3.『測定不能って、僕なにかやっちゃいました?
「……ミミル、いる?」
「ここにいるわ、ルカ。ちゃんと一緒よ」
優しい母の声に頷いて、僕はぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
今日は“魔力量測定式”っていう、ちょっとした儀式らしい。
この世界では、子供の魔力量を5歳で測定して、進路の目安にするんだって。
「緊張するか? ルカ!」
「……ううん。パパが隣にいるから大丈夫」
ガルド(父)はすでに泣いていた。鼻水ついてる。
「俺の子が天才なのは知ってるけどな……! 他人の前で見せつけるのは初めてでな……!!」
「……鼻ふいて?」
* * *
王都・測定の間。
貴族の子供たちが順番に魔力球へ手を乗せていく。
「第一王子、ルカ・エインズレイ様──」
僕の名前が呼ばれた。
ミミルを抱いたまま、測定球の前に立つ。
「測定球に触れて、魔力を流してください」
(……大丈夫。ちょっとだけ流せばいい)
でも──
「……ん?」
魔力が溢れて止まらなかった。
パキィィィン!!!!
測定球が、光とともに真っ二つに割れた。
「……ッ!!!」
「測定球が……!? 球が……砕け……っ!?」
「ま、まさか……っ、測定不能──!?!?」
測定官が白目をむいて倒れた。
周囲がざわつく。いや、騒然となった。
「ルカちゃんすごすぎ……」「何この子……天使じゃなくて神では……?」
「おい、騎士団に報告を──!!」「魔法団に保護申請を……ッ!!」
騎士団長:
「うちの息子です(ドヤ顔)」
魔法団長:
「うちの子です(確信)」
僕は……そっとミミルを抱きしめた。
「……ちょっと、やりすぎたかも……?」
こうして、僕の“チートバレ”は、あっという間に国中へ広まった。
ちなみにこの後、僕の魔力量に耐えられる測定球は全世界に存在せず、
「測定不能」の称号が国から正式に与えられた。
──って、称号なのこれ!?