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24.スイート・コーヒー・ラテ・ウィズ・エクストラ・シュガー・アンド・ホイップ・クリーム・アンド・キャラメル・シロップ

「……この剣……妙だ」


クラークが、じっと剣を見つめている。


やばい。


やばいやばいやばい。


「ど、どうしましょう……」


「わ、分かりません……」


ペルフィが、小声で囁いた。


エルスも、青ざめている。


くそ。


どうする……?


クラークが、剣をじっくりと観察している。


「……この剣。糖の味が、濃すぎる」


「……は?」


「これは、廃棄すべきだ」


「……」


え。


え?


糖の味?


「おい! そこじゃないだろ!?確かに、砂糖入りのコーヒーがかかったけどさ! でも、それって重要か!? お前、もっとこの剣が妙に強そうだとか、そういうの気にならないのか!?」


言った瞬間——


俺は、気づいた。


あ。


やばい。


これ、完全に自爆じゃん。


「「「……」」」


エルス、ペルフィ、デュラン、ゴルドリック——


全員が、俺を見ている。


その目には、明確な殺意と怨みが込められていた。


『お前……何してくれてんだよ……』


その視線が、そう語っていた。


いや、ごめん。申し訳ない……俺も、分かってる。


俺が悪い。


でも、つい、ツッコまずにはいられなかったんだよ!


「……ほう。確かに……この剣、妙に品質が高い」


やばい。


マジでやばい。


「これは……一体、どういうことだ?説明してもらおうか」


「あ、ああああああ!」


その瞬間……ペルフィが、突然叫んだ。


「あ、あれは!あれは!コーヒー飴を売る人が出現しました!!」


「……なに?」


おい……おい、待て。


振り返るなよ!?


こんなことで振り返るなよ!?


今、そんな場合か!?


『ど、どうする!?ペルフィ! 何か作戦は!?』


『あ、ある! えっと……デュラン! 今のうちに、あのコーヒーがかかった武器に、もう一度呪いをかけて!』


『え、え!? で、でも、吾、あんなに遠くまで手が届きません……』


『そっか……じゃあ、どうすれば——』


その時、エルスの声が聞こえた。


『但馬さんは、召喚魔法が使えるでしょ?』


『召喚? ああ、サモンのことか?』


『そうよ!今すぐ、あの武器を全部召喚して!』


エルスが、そう言って——


俺の手を、ギュッと握った。


「え、ちょ——」


『魔力、送るから! 早く!』


温かい感覚が、俺の手から流れ込んできた。


これが、魔力の供給ってやつか。


よし。


『分かった!』


俺は、コーヒーがかかった武器に向かって、手を伸ばした。


「サモン……!」


シュワワワ!


武器が、ふわりと浮き上がり——


俺たちの方に飛んできた。


そして——


ドサドサドサッ!


デュランの足元に、武器が落ちた。


「う、うわわ!」


デュランが、慌てて武器を拾った。


『デュラン! 今だ! 呪いをかけて!』


『は、はい!』


デュランが、武器に手を当てた。


そして——


「……!」


デュランの顔が、歪んだ。


何か、すごく不快そうな表情をしている。


「な、何だ、この感じ……気持ち悪い……」


『デュラン、大丈夫か?』


『だ、大丈夫です……でも、何か……すごく、嫌な感じがします……』


その時——


「……ん?」


クラークが、こちらを振り返りそうになった。


やばい!


『デュラン! 早く!』


『は、はい!』


デュランが、必死に呪文を唱えている。


でも——


デュランの頭が、グラグラと揺れている。


やばい。


また、頭が落ちそうになってる。


『デュラン! マインドフルネス! マインドフルネスだ!』


『う、うん……』


デュランが、目を閉じた。


そして——


深呼吸。


『大丈夫……吾は、大丈夫……吾は、できる……吾は、できるだから……』


そして——


デュランの頭が、ピタッと止まった。


『……よし』


シュワワワ……


武器に、紫色のオーラが浮かび上がった。


『ペルフィ!』


『任せて!』


ペルフィが、手を伸ばした。


『サイレントショット!』


シュッ!


武器が、音もなく——


元の場所に飛んでいった。


そして——


ピタリと、元の位置に収まった。


完璧!


よし、これで——


『……待って。まだ、問題がある……!』


『え? 何が?』


『紫色の特殊効果……あれが消えるまで、あと二分かかるの』


『……あ』


そうだった。


デュランの呪いは、最初の二分間、紫色のオーラが見える。


つまり、このまま二分間——


クラークに、あの武器を見られないようにしなきゃいけない。


『ど、どうする!?』


『二分間……何とかして、クラークの注意を引き続けないと……』


その時——


エルスが、俺の手をさらに強く握った。


「足りないなら、私がもっと魔力を送るわ!」


「え、ちょ——」


ドバーーー!


大量の魔力が、俺の体に流れ込んできた。


「うおおおおお!」


体が、熱い。


というか、魔力が有り余ってる。


『但馬さん! 今よ!クラークの注意を引いて!』


『何を言えばいいんだよ!?』


『コーヒーと砂糖に関する、奇妙な呪文を唱えなさい! とにかく、クラークの注意を引いて!』


コーヒーと砂糖に関する、奇妙な呪文……?


