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07:新人冒険者リリィ

 東門側のギルドで昼食を食べた後は私の生活用品を買いながら街の色んな所を案内してもらった。

 とは言っても一日で回れるのにも限界があり、雑貨屋で身の回りの物を、武器防具の手入れに鍛冶屋、魔道具屋、服屋を回ったら既に夕方だった。

 武器に関してはアルスメリア様から授かった槍と剣があるし、余程の事が無い限り壊れないから頼る機会は少なさそうだ。

 余程の事がどのぐらい事を指すかは分からないが、神様が言うぐらいだから大丈夫だろう。

 アルスメリア様には申し訳ないが下着は追加で購入した。

 赤や黒の派手なレースをあしらった派手な下着は落ち着かない。

 後、履くのが恥ずかしい……。

 何故か服屋でカリーナさんに着ぐるみパジャマを熱く要望された。

 買ったのはちゃんと無難な寝巻き。

 どさくさに紛れて着ぐるみパジャマを買おうとするカリーナさんはしっかり阻止。

 正直、恥ずかしくて着れません。

 前世ではこんなに自由に出来なかったから買い物でお店を回るのは凄く楽しい。

 第二の人生も存外に悪くないと思った。


 買い物から帰ってきてカリーナさんとお仕事について話す事に。


「まずジャンヌにやって欲しいのは薬の材料集めね」


 お昼にブレンダさんと話をしていた時も同じ事を言っていた。


「最初は簡単な薬草の採取。慣れてきたら特殊な薬草や魔物から採れる素材もお願いするわ。基本は私からの指名依頼と言う形にするから。そうしないとランク評価もされないしね」


 薬草の採取なら見分けが付けば問題無いかな。

 山からハーブを採ってくるのと同じ感じだから。

 魔物はちょっと不安かも。

 魔物がどんなのか分からないし。


「魔物の素材は一度は私も一緒にに行くわ。弱い魔物も油断すると危険だし、慣れも必要だから。時間がある時にギルドにある魔物図鑑を見て予習するのも良いかしら」


 魔物図鑑か。

 ギルドに行った時に見せてもらおう。


「余裕がある日はお店を手伝ってもらっても良いし、ギルドで他の依頼を受けてみるのも良いわ。あ、でも出来れば日帰りの依頼にしてもらえると嬉しいかな」


「分かりました。明日はブレンダさんの娘さんと私で薬草を採りに行く感じですか?」


「それでお願い」


「はい」


 当面の私の仕事は薬の材料集めと冒険者だ。

 暫くはお金と生活は安定しそうだ。

 ある程度お金が貯まったら自分で部屋を借りよう。

 ずっとカリーナさんの所に居候するのも悪いし。

 あ、そう言えば魔法の事を聞いてなかった。


「カリーナさん。お昼にギルドで話てた魔法を教えてもらっても良いですか?」


「そう言えば色々考えていたら忘れてたわ。ごめんなさいね。仕事の空いてる時間に教えるわ」


「お願いします」


「教えると言っても無属性の生活魔法と魔力操作ぐらいね。私は水と風の適性があるから虚無は使えないし」


 生活魔法とは日常生活で便利とされている魔法の事で便宜上、生活魔法と呼ばれている。

 取り敢えず、虚無は当面保留かな。

 明日は初仕事。

 今日は早目に寝て万全の体勢で挑もう。

 そう思いを胸に晩御飯をしっかり頂いた。




 翌朝---

 私は朝食後、自室で薬草採取の準備をしている。

 武器は腰に剣、背中に槍を背負う形にする。

 素材回収用のナイフも準備済みだ。

 薬草を入れる籠はカリーナさんが持っているから借りる事になった。

 指輪の収納に関しては私の判断で使用可否は決めて良いと言われたので目立たない感じで使おうと思う。

 準備が出来たからリビングで待機しよう。

 カリーナさんは今日はずっと薬を作るので部屋でずっと作業するとの事。

 作業部屋はカウンターの奥だからお客さんが来たらすぐに分かる。


「ジャンヌー!来たわよー!」


 お店側からカリーナさんに呼ばれた。

 どうやらブレンダさんの娘さんが来た様だ。

 私は装備一式を持ってお店に向かう。

 お店には栗毛のポニーテールの少女がいた。

 私より少し小さい感じでシンプルなワンピースに革のフード付きのジャケットを着て、腰にはロングソードにナイフ。

 私と比べると可愛い方にシフトしたチョイスだ。


「あ、もしかしてジャンヌさんですか?」


 向こうも私がお店の奥から出て来たのに気付き声を掛ける。


「はい」


「昨日、お母さんから話を聞いて来ました。リリノア・セネアです」


「ジャンヌ・ダルクです。今日は宜しくお願いします」


 自己紹介をし、軽く一礼する。


「今日は二人で南の森に赤紫の葉と鈴鳴草、あればカサの実をお願いするわ。リリィちゃん分かる?」


「はい。ギルドの依頼で何回か採りに行った事があるので大丈夫ですよ」


 リリノアさんは経験がある様で問題ないみたい。

 一人じゃなくて良かった。


「ギルドには一ヶ月毎にジャンヌへ指名依頼を出す様にしてあるからギルドで依頼を受注してから行ってくると良いわ。後、夜は物騒だから日が暮れる前に街に戻ってくる様にね」


