38. (ノア視点) 『観察者・ノア、語る。「ルカ様は、光そのものだ」』
僕は、たぶん“冷静なほう”の園児だ。
感情で動くより、よく見て、よく考えて、
一歩引いたところから周りを観察するのが好きだった。
──でも、ルカ様を見たときだけは、そんな自分が崩れる。
◇
ルカ様の登園初日。
ふわふわの白い髪、キラキラした金色の瞳、小さな身体。
正直、最初は「ちいさっ」って思った。
でも次の瞬間、僕の目は動かなくなった。
“なに、この人……美術館から逃げてきたの?”
それが最初の感想。
◇
でも、その日の午後、
砂場で誰かが道具を貸してくれなくて困っていた子に、
ルカ様がそっと自分のシャベルを差し出して言ったんだ。
「いいよ。使って? そのかわり、ぼくの分もお山つくってね」
──なにそれ。天才?
人に物を貸す優しさと、お願いを可愛く言える知恵と、
それを自然体でやれる無垢さ。完璧じゃん。
◇
……それからというもの、僕は密かにルカ様を「観察」している。
気づいたこと:
•僕らがケンカすると、絶対に最初に“中に入る”のはルカ様
•自分が泣きそうでも、他の子の涙を優先する
•でもたまに、「ミミルがいないと、ちょっとだけ涙目になる」
……あれ、もしかしてルカ様って、
本当は誰よりも繊細で、誰よりも頑張ってる?
◇
ある日、僕は聞いてみた。
「ルカ様って、怒ったりしないんですか?」
するとルカ様は、ちょっとだけ目を伏せて言った。
「怒ったら、ぼくの中が真っ暗になっちゃいそうだから……
できるだけ、心におひさま入れておきたいの」
──もう、完敗。
この人は、優しいんじゃない。“強い”んだ。
◇
日記には、こう書いた。
『ルカ様は、ただ可愛いだけじゃない。
誰かの心を“照らす”ために、そこに立っている。』
僕は、もっと知りたい。
あの人が、笑う理由も、泣かない努力も。
──もしかして僕は、観察者じゃない。
“ただの恋する5歳児”なのかもしれない。
明日は、語録ノートを一緒に作ってみようって誘ってみるつもりだ。




