34. (ユリウス視点) 『お見舞い戦争勃発──ぼくが一番ルカ様に近いはず!』
ルカ様が──風邪を、ひかれた。
世界が、止まった。
正確に言うと、ぼくの時間が止まった。
「……え、ルカ様が!? 熱!?」
朝、園に来てすぐ先生にそう告げられたとき、
お弁当箱を床に落として割った(初)。
◇
カインは走り去った。ノアは静かにノートを閉じた。
レオンにいたっては、なぜか壁を殴っていた(意味不明)。
でも、ぼくは……冷静だった。いや、冷静になろうとした。
“こういう時こそ、冷静に、品格を保ち、
未来の夫として最もふさわしい行動を……”
→結果:「今すぐお見舞いに行かせてください!!!!」
大声で絶叫して、先生に止められた。
◇
それでも午後──
4人で交代制の見舞いが許された。
順番は公平に、くじ引き。
1番目:カイン(引きがいい)
2番目:レオン(ムダに運がいい)
3番目:ノア(まぁ妥当)
→残り物:ぼく(不服)
けど、それでも。
ルカ様の寝顔を見られるだけで──ぼくは、生き返った。
◇
そっと、枕元に手紙を置いた。
『ぼくのすきは、まいにちふえていく。
またいっしょに、えがおで、あそびたいです。──ユリウス』
書いたあとで、甘すぎたかなって後悔した。
でも、読んでくれたら……きっと、笑ってくれると思った。
◇
……帰ろうとしたとき、ふとベッドの足元を見た。
……え?
そこには、手縫いのぬいぐるみが2体。
ルカと、ミミルを模したそっくりぬいぐるみ。
しかも──タグに書かれていた。
『カイン作。ルカ様専用。寝てもさびしくないように。』
……やられた。
◇
帰り道、レオンが言った。
「やっぱ……本気で結婚申し込まなきゃダメか」
ノアがつぶやいた。
「愛の競争は、いつか戦争になる」
ぼくも思った。
“もう負けない……!”
◇
──翌朝。
ルカ様は、元気に園に戻ってきた。
その姿を見て、胸が熱くなった。
でもその後。
ルカ様が「昨日ね、カインくんがくれたぬいぐるみが……」って話し始めて、
→ぼく、やっぱりまた叫んでしまった。
「ルカ様のとなりは、ぼくがいちばんに立つって決めてるからあああああ!!」
そして──全員そろって、正座。
◇
日記には、こう書いた。
『勝ち負けじゃないって分かってる。でも、
それでも、ルカ様の特別になりたいって思ってしまうんだ』
──明日は、ぼくの手縫いぬいぐるみを持って行くつもりだ。
ちょっとだけ、ミミルよりフワフワなやつ。




