40. (カイン視点②) 『“隣にいるだけで泣ける”なんて、ずるいよ、ルカ様』
──精霊会議。
それを聞いたとき、俺は最初、胸が高鳴った。
「すげぇな、ルカ様。やっぱり、選ばれた人だ……」って。
でもすぐに、その高鳴りが、しんと冷える焦りに変わった。
“……俺は、ただ見てるだけだった”
◇
ルカ様は、泣いてる誰かの手を迷いなく握る。
ケンカしてる園児の間に、ぴょこんと割って入る。
大人たちにも、魔法団の精霊たちにも、堂々と向き合う。
──俺は?
いつも、ルカ様の後ろで、見てるだけじゃないか。
「守りたい」って言ったくせに、
いざとなると、言葉も、行動も、足りない。
◇
夜。園の帰り道、こっそりルカ様の影を見つけて追いかけた。
光の精霊に祝福されたあとでも、
ルカ様は──ほんの少し、疲れた顔をしてた。
ミミルをぎゅっと抱きしめて、ベンチで座ってる。
……隣に座って、何も言わずに一緒に空を見上げた。
ルカ様が、ぽつりと呟いた。
「ほんとはね、まだ少しだけ、こわかったの」
「……でも、みんながいてくれるって思ったら、
ぼく、ちゃんと光でいられる気がしたの」
──涙が出た。
「ずるいよ、ルカ様。隣にいるだけで、泣けるなんて」
気づいたら、手を伸ばして、ルカ様の手を握っていた。
小さくて、あったかい。
「……いつか俺が、精霊に選ばれなくてもいい。
でも、お前の隣には、いたい。
この手を、話さないでいたい」
ルカ様は、にこっと笑った。
「カインくんの手、すごくあったかいから、大丈夫だよ。
ぼく、ずっと忘れない」
その言葉で、また泣きそうになった。
◇
日記にはこう書いた。
『憧れは、嫉妬に変わる前に、誓いに変えよう。
この手は、守るためにあるって、忘れたくないから。』
明日も、ルカ様の隣で。
手を離さないって、心に決めた。




