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俺が惚れた少女は、何故か親父の面影を抱いている  作者: ケイト


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レイアーウの英雄と謎の少女




 「えー、そういう訳で転生者選定の結果生まれたのが、方舟の主ことクォーツです」


 この授業、意味あんのか?

実践的な魔術について学ぶとかなら話はわかるんだけど、こんな授業には何の意味もない。

平和になってから過去を学ぶ、これなら話はわからんでもないが、今はまだ戦争中だし、俺達のような半端者でもやれることはある訳で、学ぶよりもやるべき事があるんじゃないか?


「そして魔王討伐隊には第二大陸からクォーツ、第三大陸から魔術師タリラ·ルリラ、第四大陸からは剣士セクション、そして我らが第一大陸から魔王討伐隊に加わったのは……」


 何も出来ない自分に嫌になったのか、ただ何度も聞いた話だから無視しようとしたのか、自分でもわからないが俺は外を見ていた。

空に光輝く星はこの場所、"疎開都市テイテオ"を囲む巨大な壁を照し、巨大な影を作り出している。

今日もまた、母さんが日当たりが悪いとか文句を言いながら洗濯物を干しているのだろうか。


「……君」


 あ、そういや帰りに買ってこいって言われてた物あったよな?

えーっと、確か……。


「ルイサ君!」


「うぇ、あ、はい!?」


「貴方のお父上の話をしていたのですが、聞いていましたか?」


「勿論聞いてましたよ、バッチリです!」


「それでは、どうですか?」


 どうですかって何だよ!

どんな話なら、その言葉にたどり着く流れが生まれるんだ!?

いや頭を回せ、ここで訳のわからん回答をすれば確実に怒られる。

ぶっちゃけ怒られる事は特に怖くないけれど、母さんにチクられるのが一番キツイ。


「それは……そのですね……」


 それだけは避けないといけない。

だから、うん。

とりあえず適当に話を続けて時間稼いで、授業が終わるのを……。


「やはり、まだ帰ってきてはいませんか?」


 ……ああ、またこの話か。


「貴方のお父上を含む四人が魔王に挑んで六年ですが、私は……いえ、この大陸の全員があの"壊滅たるバルトロス"様が死んだとは思っていません」


「親父から連絡はありませんし、母さんが魔術で呼び掛けても反応はありません、これでいいですか?」


「……そうですか」


 この話になった時の周囲の目がうざったい。

この第一大陸"レイアーウ"の左遷された英雄にして俺の父、バルトロスに希望を抱く奴らの、何か続報は無いのか?

って感じの、嫌な視線だ。

なぁ、もう止めようぜ。

親父が居なくなってから六年だ、六年だぞ?

未だ、魔王の配下たる"悪魔"達は人類を襲い、食糧にしているんだ。

それが、何よりの証拠じゃねぇか。


「親父はもう死んでますよ」


 死人に期待しても意味がない。

母さんも、大人達も、子供だって!

何故居なくなった奴に、死んだ英雄に未だに重荷を背負わせるんだ。

どこで眠っているか知らないけれど、きっと……安らかに眠っているはず。

 

「ですが、あのバルトロス様ですよ!?」


「これ以上親父に背負わせんなよ!」


 大きな音と共に、右手に痛みが走った。

嫌だ、もう嫌になる。

コイツらはこの場所から出て戦おうとしないくせに、俺の親父に全てを背負わせてやがる。

アイツだって、ただの人間なんだぞ。

死んでもなお、アイツは楽になれねぇってのか!?


「ルイサ君……」


 クラスメイトも、先生だってそうだ。

俺を英雄の息子として扱うくせに、俺の影にいる親父しか見ていない。

そしてその目には、押し付ける希望が見え透いていて、吐き気がする。

すがりたいのはわかるさ、理解してるつもりだ。

だが、だからと言ってここで呑気に机でお勉強をしているお前らが希望を押し付けるのは許せない。


「……すいません、今日はもう帰ります」


 ダメだ、普段なら我慢できるってのに、今日に限ってむしゃくしゃして仕方ない。

嫌な視線を無視し、頭を嫌々下げて教室を飛び出したけれど、今帰ったら確実に母さんに怒られるよな……どうしよう。

だからと言って、学校に戻りたくもない。

つーかあれだ、どうせ母さんに連絡行くだろうし、今帰ってもほっつき回って帰っても怒られるのは同じに違いない。


「……母さん、絶対キレるよなぁ」


 考えても仕方ない、よし!


「帰って魔術の練習でも……いや、剣にするか? それとも銃に……」


 親父みたいに銃が得意って訳じゃない。

剣や魔術だって、そこそこ扱えるだけで決して俺は強くない。

親父みたいに一つに絞って極めるのがいいってのはわかってはいるんだが、俺にはどれが向いているのかもわからない。


「早く実践できたらいいのに」


 帰り道、いつもの活気のある店が並ぶ通りを抜けて進んでいくと、物乞いが溢れている"敗者通り"に差し掛かった。

あそこにいるのは、片腕のない剣士か?

あれではもはや戦えないだろう。

両目を潰された弓の射手だろうか、何も見えていないはずなのに両手はしっかりと弓を掴んで離さない。


 彼らは悪魔との戦いに敗れたかもしれない。

だが、怯える人々の前に立ち、自分を犠牲に守ったんだ。

それなのに何故、この大陸は……俺らの神はこの身を切った英雄達を助けようとしないんだよ。

クソっ!

ダメだ、イライラするし、さっさと帰ろう。


「うーん、どうしたもんか……ここは正直に……いやしかし……」


 早足で家の前まで帰ってきた。

だが、俺は家に入れずにいる。

何故なら、俺の家の前でウロウロと、そしてブツブツと独り言を繰り返す女の子がいたからだ。

ここから見える長い白髪の隙間から、二丁の銃を背負っているのがわかる。

黒と白の、見たことの無い……まるでこの世界の物じゃないような、存在感を放つ銃だ。


「手土産も買ってないんだよなぁ……あぁ、それは関係ないか」


「……可愛い」


 左手の親指の爪を噛む少女の横顔は、これまで見たどんな女性よりも可愛くて、頬に入った斜めの傷跡は、彼女が逃げずに戦い続けてきた戦士であると、美しく証明している。

きっと、俺よりも幼いだろうが、その年齢離れした彼女の魅力が俺の視線を奪って離さない……けれど!

冷静になれ、ルイサ。

人の家の前であんなウロウロと……用があるならドアをノックすればいいだけだろう?

まさか、ご、強盗!?


「またか、おいそこのボウズ! いくら可愛い可愛いと言われても嬉しくなんか……む、待て」


 ヤバい、強盗(推定)少女と目が合った。


「……お前」


 少女は先程のような、綺麗な顔をしていなかった。

驚き、信じられないというような表現をしながら、目を見開いてやがる。

間違いない、俺がこの家の住人だとバレたんだ。

もし本当に強盗なら……最悪殺される。

最近強盗殺人は多いし、十分にあり得るだろう。

魔術は詠唱が間に合わない、そして剣は絶妙に距離があって届かない。

なら、ここは銃で……!


「ルイサーッ!」


「ふごっ!?」


 左手で左足のホルダーから銃を取り出すよりも早く、少女が俺に突撃してきた。

初対面なのに何故俺の名前を知っているのか、そして俺も最速で構えたつもりだったのに何故それよりも早く彼女は動けるのか。

そんな疑問を抱いていたのもつかの間、後頭部に固い物が当たって……あ、これ死ぬかも。


「こんなに成長して嬉しいぞ! しかも銃使いになっているとはなおさら……おいルイサ? ……え、ルイサーッ!?」



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