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17.やるしかないみたいね

「に、逃げるぞ!」


俺は即座に判断した。


「え、えええ!?」


ペルフィが慌てて俺の後を追った。


エルスとデュランも、慌てて走り出した。


しかし——


「あ、ああ……す、すまない……吾としては……その……」


デュランが、緊張のあまり頭を落とした。


そして、頭のない身体が、床に転がった頭に躓いて——


「うわああああああ!」


ドタンバタン!


デュランの身体が、ペルフィに激突した。


「きゃあああ!」


ペルフィが、エルスに倒れ込んだ。


「ちょ、ちょっと!?」


エルスが、俺に激突してきた。


「うおおおおお!」


俺たち四人は、完全にドミノ倒しのように、床に倒れ込んだ。


「……いてて……」


「も、もう……デュラン、あなた、いい加減にしなさいよ……」


「す、すまない……吾は……その……」


俺たちは、慌てて立ち上がろうとした。


しかし——


「待て」


門番が、俺たちの前に立ちはだかった。


「……え?」


ちょっと待て。


「何でお前、今になって存在感出してんだよ!お前、さっきから三話もずっと何も喋ってなかっただろ!? 最初にドアを開ける時に、あの映画のパロディやっただけじゃねえか! その後は完全に空気だったじゃねえか! 何で、よりによってこんな時に限って役割を発揮してんだよ!」


「お前が言うな!俺だって、本当は喋りたくないんだよ! 俺が喋ったら、物語がつまらなくなるだろ! ストーリーのテンポが悪くなるんだよ!」


「……いや、お前、今その台詞を言ってる時点で、もうストーリーのテンポ悪くなってるから」


「皆さん」


そのとき、ドリアが、俺たちの前に立ちはだかった。


「ど、ドリアちゃん……ま、まさか、あなたまで……」


エルスが、恐る恐る声をかけた。


ドリアは——


完全に、黒化していた。


その目には、冷たい光が宿っていた。


「……やっぱり、あなたは女神じゃないんですね。私、見誤りました。あなたは、女神様を騙る偽物だったんですね」


「な、何よ、それ!ど、どうして!? だ、だって、私、さっきあの機械に神聖魔法をかけたじゃない! それに、そもそも……私だって全知全能じゃないのよ! それに、これは明らかにペルフィの問題じゃない!」


「あの、エルス……お前、確か前に女神は全知全能だって言ってなかったか?」


俺は、小声で突っ込んだ。


「……それに、私の記憶が正しければ、あなた、ずっとドリアさんに自分が女神だって否定してたわよね? まあ、確かに私にも問題はあるけど……で、でも、私、攻撃魔法しか使えないんだもん……」


ペルフィも、恐る恐る言った。


「但馬さん、まず黙ってて! ペルフィも! と、とにかく、ドリアちゃん、あなた、覚えてるでしょう!? あの時、私、クラークをやっつけたじゃない! それに、それに! あの時、私、すごく強かったでしょう!? 女神しか使えない技も使ったのよ! だから、ほら、私、やっぱり女神でしょう!?」


「……ああ、そういえば、そうでしたね」


「そうよ! そうなのよ!」


良かった……


「あなたたちを捕まえて、王国に引き渡せば……結構な賞金がもらえるんじゃないですか?」


しまった……


「……え?ちょ、ちょっと待って! ドリアちゃん、ドリアちゃん!ご、ごめんなさい! 本当にごめんなさい! 私が悪かったわ! だから、だから!」


……おい。


何だ、この光景。


女神が、自分の信徒に謝罪してるぞ。


いや、まあ、信徒の方が女神だって信じてないんだけど。


「ちょ、ちょっと、但馬さん、ペルフィも!」


エルスが、突然俺とペルフィの頭を押さえつけた。


「一緒に謝って!」


「ちょ、おい!」


「ええ!?」


しかし、エルスは聞く耳を持たなかった。


俺たちは、無理やり頭を下げさせられた。


「ご、ごめんなさい!」


「……」


ああ、もう。


何だよ、この状況。


俺たち、一体何やってんだ。


その時——


あれ?


俺の目に、何かが映った。


床の隅に、小さな破片が落ちていた。


……これ、さっきの機械の残骸じゃないか?


待てよ。


さっき、ペルフィが何て言ってたっけ?


『私、攻撃魔法しか使えない』


……なんで、こんな時に、わざわざ自分の役割設定を言ったんだ?


ああ、そうか。


もしかして、この世界には修復魔法があるのか?


