51. 『園の中に、ぼくの小さな居場所』
朝の光が、窓から優しく差し込む。
ミミルの耳がふにゃっと顔に当たって、
くすぐったくて目が覚めた。
「……おはよう、ミミル」
ミミルはいつも通り、
ぎゅっと抱きしめ返してくれた(気がした)。
今日は、園のなかで“おたすけ係”をする日。
この前、ノアくんがやってたのを見て、
ぼくもちょっとだけ、やってみたくなった。
「……大丈夫かなぁ」
ぼそっとつぶやくと、ママが髪を整えながら微笑んだ。
「ルカなら、きっと喜ばれるわよ。
だって、あなたは“誰かのため”が自然にできる子だから」
そう言われると、ちょっと恥ずかしい。
でも、うれしかった。
◇
園に着くと、先生がエプロンを渡してくれた。
「今日は“先生の小さな助手さん”お願いね、ルカくん」
エプロンのタグには、“特製・ミミル柄”の刺繍。
それだけでちょっとテンションが上がる。
今日のぼくの役目は──
•迷ってる子に声をかける
•おやつを配るときに「どうぞ」って言う
•泣いてる子がいたら、ぎゅってする(ミミルごと)
……できるかな、うまくできるかな。
◇
最初は、ちょっと緊張した。
けど──
ころんと転んで泣いちゃった小さな子に、
ミミルを差し出して「だいじょうぶだよ」って言ったら、
その子がぎゅっとミミルを抱いて、笑ってくれた。
そのとき、なにかが胸の中にぽっと灯った。
「ありがとう、ちっちゃい先生!」
「……えへへ」
なんだか、ちょっとくすぐったい。
◇
お昼寝の時間。
みんなが寝息を立てる中、ミミルを抱えたまま、ぼくはそっと空を見た。
この世界には、
ぼくがいていい場所がある。
優しい園の先生。
だいすきな園児のみんな。
そして、そっと背中を押してくれるママとパパ。
“誰かの特別にならなくても”──
“ここにいるだけで、嬉しいって思ってもらえる”。
それは、きっと……前の世界では知らなかった幸せ。
◇
その夜の魔法日めくりカレンダーの言葉:
『だれかの手を握ると、こわくなくなる。
そして、あなたが誰かの手になれるとき、
それはもう、あなたが“強くなった”証なんだ』
──この日、園でのおたすけ係“ルカ先生”は、
ほとんどの子から“ほんものの先生より優しい”と噂されたらしい。
(本人はただ「がんばったの」と言って、ミミルをほめていた)




