45. 『ぼくのうたが、街じゅうに届いた日』
「ルカ様、最近“歌”を口ずさんでいらっしゃいますね?」
先生にそう言われたのは、園のお昼寝の時間のこと。
うた?
──あぁ、あれだ。
ミミルを抱きながら、ときどきぼくが自然に出るあの音。
リズムも、言葉も、メロディもバラバラ。
でも、ぼくが落ち着くから、つい口ずさむ。
◇
ある日、おつかいで訪れた街の薬草店。
そこに、寝込んで泣いてる子どもがいた。
その子に、思わずぼくは──歌ってしまった。
「ふわふわ まほうの そらのした
ねむれ ねむれ やさしい こころで」
その子は、涙を止めて、ふっと眠った。
そして、それを見ていた人が──つぶやいた。
「……ルカ様の歌、魔法だ」
◇
それから街では、
“ルカ様のうた”が、少しずつ広まった。
パン屋さんが鼻歌まじりに真似をして、
花屋さんが子どもの寝かしつけに歌い、
兵士たちが任務の前に、そっと口ずさむようになった。
◇
園でも、みんなが「ルカのうた歌いたい!」って言ってくれて、
自然とみんなの前で歌う機会が増えた。
でも、ぼくがいちばんうれしかったのは──
「歌詞、紙にして残しといてくれ」
そう、パパが言ってくれたこと。
「騎士団でも使う。任務の前に聞いたら、みんな士気が上がるらしい」
「うちの魔法陣にも組み込むわよ」ってママまで。
◇
ある日。園に、見知らぬ“高位魔導士”が訪れた。
王宮の者だと言っていた。
どうやら、ぼくの歌が、王宮まで届いたらしい。
◇
夜。ミミルに歌ってあげながら、ぼくはこう言った。
「ねぇ、ミミル。ぼくの声って、どこまで届くと思う?」
ミミルは、ふにゃっと笑ってこう言った気がした。
──『世界全部に届くよ』
◇
語録には、こう書いた。
『心を込めた声は、魔法よりも強いかもしれない。
それは、相手を変えなくても、癒すことができるから。』
おやすみ、世界。
また明日も、だれかにやさしくできますように。




