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王寺大輔。
十六歳。
フィギュアスケート男子シングルの選手。
実力はというと、全日本に出場できるが上位は狙えないというところ。中堅という言葉がぴったりかもしれない。
六種類の三回転ジャンプをマスターしている。練習では、四回転も跳べなくはない。
柔軟性にも定評があって、スピンではビールマンやドーナツといった男子には厳しいポジションもこなせる。
ステップも得意で、難しい種類のステップやターンと上半身の激しい動きを両立できる数少ない選手であると、ある雑誌に評された。
そう、王寺大輔はジャンプもスピンもステップもそこそこ得意だ。
俺は関係者によくこう言われる──君は実力は持っている。
しかし、実力とは本番で発揮された力のことだろう。だから本当は、俺には実力など微塵も無いのだ。
俺についたあだ名──練習王子。
スケーターとしての俺を的確に表している。
俺は極度の緊張症なのだ。
練習では高難度の技をこなすにもかかわらず、試合になった途端、それらがいっさい決まらなくなる。
県大会、東日本選手権、そして全日本。勝ちあがっていくごとに大会の重要度が増していく。重圧も増していく。
日本でのスケート人気は異常だ。
世界六カ国で行われる大会、グランプリシリーズ。唯一日本大会だけ満席になる。他の大会は空席が目立ち、中国やロシア大会では観客がほとんどいなかったりする。
だから、去年出たロシア大会で俺は好成績を納めた。世界選手権メダリスト三人が出場する中で表彰台だ。
だが、続けて出場したNHK杯。俺はリンクに入って圧倒された。満員の客席。ジャッジ席の反対まで人で埋め尽くされていた。
そのとき、俺はこの大会の重要さを肌で感じた。感じてしまった。
身体が震え、試合が始まる前から汗が止まらなかった。
試合は一瞬で終わった。
結果は十二人の出場選手中十二位。
最下位。
ジャンプは一つも決まらなかった。
その次の全日本も同じだった。いや、多少ましだったかもしれない。なんと三つもジャンプを着氷できたのだから。
本番に弱い。
それは〝完璧〟が求められるスケーターにとっては致命傷だった。
極度の緊張症。
それは、どんな名医も直してくれない、不治の病だ。




