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16:実は怒ると怖い

『悪魔となって復讐を誓う聖女』の更新に集中する為、こちらは週一ペースぐらいの更新になります。

 ギルドに戻った私達はギルドの受付嬢のミアータさんに獲ったモーラスロッククラブを渡すべく受付カウンターの行列に並んでいた。

 今日はほとんどの冒険者がモーラスロッククラブを獲りに行っていた様でギルド内がいつも以上に混雑していた。

 この時期のみだが普段は買い取り対応を行っていない依頼受注カウンターでもモーラスロッククラブの買い取り対応を行っているのだ。

 この時期のモーラスロッククラブに関してはギルドだけでなく市場、飲食店でも買い取りを行っている。

 それだけ獲れる量も多く、ギルドだけでは対応出来ないからだ。

 ただ色んな場所で買い取ると相場に混乱を与える恐れがある為、キング以外のみは事前に買い取り価格が決められており混乱が起きない様にしている。

 キングに関してはギルドのみ扱う事になっている。

 理由はキングの大きさにバラつきがあり、他では査定が難しいからだ。

 並んで三十分程すると漸くミアータさんの前だ。


「ミアータ、買い取りだ」


「何か珍しい組み合せですね。カリーナさんにジャンヌさんにリリィさんとパーティーとか」


 物珍しそうに受付に来たメンバーを見る。

 普段は私とリリィがペアだし、ガードナーさんもカリーナさんも単独だから。


「おう。今回はキング狙いだからな」


 ガードナーさんの言葉に周囲の冒険者達がざわめき始める。


「もしかしてキング獲れたんですか!?」


「あぁ、何とかな。取り敢えず、奥か?」


「そうですね。ちょっと待って下さい」


 そう言って奥へと走っていくミアータさん。

 暫くすると同僚の受付嬢らしき人と一緒に奥から戻ってくる。


「皆さん、ご案内しますので私に着いてきて下さい。あなたはここで買取の対応を宜しく」


 ミアータさんは立ち上がり同僚の人に受付を交代する。

 私達を解体コーナーの奥へと案内した。

 そこにはギルドマスターのライルさんといつも解体コーナーにいる解体担当のグレッグさんがいた。


「やぁ。久しぶりだね。キングを獲ってきたと聞いて急いで来たよ」


 ライルさんは柔らかい表情で言う。

 私としてはこの人の笑顔は何となく胡散臭く感じてしまう。


「ここに出してもらって良いですか?」


 ミアータさんは程良い広さの一角を指す。

 ガードナーさんを見ると問題無い、と言う顔をしているので指輪の収納からモーラスロッククラブキングを出す。


「おぉ・・・・・・これは凄いですね・・・・・・」


「数年来の大物じゃねぇか?」


「何この大きさ。初めて見ます・・・・・・」


 ライルさんにグレッグさん、ミアータさんもキングの大きさに驚きを隠しきれない。


「この大きさだとBランクどころかAランク相当になるんじゃないかな?」


 ライルさんはキングの評価をする。


「コイツ一匹仕留めるのに俺とカリーナとジャンヌの三人掛かりだったからな」


 さっと私とカリーナさんに目を配らせたガードナーさん。

 正直、あの甲羅の硬さと力の強さは大変だった。


「Bランク四人パーティーだと仕留めるのは可能ですか?」


「それだと無理だな。この大きさのキングとやるのは俺も初めてだが、そんじょそこらのヤツじゃダメージする与えられんぞ。今回は俺とジャンヌで前衛、後衛カリーナのサポートがあって何とかって、感じだからな」


「AランクのガードナーさんにSランクのカリーナさん、Dランクのジャンヌさんだと平均Aランクあれば大丈夫だと思ったのですが・・・・・・」


 え、カリーナさんSランクだったの!?

 カリーナさんを見ると目を逸らされた。

 戦闘中、魔法の使い方が凄いと思ったけど、そう言う事かと納得してしまった。


「いやその計算が間違いだ。今回一緒に戦って分かったがジャンヌは既にDランク以上の実力を持っている。そもそもDランクがコイツ相手に俺と一緒に前衛を張れる訳がねぇしな」


