天然さんだね」なんて言われたし。

 今までそんな事を言われた事は無かったのに……。

 尻尾は地味に昨日の夜にやらかしていたりする。

 私の尻尾は割と長くてゴツいから普段は引き摺って歩いているんだけど、昨日はうっかり部屋の扉を閉める時に尻尾を挟んでしまったのだ。

 尻尾は角と違って結構、痛い。

 尻尾を挟んだ痛みで蹲っているのをカリーナさんに慰められたのは秘密である。

 かなり乙女らしくない声が出たのも秘密。

 本当に痛かった。

 翼は今の所、大丈夫だけど気を付けないとやらかしそうで怖い。

 翼も尻尾も無意識に動かしている様で油断出来ない。

 犬みたいに嬉しいとパタパタする様な事が無いのは良かった。

 この尻尾をあんな風に振ったら大変な事になる。

 尻尾に関してはカリーナさんから「もふもふじゃないのが残念ね」と意味不明な事を言われた。

 犬のもふもふの尻尾が良いのは分かるけどね。

 因みに私の尻尾は竜の様な尻尾なのであんまり触り心地が良くなかったりする。

 黒くて割とスベスベだから鱗がないだけマシと思う事にしている。


 後ろにある鈴鳴草を見て一つ試してみたい事を思い付いた。

 そう尻尾で採れないかと。

 意識を尻尾に集中し、房を潰さない様に根元部分だけに力を入れる様にして巻きつける。

 そして手で採る時と同じ要領で土から引き抜く。

 鈴鳴草を掴んだ尻尾を手元に引き寄せる。

 うん、割と上出来だ。

 でも効率が悪いので次からやめよう。


「ジャンヌー、そろそろ籠が一杯だから戻ろー!」


 そんな事をしている間にリリィは籠一杯に薬草を採っていた。

 私の籠は三分の二しか埋まってない。


「リリィ、まだ一杯じゃないの……」


 素直に状況を伝える。


「問題無いよ!今日が初めてなんだから。私も普段は一杯になる事は無いし、一杯になる方が珍しいかな」


 それなら問題無いか。


「それじゃ、帰りましょうか?」


「そうだね。帰ろー」


 今からなら日が暮れる前には南門に着くだろう。

 初めての依頼だけどリリィと一緒で良かった。

 薬草が何処に生えているかは森に入って経験しないと分からないし、薬草の見分けも付かないから。


「さっき真剣な顔してしゃがみっ放しだったけど、何かあった?」


 尻尾に集中していたのを見られていた様だ。

 幸い何をやっていたかは気付いていないので誤魔化そう。


「何も無いですよ。少し考え事をしていただけなので」


「でも器用だよね。尻尾で採るとか」


 しっかり見られていたね。

 他愛無い話をしながら森を歩いていると奥の茂みから気配を感じた。


「リリィ」


 茂みに何かいる予感がし、リリィに声を掛けながら槍を手に取る。

 奥から感じる気配は徐々に私達に近づいて来ている。

 警戒しながら気配のする方向に注視する。

 リリィも私に合わせて剣を抜き構える。

 自信が無いのだろうか、少し震えている。

 私はリリィを庇う様に彼女の前に出る。

 茂みを掻き分ける様な音が大きくなる。

 森の野生動物か、若しくは魔物か?

 茂みから出て来たのは熊に角が生えた動物だった。


「ホーンベアだ!!」


 一本角の熊はホーンベアと言うらしい。

 リリィの声の感じからすると彼女ではどうにもならない相手なのだろう。

 後で聞いた話だとDランクの魔物の様だ。

 ホーンベアは起き上がり両手を上げ、咆哮を上げてこちらを威嚇する。

 自分の倍以上に大きい魔物を前にリリィは恐怖で完全に竦んでしまっている。

 私も前世で熊と相対した事も無いし、倒せると思った事も無い。

 だが何故か不思議な事に負ける気がしなかった。

 私は地面を全力で蹴り、ホーンベアとの距離を詰める。


「ハッ!」


 あっと言う間に間合いに入り込み槍を一突き。

 心臓を狙ったが咄嗟に捻り脇を掠める。

 ホーンベアは咆哮を上げながら腕を振り下ろす。

 左手を槍から離して腰の剣を抜く。

 今の自分の身体なら問題は無い筈。

 何故か確信があった。

 抜き打ちと同時に放った斬撃はホーンベアの腕を断ち切る。

 前世の自分にはこんな力は無かった。

 しかし、転生して得た身体は自らが思っている以上の力を秘めている。

 ギルドでガードナーさんとの模擬戦の時に気が付いた。

 相手が人で無ければ手加減の必要は無く、自分の力を確認するには調度良い。

 ホーンベアは腕を切り落とされた事で凄まじい咆哮を上げる。

 反対の腕を振り下ろすが先程より勢いが無いので、半歩後ろに下がり躱す。

 バランスを崩したホーンベアの動きを逃す事は無い。

 槍を一閃。

 心臓を貫かれたホーンベアは動きを止める。

 槍を抜き、血を払う。


「ふぅ、こんな感じですね」


 仕留めた獲物を見て、一息つく。

 後ろにいるリリィを見るとまだ固まっていた。


「リリィ、終わりましたよ」


 一応、獲物を仕留めた事を告げる。


「ジャ、ジャンヌは強いんだね……」


 ホーンベアを一人で仕留めた私にリリィは驚愕していた。

 ホーンベアの恐怖から戻り切れていない為、その場で半分固まっている。


「そんな事は無いです。野営する時に食料を調達するのに狩りをする事もあるので慣れだと思いますよ」


 本当の所、熊は狩った事は無い。

 精々、猪や鹿ぐらいだ。


「リリィ、ホーンベアは素材として売れますか?」


 折角、倒したのだからお金な変えれるなら変えたい。


「う、うん。ギルドに持って行ったら手数料は取られるけど、解体や買取もしてもらえるよ。ホーンベアはDランクの魔物の中でも捨てる所は少ないから、そこそこのお金にはなると思うよ」


 でもどうやって持って行こうか?

 これを引き摺ってく訳にはいかないし。


「あ、ホーンベアの胆嚢は薬になるって、聞いた事があるからカリーナさんが要るか聞いた方が良いかも」


「そうですね」


 さてどうしたものか……。

 指輪の収納は使えないか?

 試してみよう。

 指輪を嵌めている手を翳し、ホーンベアを収納してみる。

 横たわっていたホーンベアの死体が消えた。

 無事、収納出来た様だ。

 これなら魔物狩りの時は便利だ。


「え、え⁉︎それ空間収納?」


 あ、リリィには言ってなかった。


「はい。貰い物なんですが」


 適当に濁しておこう。


「ジャンヌは何か普通じゃ無さ過ぎだよー。空間収納を持ってて、ホーンベアを一人で倒しちゃうとか……」


 この身体、どう考えても人でいた時より性能が良い。

 アルスメリア様は魔力、肉体共に能力に恵まれている、と仰られていた。

 暫く、適当に濁して行くしかないかな。

 指輪の収納もアルスメリア様から貰ったなんて言えないし。


「リリィも一緒に頑張りましょう。私達はパーティーだから一緒に鍛錬すれば良いじゃないですか」


「そうだね。私、頑張るよ」


 リリィに微笑みを返す。


「帰りましょうか。あんまり遅くなると日が暮れてしまいます」


 予定外の魔物遭遇はあったが無事に初めての薬草採取は終わった。




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