二話
雅彦とは、私の彼氏のことである。
とくに愛しているとか、好きとかそういう感情はないのだけれど(たぶん、むこうは両想いだと思い込んでいる)去年の春頃からこのマンションで一緒に暮らしている。
きっかけは株式会社双愛の運営する婚活パーティーで、運命のうの字にもあたらない、作為的でありふれた出会いだった。
銀座のホテルで開催されたそれは総勢百名を超す大がかりなもので、事前の説明では男女比率五対五という内容だったのだが、実際には七対三くらいで、圧倒的に男性陣が多かったのを覚えている。
そんななか、私は雅彦と出会ったのだ。
製薬会社の人事課に勤務している雅彦は三十七歳で、私より八つも年上のくせにどこか落ち着きがなくて「メアド教えてよ」、「番号も教えて」と、半ば強引に言い寄ってきた。
私の好みの男性像から三.五光年程かけ離れた雅彦の容姿は褒めるべきところがなく、身なりに無頓着なひと、という印象だった。
仕事一筋、遊ぶということを全く知らない、正直お金はそこそこ持っていそうなのだが人間的に奥行きがなく、異性としての魅力は皆無だった。
つまりあの男を一言で言えば「どこにでもいるおっさん」ということになる……。