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19:魔法とは?

 カリーナさんからの告白から早三ヶ月が経った。

 この三ヶ月はギルドの依頼は余り受けずにほとんど勉強に費やしていた。

 ガードナーさんとカリーナさんとパーティーを組んでいるのにほとんど家に篭りきりになってしまって申し訳ないが、二人とも理解をしてくれているので非常に助かっている。

 お陰で読み書きは普通に出来る様になり、学校の入学試験対策の勉強も大分良い点数が取れる様になってきた。


 一応、週に一回は討伐系の簡単な依頼は受けている。

 と言ってもアングレナ付近はそんな変わった魔物が出ない為、ホーンベアやランドボアを狩るぐらいだ。

 もうそのぐらいは手馴れた物で苦戦もせず狩れてしまう。

 薬草の採取はもうカリーナさんから依頼を出してもらっていない。

 ある程度はお店の手伝いと言うのとカリーナさんの家から出て行くのをやめたからだ。

 これは三ヶ月前の告白の影響が大きい。

 あれから私とカリーナさんの心の何処かにあった壁が一気に無くなった感じがした。

 言うなら母と娘の様な関係に近いのかもしれない。

 それもあってどちらも遠慮なく接する様になった。


 カリーナさんの基本的な生活は変わっていない。

 普段は依頼のある薬の調合をしながら私の勉強を見てくれている。

 時折、薬師協会に行って講師をしに行っている。

 薬師協会と言うのは名前の通り薬師が集まって作られた組合の様な物だ。

 カリーナさんは薬師協会の理事の一人だったるする。

 医爵を賜る功績があるカリーナさんの影響力はカラル王国内の薬師は勿論の事、近隣諸国まで及ぶ。

 カリーナさんが講師をする講座は月に一度、アングレナの王立学校の大講堂で行われているが、毎回受講者が定員オーバーする程の盛況振りだ。

 受講者は薬師に留まらず医者に冒険者、貴族と幅広い。

 これを受講する為に近隣諸国からアングレナまで来るのだ。


 薬師や医者の間ではカリーナさんの事を薬聖と呼んでいるらしい。

 本人は恥ずかしいからやめて欲しいと愚痴っていた。

 カリーナさんの功績が如何に凄いのかが分かる。

 間近にいると結構、だらしない所があったりするのだが、そこはご愛嬌だと思う。


 リリィは専らガードナーさんと鍛錬をしている。

 ガードナーさんの鍛錬は厳しい様で家に来る時はぐったりしている事が多い。

 その成果は目覚しくホーンベアを単独で倒す事が出来たのだ。

 今まで伸びなかった原因は武器にあった。

 リリィは剣を使っていたが彼女には向いてなかったみたいなのだ。

 ガードナーさんがリリィに色んな武器を持たせてみた結果、槍が一番向いている事が判明。

 武器を槍に変えてからはメキメキと実力を伸ばしていった。

 ホーンベア単独討伐もその成果と言ってもいい。


 実力が上がれば当然ランクも上がる。

 リリィはこの三ヶ月で私と一緒のDランクまで上がったのだ。

 Dランクへ昇格した時はブレンダさん達も呼んで宴会だった。

 リリィは私のパートナーの様な存在だから凄く嬉しかった。

 Dランクに上がったとは言えど私の様に単独で森に入っての狩りはまだ早い。

 ホーンベアを単独では討伐したが後にガードナーさんがいつでもフォローに入れる状態だったのと、かなり際どい勝ち方だった様でガードナーさんからかなり反省点を指摘されていたからだ。


 私に関しても森の奥さえ行かなければ基本問題無いと言われている。

 因みにアングレナの南に広がる森は湖の手前と奥で現れる魔物のランクが違う。

 街と湖の間は強い魔物と言ってもDランク のホーンベア、Cランクである飛ばない竜でもあるランドドラゴンだ。

 ランドドラゴンは元々森の奥に住む魔物で迷って街の方にに出てくるぐらいだ。

 ただこれが奥になると違う。

 Aランクのワイバーンを捕食する大型の蜘蛛の魔物であるワイバーンイーター、通り掛かる者に容赦無く襲い掛かる植物のマッドプラント、Bランクの亜竜でもあるワイバーンは普通に現れる。

