52. 『はじめての“おしごと体験”──みんなの夢って?』
ある日、園でこんな掲示が出た。
【おしごとたいけん び】
“すき”なものをえらんで、やってみよう!
•せんせい
•おはなやさん
•くすりやさん
•まほうやさん(※園限定)
•きしだん(※ぬいぐるみ使用)
「……きしだん?」
ぼくは、ぬいぐるみのミミルを抱いたまま首をかしげた。
どうやら「自分の将来なりたいものを“ちょっとだけ”体験する」日らしい。
「ルカ様はどれにするんですか?」
レオンくんがキラキラした目で聞いてきた。
「うーん……」
迷った末、ぼくが選んだのは──
「“せんせい”……かな」
◇
当日、ぼくは小さなエプロンを着て、
「せんせい係」の名札をもらった。
役割は、みんなが迷ったときに「どうしたい?」って聞くことと、
「うん、すてきだね」って伝えること──だって。
最初はちょっと緊張したけど、
ノアくんが「お花屋さんです!」って元気に言ったとき、
すごく嬉しくて、思わず拍手しちゃった。
カインくんは「くすりや」だった。
でもなぜか、持ち込んだポーションで園児の風邪が本当に治って、
園長先生が本気で驚いていた。
ユリウスくんは「まほうや」だったけど、
みんなに魔法の講座を始めて、逆に大人たちが真剣にメモしていた。
レオンくんは……「きしだん」。
ミミルに向かって「そなたを守る騎士、ここに誓うぞ!」と叫び、
その場にいた園児全員が「キャー!」となった。
(……すごいな、みんな)
ぼくは、ただ笑って、見守っていた。
だけど先生が最後に言ってくれた。
「ルカくんは“先生の先生”だったよ」
「えっ?」
「“ほめる”って、とってもむずかしいの。
でもルカくんは、みんなの“好き”をそのまま大事にしてたね」
ちょっとだけ照れて、ミミルの耳をぎゅっと握った。
◇
その夜の魔法カレンダーの言葉:
『すきって言える勇気と、
すきって言ってくれる誰かがいること。
その両方が、未来の光になる。』
──こうして園の“おしごとたいけん日”は、
“全員が主役だった日”として記録されることになった。
そして翌日、園児たちはひそかにこう話しあっていた。
「ぼく、将来ルカ様の秘書になりたい!」
「わたしはお花係!」
「僕はルカ様のおやつ係!!」
(ちなみにルカ本人は「全部ミミルがやってくれると思う……」と小声で言っていた)




