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50. (ユリウス視点③) 『ルカ様がくれた“帰ってきていい場所”』

※49.5話後の“数日後”設定です


 


あの、空の庭で過ごした日から──

少し時間が経った。


けれど、まだ心の中は、ずっとあたたかいままだ。


 


“空中庭園”。


あの場所には、なにか、目には見えない力がある。

心がふわっと軽くなるような。

胸の奥の、冷たい部分がじんわり溶けていくような──そんな。


 


ぼくはまた、そこに立っていた。

今度は、ルカ様と“ふたりきり”で。


 


 



 


魔法で香る果実の風。

ゆらゆら揺れるブランコの音。

ルカ様の髪が、陽の光に透けてきらめいている。


 


「ユリウスくん、今日も来てくれてありがとう」


「……うん。来たかったんだ、ここに」


 


──“また来たい”って思える場所なんて、

これまでの人生で、一つもなかった。


 


「ここは、“帰ってきていい場所”なんだよ」


そう言ってくれたルカ様の言葉が、

何度も何度も、胸の奥に響く。


 


 



 


ずっと昔──

ぼくは「優等生」でいることでしか、愛されなかった。


誰にも頼らず、感情も抑えて、完璧を装って。

そうしないと、大人たちは振り向いてくれなかったから。


 


でもルカ様は、ただぼくの“存在”に微笑んでくれる。


なにかをしていなくても。

なにかができなくても。


 


「……ありがとう、ルカ様」


「ふふっ、どういたしまして」


 


ルカ様は、ミミルをぎゅっと抱いて、にこりと笑った。


それだけで、ぼくの“明日”が、優しく変わる気がした。


 


 



 


その夜。

語録ノートに、ぼくはそっと書いた。


 


『誰かの隣にいられることは、奇跡だ。

 それが毎日なら、もうそれは──愛だと思う』


 


ここは、もうぼくの居場所。

この庭も、この園も、ルカ様も。


 


もう、ぼくは知ってしまった。

“帰ってきていい場所”が、どれほど尊いかを。


 


だからまた、明日もこの空の庭へ行こう。

笑って、ありがとうって言おう。


 


──それが、今のぼくにできる、たしかな愛のかたちだから。


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