1:ほら、言った通りじゃん!
空中庭園に建つ、アリア女学魔法学院はクレハたち見習い魔法使いが通う学び舎。
十三歳になって間もないクレハはこの時代まだ、これといった秀でた才がなく――。どこにでもいる、学生の一人だった。
しかし、それは一度目の十三歳のときの話。
一度目の人生で古代文字――つまりは”古代魔法”の解読に精通するまで成長した彼女は、黒板に書かれていた間違いに気づく。
「――教授、その術式の最後。『fa』じゃなくて『So』ですよ?」
――――ッ!!!!
生徒たちの視線がクレハに集まる。
それもそのはず、魔法史の教授イザベラは古代魔法の解析解読における第一人者と呼び声高い。
イザベラが人に意見することはあっても、彼女が意見されるなんてことはこれまでに無かった。
「クレハ・グレイランス、寝言は寝ている時に言うものですよ。そもそも、それじゃあ小竜の召喚はおろか。召喚術式として成立しませんことよ」
そう言って、イザベラはクレハの言った箇所を訂正して黒板の術式を発動させた。
すると――――
「ヴァアアアアアアア!!」
小竜ではなく、大人の竜が黒板に描いた魔法陣から鼻先を覗かせ叫びをあげるのだった。
慌てて竜の顔を押し戻すイザベラに、驚きの悲鳴をあげる生徒たち。
そんな中、腕を大きく広げ背伸びをするクレハ。
「ほら、言った通りじゃん! ……あ」
(つーか、この間違いを学会で発表してたの……十年後の教授だったような)
この日を境に、これまで解読された古代魔法が見直され――。
現代の魔法史が十年、早まったという。
しかしそれは、冷戦状態にあった各国の領土争いに火種を起こすことでもあった。