「「はい!」」


 返事をしてリリノアさんに籠を渡す。


「リリノアさん、今日は宜しくお願いします」


 リリノアさんは渡された籠を受け取る。


「こちらこそ。私の事はリリィって、呼んで。同い年なんだから楽しくやろう」


「じゃあ、私もジャンヌでお願い。リリィ」


「うん。ジャンヌ、行こっ!」


 リリィは私の手を引いてお店の外へ。


「ちょっと!引っ張らなくても大丈夫です!カリーナさん、行ってきます!」


「行ってらっしゃい。気を付けてね」


 こう言うやり取りがふと懐かしく感じた。


 リリィとまずは依頼の受注の為、ギルドへ向かった。

 どうやら私が受付で登録している間にカリーナさんが依頼を発注していたので、あっさり受注出来た。

 内容は一ヶ月間の薬素材採取と言う物で報酬は銀貨五枚に採取した分を上乗せだった。

 これなら間に休みや魔法の練習、他の依頼を受けたり出来るので都合が良い。

 採取場所は南の森なので道中でお昼に食べる物を買って向かう事にした。

 日帰りだから屋台のサンドイッチ。


「ねぇ、リリィは冒険者になってどのぐらい経つの?」


 少しリリィの事を知ろう。


「うーん、まだ三ヶ月ぐらいかなー。ジャンヌは?」


「私は昨日、登録したばかりです」


「え⁉︎でもお母さんから凄く強いって、聞いたよ!」


 ブレンダさん、どんな風に私の事を言っていたんだろう?

 過剰評価は無いと良いな。


「そんな事は無いですよ。リリィはどうなんですか?」


「私はまだまだかな。Fランクの魔物も苦戦してるしねー。だからEランク試験受からないんだよね……。ジャンヌはEランクスタートだから羨ましいよ」


 ギルドで依頼を受注する時にカードを見せたからEランクなのはバレていたりする。


「でも私と一緒で良かったのですか?」


「全然大丈夫だよ!だってジャンヌはEランクで私より強いし、同い年の冒険者の友達はいなかったから嬉しいよ!出来れば次からも一緒させて貰えるともっと嬉しいな!」


 明るい娘だけど友達が少ないのだろうか?

 昨日、ギルドに行った時には私と同じ世代と思われる冒険者は数組はいたと思う。

 ブレンダさんはギルドで働いているし、明るく活発な感じだから他のパーティーに入れそうなんだけどな。

 私も一人は不安だから助かるけど。


「私はここの事で分からない事が多いからリリィと一緒は助かります」


「そう?えへへへへ……」


 嬉しそうに頭を掻くリリィ。

 喜んで貰えるのは嬉しいけど、実力を確認する前に返事は失敗したかも?

 ブレンダさん、良い人だからリリィが危ない目に会うのは嫌だな。


「ちなみにリリィは魔法は使えるの?私はまだ使えないけど」


 魔法も確認しておかないと。


「一応、使えるよ。風の二級が一杯一杯かな」


 リリィは魔法が使えるなら少しは大丈夫かな。

 各属性魔法は等級分けされており、初級から最高位の十級に便宜上分かれている。

 基本的に上位の等級になる程、魔力消費が大きく、制御が難しい。

 五級が使えれば国の専属魔術師になれるレベル。

 七級ぐらい使えると色んな所からスカウトが殺到するらしい。

 虚無みたいな特殊属性は使用者が少なく研究が進んでいない為、等級訳はされていない。

 リリィは風の適性がある様だ。

 カリーナさんも風の適性があるって、言っていた様な。

 一緒に魔法を教わるのも有りかもしれない。


「ねぇ、リリィ?空いている時間にカリーナさんから魔法を教わる予定なんだけど一緒に受けてみない?」


 一緒にやるなら魔法も一緒に教わった方が良いだろう。

 同じ適正なら成長も早いかもしれないし。


「え!?良いの?カリーナさんの邪魔にならないかな?」


「帰ったらカリーナさんにお願いしてみます」


「ありがとうー!!」


 リリィは私の手を取りピョンピョン飛び跳ねる。

 まだ街中だからちょっと恥ずかしいかも。

 通りの人の視線が……。


「嬉しいのは分かったから落ち着こう?」


 私は喜ぶリリィを宥める。


「もうすぐ南門だから気を引き締めて行きましょう」


「うん!」


 初依頼、ちょっと不安になってきた。




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