43. 『“おつかい”に行って、100人から求婚された話』
「ルカ様、今日は“園のおつかい”代表に選ばれました」
え……ぼく、ですか?
◇
園では、定期的に“魔法植物園で育てた薬草”を街の市場に納品してる。
今日はそのお手伝いで、代表園児がひとり、園服のまま街に行くの。
まさか、自分が選ばれるなんて。
「だって、ルカ様が行ったら、誰も怒らないじゃないですか」
先生が言った。
「あと、たぶん10人くらいは惚れますね」ってノアくん。
「10人どころか、100人じゃすまんぞ」ってレオンくん。
「……行くな」ってカインくん。
◇
ぼくは小さな袋を持って、魔法団の人と一緒に街へ出た。
石畳の道に、焼きたてのパンの匂い。
きらきらのアクセサリー屋さん。元気な声が飛び交う市場。
──ぜんぶ、わくわくする。
ぼくは笑顔で、納品する薬草を渡した。
すると、お店の人が目をぱちくりさせて言った。
「……この子、ほんまもんのルカ様や!!」
◇
そこから、すごかった。
お店の人がざわめき、隣の人が駆け寄り、
いつの間にか周りに100人以上の人が集まってた。
「ルカ様! うちの息子のお嫁さんに!」「いいや、うちの家に養子に!」
「せめて、指一本だけでも握っていただけませんか!?」
ぼくは、ミミルをぎゅっと抱いて──にこっと笑った。
「みなさん、ありがとう。でも、ぼくは、だれのものにもならないんだ。
でも……だれかの“おひさま”には、なれるかもしれないから」
──静まり返る空気。
そして、みんなが目を潤ませて、頭を下げた。
「……さすが、ルカ様や……」
◇
帰り道、魔法団の人が言った。
「あなたは、ただの園児ではありませんね。まるで、光の精霊のようだ」
でもぼくは、ただのルカ。
ただ、「ありがとう」と言いたかっただけ。
「好き」って言われたら、ちゃんと「好き」って返したいだけ。
日記にはこう書いた。
『惚れられるより、笑わせたい。
持ち帰られるより、“また会いたい”って思われたい。』
ミミルが、ふにゃっと微笑んでくれた気がした。




