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17:宴会

17:宴会


 ギルドから戻ってきた私達はカリーナさんのお店で宴会の準備をしていた。

 カリーナさんとブレンダさんは料理の準備、私とリリィは二回の広間の整理をしていた。

 私とカリーナさんの布団が置いてあったり、余計な物が置いてあるのを片付けたり、宴会用のテーブルを出したりしていた。

 お酒はガードナーさんが酒屋まで一っ走り中だ。

 ミアータさんは仕事の後片付けがあったので後程こっちに合流する予定になっている。

 広間のテーブルには次々と料理が並んでいくがテーブルの真ん中に鍋がそのままに置かれているのはなんだろう?

 湯気とか出てないから余計に分からない。

 取り皿やフォークを準備していると何本もの酒瓶を抱えたガードナーさんが来た。


「おう、酒調達してきたぜ」


 テーブルの空いている場所に酒瓶が置かれていく。

 カリーナさんやブレンダさんも広間に上がってくる。


「待たせたわね。鍋は今から火を付けるから。盛り上がる頃には出来上がるから始めましょうか」


 ミアータさんがまだ来ていないが宴会を始める事に。

 ドリンクのカップが順番に回ってくる。

 私とリリィはジュースで他の人はお酒だ。


「じゃぁ、乾杯はガードナー宜しく」


 カリーナさんに促されたガードナーさんは酒の入ったカップを持ち、席を立つ。


「えー、こう言うのはガラじゃねぇんだが、キング討伐を祝って乾杯!!」


「「「「「乾杯!!」」」」」


 乾杯の合図と共に今日獲ってきたモーラスロッククラブ料理に一斉に手を伸ばす。

 私は焼蟹から頂く事にした。

 身を取りやすい様に殻の一部が剥いであった。

 殻が程好く焦げて香ばしい香を出している。

 口に入れるとほくほくの身が解けて甲殻類特有の甘みが口の中に広がる。

 モーラスロッククラブは蟹の中ではかなり大きい部類に入るが決して大味では無く、濃い甘みでしっかりした味だ。


「美味しい!」


「そうでしょ。だからやめられないのよね」


 カリーナさんはワインのグラスを片手に並んだ料理を摘んでいる。


 野菜と酢で和えた物は蟹と野菜の甘みに酢がちょうどマッチして美味しい。

 アクセントに柑橘系の皮が入っていてほんのり薫る爽やかな香がより一層蟹の旨みを引き出している。

 そして蟹にパンを粗めの粉にして塗し、油で揚げたフライも美味しい。

 これはマヨネーズと卵に刻んだピクルスが混ぜたソースが絶妙でいくらでも行ける味だ。


「ジャンヌ、しっかり食ってるか?」


 私が食べている横にガードナーさんがやってきた。


「はい。それにしてもモーラスロッククラブはどんな料理にしても美味しいんですね」


「ああ、ここ以外とだと高級食材だからな。だからこの時期にコレを目当てにした旅行者が増えるんだ。王都でコレを食べようとするとコースで銀貨三枚も取られるんだぞ」


 銀貨三枚も取られるの!?

 そんなに払ったら屋台を一体何件周れるか……。


「そんなに高級食材なんですね」


 モーラスロッククラブを噛み締めながら言った。


「それにしてもお前はすげぇよ」


「はい?」


「いやな、今回のキングはジャンヌやカリーナがいなかったら厳しかったからな」


 ガードナーさんはいつもの強気な感じとは違う感じだった。


「腹を引っぺがした時とかその細い腕とは思えねぇ力でやったのには本当に驚いたぜ。これは俺からの提案なんだがパーティーを組まねぇか?」


 私とガードナーさんで?

 私はまだDランクだし、ガードナーさんは街でも腕利きのAランクだ。

 それでは釣り合わない。


「私とガードナーさんとですか?」


「いや、出来ればカリーナとリリィもだな」


「それだと迷惑ばかり掛けてしまいそうで……


 私が頭を垂れるとガードナーさんは私の髪をワシャワシャと撫で回した。


「何を言ってやがる。ランクと経験はまだまだな所はあるが実力は充分だ。俺とタメ張るレベルでちゃんと前衛をこなしているんだ。他のヤツは文句なんか言えねぇさ。それこそやれるモンならやってみろって話だ。それにリリィも鍛えてやらないとな」


 リリィと私の実力差はかなり大きい。

 一緒にパーティーを組んでいるが、まだFランクの魔物を倒すのが手一杯だ。

 私自身も教えるのが得意な方では無いし、得物が違うのもあって順調とは言えない。


「カリーナさんは大丈夫ですかね?」


「それがネックだな」


「そう言えばカリーナさんはSランクなんですか?」


 さっきギルドで言っていた事を思い出した。


「ああ、【神弓】の名で有名だな。何でも千里眼で数里先の標的をも射抜き、水と風魔法のエキスパートだ。この街で数少ないSランクだな」


 そう言えば戦闘では弓は使っていなかった様な気が……。


「モーラスロッククラブの殻が硬いから最初から使わなかったんだろう。アイツ相手に弓矢は相性が悪いからな」


 なるほど。


「なーに二人で私の事を話してるの」


 カリーナさんが私の肩に顎を乗せて混ざってきた。


「お前さんがジャンヌにちゃんと説明してなかったから俺が説明しただけだぞ」


「そうなの?」


 肩に顎を乗せながら首を傾げる。


「ジャンヌにはちゃんと話しておけよ。秘密主義なのは分かるがちゃんとしておかないと困るぞ」


「別にあんたに言われたくは無いんだけどね……」


 そんなカリーナさん差し置いて皿に料理を取る。

 うん、鍋も野菜の甘みが出た出汁と相まっていい味になってる。


「と言うかジャンヌはマイペースに食ってるな」


「えぇ、この子も大物よね」


 二人は私を見て感心した様に呟く。

 貧乏農家出身なので食べれる時にしっかり食べておかないと。


「そう言えばさっきカリーナさんとリリィも一緒にとパーティーに誘われたんですが……」


 そろそろ私の肩に顎を乗せるのはやめて欲しい。


「うーん、良いんじゃない。その面子なら私はOKよ」


 あれ、あっさりOKが出た。


「決まりだな。リリィは当面、俺が鍛えたいんだが良いか?」


「本人に聞いたら良いんじゃない?そうすると私はジャンヌと基本一緒になるのかしら?」


 必然的にそうなりそうだ。

 それはそれで魔法を教えてもらおう。

 勉強で中々取り掛かれていないから。

 まだ単語の綴りが怪しい所があり、これは入学試験までには何とかしなければいけない。


「おーい、リリィ。こっちで半分以上決めちまったがパーティーに俺とカリーナが入るから宜しくな。バッチリ鍛えてやるからな」


「本当ですか!?是非、宜しくお願いします!」


 全く問題無かった様だ。


「ガードナーに鍛えてもらえるならウチの娘も安心ね。でもリリィは上げないわよ」


「手を出すつもりはねぇよ」


 ブレンダさんの許可も取れた。


「ランクのバラつきはありますが、大物パーティー結成ですね。と言うか実力は平均Aランクだから街でも上位クラスじゃないですか?」


 この面子のパーティーで街の上位とか不安だ。

 ガードナーさんとカリーナさんはベテランだが、私とリリィはまだ初心者だ。

 私も努力をしないと。


「それじゃ新しいパーティーの結成を祝って、カンパーイ!!」



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