それに、今日使った魔法は……あの、頭を落とすショータイムの魔法だけだったよな。どれくらい魔力を消費したか分からないけど、多分まだ一回くらいは使えるはずだ。


俺は、ゆっくりと立ち上がろうとした。


しかし——


「だ、ダメよ、但馬さん! 今は謝ることが先よ!」


エルスが、俺の頭を再び押さえつけた。


「ちょ、おい!」


俺は、もう一度立ち上がろうとした。


しかし——


「だから、ダメだって言ってるでしょう!」


エルスが、また俺の頭を押さえつけた。


「いい加減にしろ!」


俺は、三度目の正直で立ち上がろうとした。


しかし——


「だ、だから! 但馬さん、ちゃんと謝らないと——」


エルスが、また俺の頭を押さえつけようとした。


その瞬間、俺は、


反射的に肘を後ろに突き出した。


ゴツン。


「いたああああああああああい!」


あ。やばい……


エルスが、その場にしゃがみ込んで泣き始めた。


「……タンタン」


ペルフィが、冷たい目で俺を見つめた。


「いくら何でも、女の子に暴力を振るうのは良くないと思うわ」


「そ、そうですね……まあ、彼女はただのエルストリア女神の偽物ですけど……」


「わ、吾としては……その……」


「……」


門番も、何か言おうとして、少し考えてから言った。


「ああ、お前、もしかして男女平等主義者で、美少女にドロップキックを食らわせるタイプか?」


「ーーおい! お前、何で口を開いた瞬間に危険なこと言い出すんだよ! さっきはハ○ー・ポ○ターで、今度はそれかよ!? その作品名、言っちゃダメだからな! もう、ある程度似てるから、絶対に言っちゃダメだぞ!」


だめだぞ!?こいつ、さっきからずっと侵害とかで怒られるような、危ないことばっかり言ってるよ!? このままだと、次は弁護士から内容証明が届くぞ!


ごめんなさい!本当にごめんなさい!!!


「いいか、みんな聞いてくれ。そんなことはどうでもいい。重要なのは、今から俺が魔法を使って、この問題を解決するってことだ」


「え?」


全員が、俺の方を見た。


俺は、床に落ちていた破片に向かって手を伸ばした。


「リペア・オール!」


そして——


何も起こらなかった。


「「「「「……」」」」」」


全員が、沈黙した。


「……よし、皆さん、今から動かないでくださいね……」


ドリアが、ゆっくりと前に出てきた。


「あ! ああああ!た、タンタン、もしかして、魔力が足りないんじゃない!?さっきの魔法、多分すごく強力なやつなのよ!」


「は?」


「つまり、魔力が足りないってこと! タンタン、もっと魔力が必要なのよ! あ……でも、私、魔力転移の魔法、使えないんだった……」


ペルフィは、ドリアの方を見た。


ドリアは、首を横に振った。


「すみません……私、あまり魔力がなくて……」


ペルフィは、デュランの方を見た。


「あ、あの……吾も、本当に助けたいのだが……吾の魔力は、アンデッドの闇魔力だから……副作用があるんだ……」


デュランが、申し訳なさそうに言った。


ペルフィは、門番の方を見た。


「ダメだ」


俺は即座に言った。


「そいつに頼んだら、また危険なパロディを言い出すからダメだ」


「え、え?」


そして——


ペルフィは、エルスの方を見た。


エルスは、まだ床にしゃがみ込んで泣いていた。


「あ、あの……エルス」


ペルフィが、恐る恐る声をかけた。


「但馬さんに魔力を供給してあげられる?」


「……」


「エルス?」


「嫌」


「え……」


エルスが、顔を上げずに言った。


「私、嫌よ」


「…………」


ペルフィが、恨めしそうな眼差しで俺を見つめた。


ああ、もう。


俺は、仕方なくエルスの方へ歩いて行った。


「……エルス、魔力が必要なんだ」


「……」


「もう、すねるのはやめてくれ」


「……嫌よ」


「エルス!」


「だから、嫌だって言ってるでしょう!」


エルスが、泣き叫んだ。


「但馬さんが、私を殴ったのよ! わ、私……私のこと、殴ったのよ……う、うううっ……」


……ああ。


……こんなに強い罪悪感を感じたのは、初めてかもしれない。


「わ、私だって……頑張ってたじゃない! 私、ちゃんと頑張ってたでしょう!? この前に私の信徒になるって言ってくれたのに! みんな、私のことばっかりいじめて……わ、私だって、女神になりたくてなったわけじゃないのよ!」


「おい、今、とんでもないこと言わなかったか?」


「こんな時まで突っ込むの!? で、でも、こういう時に突っ込まないと、但馬さんじゃないっていうのも分かるけど……」


「……そ、そうだな」


……


沈黙が流れた。


「私に謝って」


「……ああ。ごめん」


「『もう、二度と女神様をいじめません』って言って」


「誰が言うか!」


「うわああああああん!」


「……もう、二度と女神様をいじめません」


何だよ、この状況。


まるで、彼女を宥めてるみたいじゃねえか。


まあ、確かに、これからはもう殴らないようにしないとな。


「……謝るよ。本当にごめん。俺が悪かった」


「ペルフィも謝るべきじゃない!? だって、機械を爆破したのはペルフィなんだから! あなたも私に謝りなさいよ!」


「え? あ、うん……ご、ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」


そして、俺たちの必死の努力の末——


エルスは、ようやく機嫌を直した。


「じゃあ、とりあえず、魔力を供給してくれ」


「……分かったわ。じゃあ、さっきの補充魔法を使うから……ま、待って、但馬さん、やっぱりやめましょうか……」


「……は?」


「あ、あの、だって……供給しなきゃいけない魔力が、すごく多いみたいで……」


エルスの声が、突然恥ずかしそうになった。


その顔が、みるみる赤くなっていく。


「あ! これ、俺知ってるぞ! F○teの——」


「だから黙れええええええええ!」


俺は、門番に向かって叫んだ。


エルスは、恥ずかしそうに、でもどこか覚悟を決めたように言った。


「……し、仕方ないわね。やるしかないみたいね」

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