心の声が聞こえる有能侍女・マーガレットは、今日も全てを知っている。
お久しぶりの投稿です!よろしくお願いします(⌒▽⌒)/
私の名前は、マーガレット・ゲイザー。
このウィンディ大国にお住まいになられている、アルヴィン侯爵家のご令嬢・メイ様の侍女をしております。
メイ様は、人形のように可愛らしい見た目に、眩しく光る美しいブロンドの長い御髪を持ち合わせた、天使のようなお方!
まぁ、極度の人見知りで、身内以外には無表情ではございますが。
そんなメイ様は今日、婚約者であるアンドレア・バール公爵令息様とのお茶会に参加されます。
アンドレア様も、すらりとした背丈に、こちらも人形の様に整ったかんばせを持ち、落ち着いた赤髪を紺のリボンで束ねておられます。
ただ…彼もメイ様と同じく、極度の人見知りでして。
こうしてアンドレア様がお昼にこちらの屋敷にいらっしゃった時も、ほぼ無表情なのです。
しかし、私は知っております。メイ様もアンドレア様も、お互いの婚約者を想っているという事を!
…あら?なぜそう言い切れるのか、ですか?
何故なら、私は近くにいる人物の声が聞こえるからなのです!
ふふ、早速メイ様達の声が聞こえてまいりましたね。
(は、はわっ!今日もアンドレア様がとっても素敵!お、落ち着くのよメイ!淑女らしく笑顔を、笑顔をっ!む、無理だわ、こんなこと!顔が動かないわ!)
(ああっ!今日もメイ嬢がいつにも増してお美しい!ここはちゃんと声をかけて紳士に対応しないとだけど、どうして口が動かないんだ、僕は!動け、動いて愛の言葉をっ!)
あらあら、お二方。今日も心の声が賑やかですね。
普通の侍女だったら、こんな一言も発しない空気に耐えかねて逃げてしまう事でしょう。
ですが、私はそんなことは絶対しません。この心の声こそ、人生の楽しみなのです!
とはいえ、このままだといつまで立っても進みませんし、日が暮れてしまいます。
私は一つ咳払いをして、ゆっくりと口を開きました。
「アンドレア様、ようこそお越しくださいました。中庭にて、お茶菓子と紅茶をご用意しております。まずは、そちらまでメイ様をエスコートして頂けますと、幸いです。メイ様もさぞお喜びになるかと」
「ちょっ、そこまで言わないで頂戴、マーガレット!もう、お節介なんだから」
「ふふふっ。私にはお見通しなのですよ。さぁどうぞ、アンドレア様」
「あ、あぁ…。では、メイ嬢。お手をどうぞ」
「は、ははははいっ!」
よしよし。これできっかけが作れましたね。
メイ様もアンドレア様も顔を赤くしたまま、中庭にゆっくりと歩いていきます。
あぁ、とっても可愛らしいです!
ゆくゆくは、結婚も秒読みなのではないか、と私は思っている次第なのですが…。
「マーガレットさん、さすが機転効くお方だ。アンドレア様が動くきっかけを与えるとは、優秀極まりない」
「ゥゲッ!……ゴホン。ミシェル様、お褒め頂きありがとうございます」
やはり来ましたね。アンドレア様の侍従で従兄でもある、ミシェル、コルディエ様が。
陶器のような肌の白さに、絵画のように整った美しいかんばせ。そして高身長で、世の女性陣を虜にするような艶やかな声をお持ちの、とても優秀なお方。
ほぼ欠点すらないミシェル様は、女性に関して引く手数多で、コルディエ侯爵家の次男坊ゆえに婿に行く先も多いと聞きますけれど。
まぁ、そんなのはただの嘘まやかしですが。
なにせ、アンドレア様の心の声が『違う』と仰っているのですから。
(はぁ……今日もマーガレットさんは美しくて最高だ!さり気ない気遣いに、ちょっとしたユーモアまで!何よりその笑顔が素敵すぎる!ああぁぁ…マーガレットさんと結婚して、ゲイザー子爵家の婿になりたい。愛しています、マーガレットさん。マーガレットさんマーガレットさんマーガレットさんマーガレットさ……)
はい、今日もミシェル様の声は通常通りうるさ……ではなく流暢ですね。
ミシェル様は、このアルヴィン侯爵家の屋敷にアンドレア様と初めてやってきた際、どうやら私に一目惚れをしたそうで。
まぁ、大きな丸眼鏡にメイドキャップをつけただけの、メイドの格好をした私に、一目惚れされる要素は一切ないと思うんですけどね。
とりあえず私は、その場で笑顔を取り繕いながら、中庭の方に右手を差し向けました。
「ミシェル様。そろそろ私たちも中庭に向かいましょう。メイ様たちを待たせるのは良くないですから」
「ええ、そうですね。アンドレア様の恋路を応援するには、適切なサポートが欠かせませんから」
「はい。そして、メイ様の恋路も同様です。正直に言いますと、今すぐにでも結婚しないかなって思っていますから」
「はははっ!本当に本音がストレートですね、マーガレットさん。僕も同じ気持ちです。結婚式、素敵なものにしたいですね。そして、ゆくゆくは僕も結婚したいですから」
(もちろん、マーガレットさんとだけど!)
わぁ……やはりミシェル様の心の中は私でいっぱいですね。
なんか、愛の重さが重すぎて、ついつい呆れてしまいます。
これは、心の声が聞こえる弊害だか、でしょうか?
