表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/65

26.エピローグ いずれ必ず、全てお話しします

結局、俺たちはゴルドリックの店に引き返した。


デュランが無事に就職できたことを祝おうと思ったのだが──


「ああ、但馬よ。お前、もううちに来なくていいぞ」


「えっ」


まさかのクビ宣告。


いや、デュランを紹介した報酬は既に貰ってるし、元々短期のバイトだったからいいんだけどさ。それにしても突然すぎないか。


「デュランがいりゃあ人手は足りる。それによ、お前、カウンセラーの方が忙しくなるんだろ?」


ああ、そういうことか。


なんだかんだ言って、気を遣ってくれてるのかもしれない。


「……ありがとうございます」


「礼なんざいらねえよ。それより、デュラン!」


「は、はい!」


「今日は歓迎会だ!お前らも付き合えよ!」


というわけで、俺たちは街の酒場に繰り出すことになった。


「それで、酒場でどうなったかって?」


ああ、もう思い出したくもない。


デュランのやつ、カウンターで酒を注いでた黒髪の美人ウェイトレスを見た瞬間、完全にフリーズしやがった。


「あ、あ、あの……」


ぽろん。


頭、落下。


「きゃあああ!?」


ウェイトレスの悲鳴。


「だ、大丈夫です!これは曲芸で──」


ペルフィが慌ててフォローに入るも。


「マインドフルネス……マインドフルネスを……」


ぽろん。


また落ちた。


「マインドフルネス!今ここに意識を!」


エルスが必死に指導するも。


ぽろん、ぽろん、ぽろん。


もうダメだ。正念も何も効いてない。


結局、店中が大騒ぎになって、俺たちは謝罪と弁償で50金貨のうち20金貨を失った。


恋って怖いな、本当に。


そして今、深夜のカウンセリング店。


ペルフィは既に寝ていて、俺とエルスだけがリビングに残っていた。


タコちゃんが俺の膝の上で丸くなっている。


「……なあ、エルス」


「はい、なんでしょう?」


「お前、本当に女神なのか?」


エルスが紅茶を飲む手を止めた。


「……急にどうしたんですか」


「いや、だってさ。魔法は失敗するわ、計画は滅茶苦茶になるわ、ゴールデンアップルパイで禁断症状出るわ……」


俺はこれまでのエルスの「ポンコツエピソード」を指折り数え始める。


「女神ってもっとこう、完璧で全知全能なイメージがあるんだけど」


「ひ、酷いです!確かに少し不器用なだけで──」


「少しじゃないだろ」


「うっ……」


エルスは俯いた。


いつもならここで言い訳か、泣き落としか、話を逸らすかのどれかだ。


でも──


「……但馬さん」


エルスが顔を上げた。


その表情は、いつになく真剣だった。


「その質問に対しては……私、ちゃんとお答えしなければいけませんね」


「え?」


「私は確かに女神です。それは嘘じゃありません」


エルスは、俺の目をまっすぐ見つめて言った。


「でも、その……私がなぜこんな風に『不完全』なのか。なぜ但馬さんを『心理カウンセラー』として転生させたのか」


彼女は一度、言葉を切った。


「その理由については……ごめんなさい。今は、まだ、お話しできません」


「……」


「いずれ必ず、全てお話しします。だから、それまで──」


エルスは少しだけ寂しそうに笑った。


「信じて、待っていてくれますか?」


俺は、エルスの顔をじっと見た。


彼女は本気だ。


そして、何か大きな秘密を抱えている。


「……まあ、いいけどさ」


俺はため息をついた。


「でも、いつか教えろよ。ちゃんと」


「はい。約束します」


エルスは安堵したように微笑んだ。


それから、また紅茶を一口飲んで──


「それより、明日からの予約、どうしましょうね。二十人以上いましたよ?」


「げっ、マジか」


「マジです」


俺は頭を抱えた。


心理学の知識ゼロの俺が、二十人以上の悩みを解決できるのか?


いや、今までだってどうにかなってきたんだ。


きっと、これからも──


「……なんとかなるさ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