表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワンモアアクセル!  作者: アメカワ・リーチ
ワンモアアクセル! 1 ~トゥーランドットと練習王子~
41/42

EX

 というわけで、新年、新学期。ひさびさにクラスメイトに会う日。だが、俺の心中は複雑だった。……皆になんて言われるだろう。

 幸い教室前に来るまでに、一人もクラスメイトに会わなかった(規模の大きい高校なので、不思議なことではない)。

 暖房で暖めた空気を逃さないようにと教室のドアは閉め切られていた。

 俺はドアの前に立った時、それ開けるのを躊躇した。トリプルアクセルを跳ぶ前と同じくらい緊張する。同時にこんなところでつったってるのはおかしいと、焦りも生まれる。

 早く開けないと。ようやく決心してドアに手をかけようとしたとき、

「なにしてんの」

 急に肩を叩かれた。完全に不意打ちで、俺は情けなくも肩をびくっとさせてしまう。振り返ると、そこには仲のいい友人の姿があった。

 天野星。

「さっきから、何ぼけーっと突っ立ってんの」

「あ、いや」

 返答に困る。まさか怖くて教室に入れませんでしたなんて言えるわけがない。だが言い訳を述べる前に、天野が先に口を開いた。

「てかそれよりあんた! ちゃんと君崎凛と結ばれたのね!」

 無邪気な笑顔。天野はげらげら笑いながら俺の背中を叩いた。

「それは誤解だ!」

 やっぱりね!

 全日本選手権の後。非常に不快なことに、俺たちは五輪出場を逃したにもかかわらず、新聞紙の一面を飾っていた。

 いわく『女王、熱愛』『女王の氷を溶かしたのパートナー』『氷上キス! 愛の演技』エトセトラ、エトセトラ……。今まで浮いた話一つ無かった君崎凛の氷上キスにメディアたちはいっせいに食いついた。 国民的美少女の《熱愛報道》新聞紙だけでなく、ネットも騒然だ。

「あれは違うんだって。そのそういう意味はなくて」

 本当に、俺と凛の間に、世間が思ってるようなことは一切無い。

 結局俺たちは、ペアスケーターでしかない。下手をしたら友達で冴えないのかもしれない。けれどそれに満足してる。 

「ふーん。じゃあのキスは?」

「あれはさ、おまじないなんだってさ」

「さすが国際的なスケーターは違うわね。キスの一つなんて挨拶でしかないわ、ってこと?」

「いやだから違うって……」

「わかったわかった。もういいから。そういうの」

 こうなると天野はめんどくさい。

「ところでさ、大輔」

「ん?」

「こないだの言葉撤回する」

 天野は、にっこり笑って言う。

「大輔のスケート、シングル時代よりも、今の方が好き。だって、すごく堂々としてるから」

 それは、何よりの褒め言葉だった。

「ほんとさ、四年後が楽しみだよ」

 スポーツ選手なら誰もが憧れるその舞台。

 ────オリンピック。

 次の舞台はミュンヘン。

「天野。俺約束する――俺たちは四年後、絶対にそこにいる」


(ワンモアアクセル1 END)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