それでもミシェル様は、行動も言動も完璧なので、文句のつけどころはないのですが。
内心ため息をつきつつ、私はミシェル様と共に、メイ様たちの後を追うように中庭に向かいます。
そして、中庭に置いてある椅子を引いて彼らを座らせた後、テーブルの近くに立ちました。
しかし、こんな美しくて素晴らしいお茶会が始まったというのに、メインのメイ様もアンドレア様もなんという無表情!
まるでこの場が、ただお人形を座らせて、テーブルにお茶とお菓子を置いただけのおままごとの様です。
こうなることは想定内ですが、せっかくの温かい紅茶が台無しになるのは頂けません。
なんとしても会話の糸口を見つけようと、私はお茶会で出されたお菓子と紅茶について説明を始めました。
「メイ様、アンドレア様。本日のお茶菓子と紅茶につきましてご説明させて頂きます。まず上段にありますのは、我が侯爵家のシェフ特製の、レモンとオレンジのミニタルト。中段にございますのが、レーズンのスコーン。下段にありますのが、サラダとハムのサンドイッチでございます。紅茶は朝の採れたて茶葉を使用したダージリンティとなっておりますので、同じく今朝方に仕入れたミルクと共にお召し上がりください」
「あ……。ま、マーガレット、説明ありがとう。確か、ダージリンティは、アンドレア様の好物だったはず、ですよね?」
「あ、あぁ。そうだな。しかもミルクティとは気が利くな。さすが、メイ嬢の侍女だ。ゆくゆくは、愛するメイ嬢と結婚した際に、彼女の筆頭侍女として迎えたい程だ」
「はわっ!あ、アンドレア、様っ!」
「へ?……わわっ!ぼ、僕は今、なんて!?はわわわ」
おや?おやおやおや?
アンドレア様、ついに愛の言葉を口にしましたね?
お茶会の席で、顔を茹で蛸のように真っ赤に染めたお二方は、本当にお似合いで可愛らしい。
ついその場でにやけそうになりましたが、ここは冷静に、メイ様の斜め後ろに…。
って、ミシェル様がすごい満面の笑みで、こちらを見てますよ!?
(あぁ!とうとう、アンドレア様が告白した!すごい流れだったけど!告白と言って良いのか分からないけれど!)
あら、同じ考えを持っているのですね、ミシェル様。
確かに告白と言っていいか、私も決めかねていますが。
(よし。だったら僕も、流れでマーガレットさんに告白するぞ!…でも、タイミングが分からないなぁ…)
…ええ。やはり彼は、私の事で頭いっぱいですね。相変わらず。こんな事言うの二回目ですが。
このまま、茹で蛸二人とニコニコするだけの侍従が動かないと、こちらも気まずいです。
私は小さくため息をついたあと、ミシェル様の近くに来て、肘でコツンと彼をつつきました。
「痛ッ!え?マーガレット、さん?」
「ミシェル様、いつまで突っ立てるんです?貴方も、アンドレア様たちのサポートをして下さい。彼を落ち着かせて、告白のムードを作るのです。そして、そのムードを覚えておくように。告白したいんでしょう、私に」
「……ファッ!?な、なんでそれを!?」
「さぁ、どうしてでしょうね?あらあら、貴方も茹で蛸みたいになってますよ。せいぜい私を失望させず、ドン引きさせないように行動して下さいね、ミシェル様」
「えっ、えっ!?ええええええええ!?」
こうして私は、顔を真っ赤に染めたぎこちないミシェル様と共に、アンドレア様とメイ様のムードを取り持って告白を成功させ、お茶会を無事に終わらせたのでした。
本当に紆余曲折ありました。今日はなんてツイてない日で、ツイてる日なんだろうと思いましたし。
正直に言って、ミシェル様は私のタイプではありません。心の声で聞こえる愛が重いですし。
ですが、嫌いではないので、ゆくゆくは彼の恋人になるかもしれませんし、ならないかもしれません。
とにかく、今日も明日も、私はこの能力を使って有能な侍女として頑張っていこうと思います!
<おまけ>
「…ア、アンドレア様…告白、ありがとうございます!う、嬉しいです!」
「あぁ、僕もとっても嬉しいよ。まさか、今日のお茶会であんな流れで言ってしまうとは、思わなかったから」
「そう、ですね。でも、とっても嬉しかったです!この婚約は契約結婚だと思ってましたし、例えアンドレア様に好かれなくても、結婚生活頑張ろうと、思っていたので」
「メイ嬢…。でも結局、僕達は両想いだったんだ。これからは沢山、愛の言葉を囁くから、君も応えて欲しい。いいかい?」
「はいっ!まだ人見知りしちゃうかも、しれませんが」
「はははっ!僕もさ!でも、二人でだったら、乗り越えられる。行こう、メイ嬢。いや、メイ!」
「はい、アンドレア様っ!」
「……」
「……」
「そう言えば、僕の侍従のミシェルが、君の侍女を好いていた件だけれど」
「あー、あれにはビックリしましたね。まぁ、マーガレットを侮ってはいけませんから。彼女、ムキムキな男性が好きですし」
「ええっ!?そうなのかい!?それは…体つきがほっそりしたミシェルには、ぜひ頑張って貰わないとだね」
「そうですね。それでも、未来は分からないものですから、一緒に見守っていきましょうね、アンドレア様」
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