42. (ユリウス視点②) 『君の「好き」は、ぼくを壊して、また救う』
“記憶の泉”に映ったのは、ひとりで歩く自分の姿だった。
園に来る前──
誰にも本当の「好き」を言えず、
“期待通り”の自分でいなきゃって、ずっと肩に力を入れてた。
でも今──
「言っていいよ」
そう、ルカ様が言った。
あのときの声。
あたたかくて、やわらかくて、ぼくの胸にまっすぐ入ってきた。
◇
たしかに、ぼくはルカ様が“好き”だ。
でもこれは──甘えたいとか、守られたいとか、
そういう“普通の好き”とは少し違う。
たぶん、崇拝に近い。
◇
ルカ様はちいさい。
でも、誰かの心の一番痛いところに、ふわっと座ることができる。
迷ってるときも、泣きたいときも、ただ黙って、そばにいてくれる。
何も強制せず、押しつけもせず、でも温度はちゃんとある。
──そんな存在、ずるいよ。
惚れないわけ、ないじゃないか。
◇
精霊会議で“守人”に選ばれたことも、
園内遠足で、僕を探し出してくれたことも。
ルカ様にとってはきっと、
「誰かを思ったら、体が勝手に動いた」ってことなんだろう。
ぼくには……そんな風に、まっすぐになれない。
少し計算して、少し怖くて、
いつも一歩、足りない。
◇
だけど──
「君の“好き”は、ぼくを壊して、また救う」
そんな風に思えた。
だから、今日の夜、語録ノートに書いてみた。
『本気で“好き”になった人は、
鏡みたいに、自分の弱さも映してくる。
でも、その弱さが、少しだけ誇らしく思えたら、きっと、それは愛。』
明日、ルカ様に、ちゃんとありがとうを言いたい。
「君がいてくれて、よかった」って。
……それだけで、たぶん、今日のぼくは救われる。