いや、そんなの——


ああ、クソ。


もう、やるしかない!


「クラークさん!」


俺は、叫んだ。


「何だ?」


クラークが、俺を見た。


よし。


今だ。


「俺は、今から、コーヒーに関する究極の真理を語る!」


「……?」


「聞け! これが、俺の言霊だ!」


俺は、深呼吸して——


「スイート・コーヒー・ラテ・ウィズ・エクストラ・シュガー・アンド・ホイップ・クリーム・アンド・キャラメル・シロップ!」


「……なに?」


「アイス・モカ・フラペチーノ・ウィズ・チョコレート・チップス・アンド・バニラ・アイスクリーム!」


「お前——」


クラークの顔が、みるみる険しくなっていく。


「ダブル・ショット・キャラメル・マキアート・ウィズ・ミルク・フォーム・アンド・シナモン・パウダー!」


「貴様ァァァ!」


クラークが、俺に向かって突進してきた。


やばい!


でも、これでいい!


このまま、二分間持ちこたえれば——


「パンプキン・スパイス・ラテ・ウィズ・エクストラ・ホイップ・クリーム・アンド・ナツメグ!」


「許さん! 絶対に許さん!」


クラークが、剣を抜いた。


「ジンジャーブレッド・ラテ・ウィズ・マシュマロ・アンド・チョコレート・ドリズル!」


「死ねええええええ!」


クラークの剣が、俺に向かって振り下ろされた。


「うおおおお!」


俺は、必死に避けた。


そして——


「ハニー・シナモン・ラテ・ウィズ・アーモンド・ミルク・アンド・エクストラ・ハニー!」


「うるさああああい!」


ガシャン!


剣が、床に突き刺さった。


危ない!


でも、まだだ!


まだ、一分三十秒ある!


「ホワイト・チョコレート・モカ・ウィズ・ラズベリー・シロップ・アンド—」


「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れえええええ!」


クラークが、完全にブチ切れている。


でも、これでいい。


このまま、時間を稼げば——


「ソルテッド・キャラメル・ホット・チョコレート・ウィズ・エクストラ・マシュマロ—」


「貴様、本当に殺すぞ!」


「ヘーゼルナッツ・ラテ・ウィズ・バニラ・シロップ・アンド—」


その時——


『但馬さん! もう大丈夫よ!紫色の特殊効果が消えたわ!』


よし!


「……ふう」


俺は、深呼吸した。


「もう、いいです」


「……なに?」


クラークが、不思議そうに俺を見た。


「いや、何でもないです。すみませんでした」


「……」


クラークが、しばらく俺を睨んでいた。


そして——


ため息をついた。


「……もういい」


「え?」


「検査は、終わりだ」


クラークが、剣を鞘に収めた。


「お前たちの店は……まあ、合格だ」


「……!」


よかった!


「だが——もし、次にこの店で砂糖入りコーヒーを飲んでいるのを見たら——即座に閉鎖する」


「は、はい……」


「分かったな」


クラークが、店を出ていった。


ガチャン。


扉が閉まった。


「「「「「……」」」」


しばらく、沈黙が続いた。


「……終わった?」


「……ああ、終わったみたいだな」


ペルフィが、恐る恐る言った。


俺は、へたり込んだ。


「やった……やったぞ……!」


ゴルドリックが、喜びの声を上げた。


「ありがとう! 本当に、ありがとう!」


ゴルドリックが、俺たちに頭を下げた。


「お前たちのおかげで、店が守れた! 恩に着る!」


「い、いえ……大したことじゃ——」


「いや、大したことだ! これは、報酬を渡さないと——」


「あ、いや、そんな——」


その時——


俺は、ふと思った。


「……なあ」


「ん?」


「何で、コーヒーがかかった武器の呪いが解けたんだ?」


「……」


全員が、顔を見合わせた。


確かに、それは謎だ。


コーヒーに、呪い解除の効果なんてあるわけないし。


「あ、あの……吾……あの時、武器に触った時、何か変な感じがしたんです」


「変な感じ?」


「はい……何と言うか……すごく、神聖な感じ……」


「神聖?」


「はい……あの、以前、ゴールデンアップルパイを触った時と、同じような感じでした……あと、エルスさんを触った時も……」


「……あ」


俺は、思い出した。


そういえば、以前——


デュランが、ゴールデンアップルパイに呪いをかけた後——


それが聖水に落ちて、呪いが解けたことがあったな。


つまり——


「まさか……」


俺とペルフィが、同時にエルスを見た。


「え、え? 何?」


エルスが、オドオドしている。


「エルス……お前、あのコーヒーに何か魔法かけたのか?」


「か、かけてないよ!」


「じゃあ、何で神聖な感じがしたんだよ?」


「そ、それは……わ、私……あの……女神だから……」


「……」


「だ、だから……私の、その……口に触れたものは……も、もしかしたら……ほんの少しだけ……神聖になる、かも……しれません?」


「「……」」


俺とペルフィは、しばらく沈黙した。


「「お前、この無能女神ォォォォォ!」」

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