 ニッとした笑顔を私に向けるガードナーさん。

 その笑みには如何にも何か企んでますと言う顔だ。


「それが本当なら早くランクを上げてもらった方が良いですね。最低でもBランク、問題が無ければAランクでも有りですね」


「確かに。私は登録時の模擬戦しか見ていませんが普通にガードナーさんと打ち合ってましたね」


 ガードナーさんの言葉にライルさんとミアータさんが乗り気で考えている。

 正直、一気にランクを上げて目立つ様な事は避けたい。

 ガードナーさんはわざとギルドマスターの前で言ったのだろう。


「あぁ、俺としてはAランクでも充分やっていけると思うぜ」


 何か勝手に話が進んでいく。


「私は別にそんなにランクを早く上げたいとは思っていないので・・・・・・」


 やんわり断ってみよう。


「ランクが高くて困る事はありませんよ。報酬の高い仕事も請けやすいし、ギルド内では優遇されますから」


「い、いやそれでも・・・・・・」


 優遇されるのは嬉しいが、お金に関しては一人で生活が出来るぐらい稼げれば十分だ。


「Aランクならこのギルドの最年少Aランク冒険者誕生ですね」


 ミアータさんの一言は余計だ。

 最年少Aランクとか悪目立ちが過ぎる。


「そうそう、ランクが高い分には困らねぇよ。寧ろ上げれる内に上げておいた方がお得だろ」


「ギルドとしては実力のある方は早く上のランクに上がって上のランクの仕事をこなして欲しいですね」


 私は必死に首を横に振る。


「あんた達いい加減にしなさい」


 いつも優しいカリーナさんが普段では考えられない低い声で言った。


「カ、カリーナさん?」


 ガードナーさんの顔が引き攣っている。

 それも普段は呼び捨てなのにさん付けになっている。


「人の事情も気にせずランクを押し付けるなんてどう言う事かしら?ギルドも随分、下世話になったものね?」


 一瞬で私達の周囲が静かになる。


「ガードナー、あんた一体どう言うつもりかしら?森でもジャンヌは断ったわよね?」


「い、いや、高ランクが増えれば仕事が楽になるかなー、とか」


「それはあんたが考える事じゃないでしょ。あんたこそSランク昇級を放置し続けてる癖に人には押し付けるわけ?」


「いや、そんなつもりは・・・・・・」


「じゃあ、どう言うつもり?」


 ガードナーさんはカリーナさんの言葉に完全に詰まっている。


「それにライル、あんたはギルマスでしょ。さっき見たいな事を言っているとギルドカード返すから」


「そ、それは困ります!?ただでさえ貴重なSランクなんですから!」


 ライルさんは慌ててカリーナさんに懇願する。


「別に私もギルドのランクなんてどうでもいいから。それに本人だって嫌がってるでしょ」


「でもギルドとしては実力のある方には早く上のランクに上がって頂いた方が・・・・・・」


「それは本人が望んでる場合はでしょ。ギルドが押し付けるものじゃないわ。次からポーションを卸すのをやめるわよ」


 カリーナさんの言葉にライルさんとミアータさんが真っ白になる。


「そ、それは勘弁して下さい!?」


「どうかそれだけはご容赦を!?」


 ライルさんとミアータさんが必死に頭を下げる。


「カリーナさん、私は大丈夫ですから」


 このままでは良くないのでカリーナさんを宥める。

 私が出ないと収まりそうにもない。


「そう?あんた達、次にやったら受付でカードを粉々に返却してやるからね」


 カリーナさんはかなり怒っている。

 私の為に怒っていてくれるのは嬉しいが理由が分からない。

 家に戻った時に聞こう。


「こいつの査定をしても良いか?」


 蚊帳の外にいたグレッグさんが本題へ戻してくれた。


「えぇ、お願い」


「過去の通例で考えればキングは金貨十枚だが、この大きさなら金貨四十枚ぐらいと考えるがギルマスはどうだ?」


「うーん、これなら六十枚でも良いんじゃないですか?これだけ大物の甲羅なら良い防具になるのと、貴族に声を掛けてオークションにすれば大丈夫だと思いますよ」


「金貨六十枚で買い取りだが良いか?」


 金貨六十枚なら一人十五枚だからかなりの稼ぎだ。

 予想以上の収入だから今度ゆっくり買い物にでも行こうかな。


「あぁ、俺は構わねぇが、カリーナ達は?」


「私は問題無いわ。ジャンヌとリリィは?」


 リリィに軽く目配らせると問題無いと返ってきた。


「私達も問題無いです」


「じゃあ、それで処理するから報酬はミアータがやってくれ。俺はコイツを処理するから」


 そう言ってグレッグさんは解体担当の職員を呼びに行った。


「それでは私もこれで失礼します。ジャンヌさん、ご無理を言って申し訳有りませんでした」


 ライルさんが私に様を下げる。


「いえ、そんなに謝って頂かなくても」


「ジャンヌ、こう言うのは図に乗るから頭が禿げるまでやらせないとダメよ」


 さらっと怖い事を言うカリーナさん。

 流石にそれは可哀相な気がする。


「流石に禿げるのはご勘弁を。それでは私はこれで」


 さっと解体コーナーから出て行くライルさん。

 カリーナさんに頭が上がらない人が多い気がする。

 こっちに来てからずっとお世話になっている私も頭が上がらないのだが。


「ミアータ、終わったらウチに来なさい。ブレンダとか呼んで宴会するから。蟹鍋に焼蟹、酢の物、フライに何でもあるわよ」


「本当ですか!?私もご相伴に預かります。もしかしてジャンヌさん達にお願いしたの知ってました?」


「当然。まぁ、宴会はみんなでやった方が楽しいでしょ」


「それじゃ、戻って精算してしまいましょう」


 ミアータさんに促され受付で報酬を受け取った私の懐は金貨で暖かくなった。




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