50. (ユリウス視点③) 『ルカ様がくれた“帰ってきていい場所”』
※49.5話後の“数日後”設定です
あの、空の庭で過ごした日から──
少し時間が経った。
けれど、まだ心の中は、ずっとあたたかいままだ。
“空中庭園”。
あの場所には、なにか、目には見えない力がある。
心がふわっと軽くなるような。
胸の奥の、冷たい部分がじんわり溶けていくような──そんな。
ぼくはまた、そこに立っていた。
今度は、ルカ様と“ふたりきり”で。
◇
魔法で香る果実の風。
ゆらゆら揺れるブランコの音。
ルカ様の髪が、陽の光に透けてきらめいている。
「ユリウスくん、今日も来てくれてありがとう」
「……うん。来たかったんだ、ここに」
──“また来たい”って思える場所なんて、
これまでの人生で、一つもなかった。
「ここは、“帰ってきていい場所”なんだよ」
そう言ってくれたルカ様の言葉が、
何度も何度も、胸の奥に響く。
◇
ずっと昔──
ぼくは「優等生」でいることでしか、愛されなかった。
誰にも頼らず、感情も抑えて、完璧を装って。
そうしないと、大人たちは振り向いてくれなかったから。
でもルカ様は、ただぼくの“存在”に微笑んでくれる。
なにかをしていなくても。
なにかができなくても。
「……ありがとう、ルカ様」
「ふふっ、どういたしまして」
ルカ様は、ミミルをぎゅっと抱いて、にこりと笑った。
それだけで、ぼくの“明日”が、優しく変わる気がした。
◇
その夜。
語録ノートに、ぼくはそっと書いた。
『誰かの隣にいられることは、奇跡だ。
それが毎日なら、もうそれは──愛だと思う』
ここは、もうぼくの居場所。
この庭も、この園も、ルカ様も。
もう、ぼくは知ってしまった。
“帰ってきていい場所”が、どれほど尊いかを。
だからまた、明日もこの空の庭へ行こう。
笑って、ありがとうって言おう。
──それが、今のぼくにできる、たしかな愛のかたちだから。