 森の奥に入るにはAランク以上が望ましいとされている。

 そのぐらい森の奥は危険なのだ。


 更にその奥にあるルーエン山脈の一峰であるカラル峰、カラル王国の名の基をなる山であるが、そこにはAランク以上の魔物が普通に徘徊している。

 何でもここの言い伝えではカラル峰には通りすがりの魔王が封印した魔獣が眠っているらしい。

 魔王と言うのは絶対的な強者である超越者を指す言葉らしく種族は関係無い。

 ガードナーさんは何度か森の奥に行った事があるらしい。

 現れる魔物強さに撤退戦を強いられる事になって命からがら帰ってきたそうだ。

 後でこっそり教えて貰ったのだが、カリーナさんも山に生息する薬草を採取する為に何度からカラル峰まで行った事があるそうだ。

 カリーナさん曰く、若気の至りであそこまで行ったが、あんな所に行っていたら命がいくつあっても足りないとの事。

 鉄竜とも呼ばれるAランクのストラトエイビスの百体程の群れを発見した時は生きた心地がしなかったらしい。

 幸いな事は山の魔物は森に来る事が無い事だろうか。


 私は今、家の庭でカリーナさんとリリィと一緒にいる。

 何故かと言うと魔法の訓練をする為だ。

 王都の上級学校に行くには少なからず魔法の素養が無いと厳しいらしい。

 正しくは平民(・・)には。

 貴族だと家柄によってはある程度の教養があれば入れるのだとか。


 カリーナさんは元公爵家の当主なので推薦は可能らしいが、それは狡い気がするので一般枠で入試を受けて入るつもりだ。

 カリーナさんはそのぐらい大した事じゃないと言ってくれているが権力を笠に入るのは違う気がする。

 私自身、貴族だった時期はあるが正直、ほとんど戦争に出ていたから貴族の感覚は分からない。

 私の中でそこに頼ってはいけない気がしたから。


 王都の上級学校は貴族科、騎士科、魔法科、官吏科に分かれており貴族科と官吏科は魔法の特性が必要の無い科で、さっき触れた魔法素養の無い貴族はどちらかに入る。

 私が狙っているのは魔法科だ。

 ガードナーさん曰く、騎士科に行っても持て余すだろうから魔法科にしとけ、との事でカリーナさんも一緒の意見で魔法科を目指す事になった。


 そして今日から魔法を覚える為に鍛錬の中に魔法が加わる。

 リリィは簡単な生活魔法は使えるが、カリーナさん曰く、基礎からしっかりやっておけば後々、楽になるからと言う事でリリィもおさらいを兼ねて一緒に受ける事となった。


「ジャンヌに合わせて説明するからリリィちゃんはちょっと暇かもしれないけどおさらいと思って聞いてね。まず魔法とは何なのかと言う事からね」


 言われてみれば具体的にどの様な物か説明しろと言われても漠然としていて説明出来ないかも。

 感覚的には不思議な力と言う認識だけど。


「魔法とは魔力を用いて何かしらの現象、事象を起こす事を指すの。人が使用する魔法もそうだし魔道具もそうね。人が使う場合は自身の魔力、魔道具の場合は組み込まれている魔石の魔力が元となっているわ。その結果として火を起こしたり、水を発生させたり、傷を治したりと言った事象が発生する。そして魔法にはいくつか種類があるの」


「ギルドで聞いた属性の事ですか?」


 カリーナさんは首を横に振る。


「いいえ、違うわ。これをしっかり認識していないと使える魔法も上手く発動しなかったりするの。魔法は直接魔法と代替魔法の二種類に分かれるわ。違いは自分の魔力を使用するか他所から魔力を使用するかの違いね。初心者は基本的に自分の魔力を使用する直接魔法ね。ただ魔力量が膨大になる高レベルの魔法を行使するには自分だけの魔力だけでは賄いきれない。そこで代替魔法が出てくるわけ」


 どうやって外から魔力を持ってくるのか?


「代替魔法は他所から魔力を持ってくるんだけど、方法はいくつかあるわ。魔力が篭った魔石を使用したり、人から魔力を吸い取ったりとかね。考えれば分かるとは思うけどそれは有限なの。何処から持ってくるかと言うと大気に漂う魔力を使用するの」


 魔石や人から供給すると言う手段は普通の魔法使いには無理だ。

 魔石は魔物から採取しなければいけないし、お店で買うには高価だ。

 街の魔道具屋を覗いた時に魔石がいくつか置いてあったが安い小指サイズの小さな物でも銀貨五十枚もした。

 正直、出費を考えると割りに合わないと思う。

 人となるともっと無理だ。


「メリットは何処でも供給可能な事かしら。ただ魔石と違って供給量が少ないのが難点ね。でもそれで魔力が節約出来るのは大きいわ。特に魔法使いは魔法が使えなくなったら役立たずになるから」


 戦いが長引いた場合を考えると魔力の節約は大切だ。

 戦での補給物資と考えれば理解しやすいかも。


「二人には代替魔法が使える様な形で教えていくから。こっちを使える様になっておくと魔力切れは起こしにくくなるわ。次に属性の事ね」


 ギルドで適正検査を受けた時に説明された事だ。

 でも私は虚無属性以外の適正は無いから火を起こしたり出来ないな。


「二人ともギルドに登録する際に説明は聞いていると思うけど、魔法は適正が無い属性は使えないと一般的には言われているわ」


 カリーナさんの物言いが引っ掛かった。

 適正が無い属性は一般的には使えない(・・・・・・・・・)と。


「実は全く使えない事は無いのよ。言うなれば得手不得手みたいな物ね。適正が無い人に比べれば上手く発動しなかったりするし、同じ魔法で同じ魔力を持っていても威力が弱くなったりするけど、頑張れば使える様になるわ。普通の魔法使いは適正の無い魔法を覚える必要は無いと思っていたりするんだけど、そうでもないのよ。特に冒険者(・・・)にとっては」


 どう言う事だろう?


「冒険者は依頼で街から離れて野営しなければいけないけど、水や食料は持てる量に限りがあるわ。でも水属性の魔法が使えたらどうかしら?」


「水を魔法で生み出してその分を食料に当てる事が出来ると言う事ですか?」


「半分正解ね。まぁ、水を全く持たない訳には行かないけど、その分を食料に回せるのもあるし、一番大事なのは水が切れた時に安全に水が入手出来る事よ」


 確かに飲めるレベルの水が何処にもある訳ではない。

 汚れた水しか無い場所もあるはずだ。

 そこで確実に水を確保出来る手段があるのは大きい。


「この大陸では大丈夫だけど東の大陸には大きな砂漠があるし、そんな所を行く時に水属性の魔法が使えるか否かは命に関わるわ。だから適正が無い魔法もいくつか覚えてもらうからそのつもりで」


 砂漠は確かに水の有無で生死に大きく影響する。

 カリーナさんの言う事はその通りだ。

 私達は冒険者なんだから生きる事を第一に考えないといけない。




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