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6.『騎士団体験授業で「ルカを守れ」と言った結果、園が戦場になった』

「今日は特別授業! 騎士団の皆さんが来てくれました〜!」


朝からソワソワしていた園児たちが、一気に盛り上がった。

剣を持った本物の騎士たちがずらりと並び、かっこいい制服姿で整列している。


……そして、最前列。いつもの声量で叫ぶ父。


「ようし! 本日の課題はこれだ!!」


 


《模擬任務:『ルカ・エインズレイを1時間守り抜け!』》


 


「へ?」「はい?」


ざわめきが一瞬で吹き飛び、

空気がピキィィィィ……と張り詰めた。


ユリウス(王子系5歳児)が一歩前に出る。


「……つまり、“僕がルカを守る”正式な舞台が整ったということだね?」


「いや、それは俺の役目だ」

レオン(騎士系5歳児)がすっと横に出て、剣を構える。


ノア(甘え系5歳児)はにこにこしながら、

「ルカを守る〜♡って言いながらぎゅ〜ってしていいのかな〜?」と手を広げてくる。


(……いや、これ、守るって言いながらただ近づきたいだけじゃ……?)


 



 


10分後。


園庭にて、“模擬バトル”開始。


ルールは簡単。

1時間の間、誰がルカのそばに一番長くいられるか。

邪魔されたらアウト。交代は自由。妨害も魔法も「非殺傷」ならOK。


 


「ルカ!任せて!僕の背後は無敵だよ!」

ユリウスは美しい剣術で牽制しつつ、僕の正面に膝立ち。


「……後ろ、俺が取った」

レオンは背中にぴったりついてきて、まるで本物のボディガード。


「ルカ〜!上に乗ってて〜♡ おんぶおんぶ♡」

ノアはすでに僕を抱き上げて走り出している。


「う、うわ、ちょ、ぬいぐるみ……!」


ミミルがぐらついて、僕は慌ててぎゅっと抱きしめた。


「おっと。ミミルちゃんの安全は最優先事項ですから〜♡」

ノア、妙に的確。


 


他の園児たちも次々と割り込んでくる。


「俺も守る!」「僕こそルカ隊だ!」「推しは推せるときに推す!!」


園児ってそんな言葉知ってるの!?


 


結局1時間の授業中、僕は交代で5人におんぶされ、

10人に囲まれ、8人から“正義の魔法壁”を張られていた。


(まるで、王様の護衛任務みたい……)


 



 


最後、先生が「はい、今日の優勝は──」と発表しようとしたとき。


ユリウス・レオン・ノアの3人が同時に言った。


「優勝は、ルカ自身です」

「本人を一番守れるのは、本人だから」

「でも、僕たちも毎日守るからね〜♡」


僕はそっと、ミミルを抱き直した。


──みんなが守ってくれるのはありがたい。

だけど、僕は僕で、ちゃんと“自分を守れる”ようでいたいんだ。


 


ぬいぐるみのぬくもりが、今日も僕の胸にやさしく届いていた。


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