表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/59

48. (カイン視点③) 『あの日、何もできなかった僕が、“一番近く”にいた日』

ルカ様の“落とし物騒動”を聞いたとき、

最初に思ったのは、悔しさだった。


 


どうして、あの時、俺は隣にいなかったんだろう。

街の空気が変わるほどの出来事なら、

いちばんそばにいたかった。


 


「べ、別に……心配とか、そういうんじゃねぇし」って、

ノアやレオンに言ってごまかしたけど、内心は焦ってた。


 


 



 


その日の夜、ルカ様が園に戻ってきたあと──

先生が、手袋をそっと渡してきた。


「カインくん、ルカ様の手袋……少し、ほつれていたの。

 縫えるならお願いできる?」


 


 


俺が? 縫い物? なんで俺に──


 


……でも、断れなかった。


 


 



 


針を持つ手が、ぎこちなかった。


でも、手袋を見つめると、思い出す。

小さな手で、俺の袖をつかんでくる温度。

くしゃって笑うときの匂い。

「ただいま」って言われたときの、あの安心感。


 


──その全部が、このちいさな手袋に詰まってる気がした。


 


 



 


縫い終えた手袋を、

ぼくは──いや、俺は、そっとルカ様の机に置いた。


 


そばに、小さなメモも添えて。


 


『次は、落とす前に言え。お前の隣にいるのは俺だ』


 


 



 


次の日。


ルカ様がそのメモを読んで、

ふにゃっと笑って、こっちを見た。


「……うん。じゃあ、これから落とし物するたびに、呼ぶね」


 


「……なるべく、落とすな」


 


 



 


日記には、こう書いた。


『“守る”って、剣を振るうことだけじゃない。

 針を持つ手にも、愛は宿る。』


 


たぶん俺は、ずっとそばにいたいだけなんだ。


“いちばん近く”に。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