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第23話 王子様に、欺かれていた。

 僕はレオン様の執務室へと自主的に足を運んでいた。もちろん、事前に訪れることは連絡してある。

 石畳の廊下に靴音が響く。報告すべき内容を、心の中で組み立てていく。

 いつも通り、一声かけ、返答を待って部屋に入る。窓から差し込む光がレオン様の金髪を照らしていた。


「それで? 上手くいったの?」


 執務室に入るなりレオン様が訊いてきた。豪華な椅子に深く腰掛け、こちらを見る目は真剣だ。


「八年前と基本は同じでしたから、魔術による"騙し"と"移し"で何とか」

「《条件殺戮(キリングスイッチ)》だっけ?」

「よく覚えていますね」


 素直に褒める。八年前の出来事を正確に覚えている。この人は統治者として能力は高いのだ、能力は。


「まぁ、あの時はボクも当事者だったし」

「あの時から、貴方は貴方でした…………はぁ」


 思い出すだけで、深いため息が漏れる。もうちょっと、人格的に善良なら……と願ってしまう。


「はっはっは、ため息を吐くと幸せが逃げちゃうよ」

「誰のせいですか誰の!!」

「そっと自分の心に手を当てて考えてみればいい…………」

「何かカッコイイことを言っても誤魔化(ごまか)されませんから!」


 レオン様は薄く笑うだけだ。くっ、ニヤけた姿も様になるな!


「で、やっぱり、今回はお前狙いか?」


 反転、真面目な声になる。さっきまでのふざけた雰囲気が、嘘のように消えていた。落差よ。


「そうですね。僕がミーナに(みだ)らな行為に及んだら、さっくりあの世行きでした」

「よくもまぁ(から)め手が好きな連中だ」


 レオン様が、呆れたように肩をすくめる。


「もう危険性はないと思われるので、ミーナは我が家で引き取ります」

「ん? 背後組織は?」

「潰しましたけど、あ、許可が必要でしたか?」

「いや、それなら構わないさ」


 しごくあっさりと事後承諾を許可してくれる。レオン様は、結果さえ出せば細かいことは問わないのでやりやすい。


「雇用主に関しては、改めて何らかの対処をします。どうも先日の西の件とも絡んできそうです」

「ふむ、協力が必要そうなら言ってくれ、頼んだよ」

「……了解です」

「何か浮かない顔をしているが、まだ何かあるのか?」


 レオン様の青い瞳が、じっと僕を見つめてくる。


「いえ、なんで僕にこんな罠を仕掛けられたのかだけが不可解で」


 それが、ずっと引っかかっていた。ミーナを使った罠は、僕を標的にしていた。だが、なぜ僕なのか。


「そりゃ、異種族の娘相手に、夜な夜なハッスルしている変態だと思われてるからだろ」


 レオン様が、さらりと言った。


「僕ってそんな風に思われてるんですか?」

「ボクが指示して情報操作したからな!」


 満面の笑みだった。金髪が輝いて見えるほどの、いい笑顔だ。


「何をいい笑顔で認めてるんですか! え、その話は初耳ですけど!?」

「『敵を欺くには味方から』というじゃないか」

「僕にとっては、貴方も敵だぁ!!」


 僕の叫びは、豪華な執務室に虚しく響いた。

 レオン様は、相変わらず楽しそうに笑っている。この人の下で働くのは、本当に心身ともに疲れる。


 レオン様とのくだらないやり取りをして、やっと一段落した実感がわいてくる。

 ミーナを助けられた。後(くさ)れなく背後組織も潰した。レオン様の期待にも応えられたらしい。

 それなりに頑張ったんじゃないだろうか、僕。

 上出来じゃないか、と自分に言い聞かせ、僕を納得させる。

 ……そして、ご褒美がほしいですと、自分が訴えてきた。

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