33. 『ルカ様、風邪をひく──世界が止まった日』
朝、ちょっとだけ喉が変だった。
でも園には行きたくて、
ミミルを抱えて玄関に立ったら──
「……くしゅっ」
「……!」
「ルカ!?」
パパとママがほぼ同時に声をあげて、ぼくを持ち上げた。
◇
結果:強制おやすみ。
お部屋のベッドにぽふっと沈められて、
ミミルと一緒に、静かに寝かされてしまった。
──なんか、ふわふわする。
頭がちょっと熱い。
でも、気持ちは元気だった。
……最初は、静かだった。ほんの最初は。
◇
まず、精霊たちがやってきた。
「ルカ、花の香りで癒すね!」
「ヒーリング風ふきまーす!」
「魔法草汁、どばーっ!」
……うるさい。
というか、部屋の湿度がすごい。
次に、園児たちが交代で押しかけてきた。
「ぼくの手作りマフラー、巻いて!」(ユリウス)
「これ、ぼくの絵日記……元気になるよ」(ノア)
「ルカ様にだけ効くって言われた薬草茶……飲んで!!」(レオン)
「……何もできないけど……そばにいる」(カイン)
──みんな、ありがとう。
でも4人とも喧嘩しないで……!
◇
さらに、騎士団50名(パパ含む)が庭で正座してた。
「ルカ様の快癒祈願──ッ!!」
ママがそっと言った。
「……このままだと本当に“神様”になっちゃうよ……」
◇
でも、そんなにみんなが来てくれることが、
ちょっとだけくすぐったくて、うれしくて。
ぼくは、寝る前に語録を書いた。
『弱ってるとき、そっとそばにいてくれる人がいるって、
それだけで涙が出るくらい安心するんだね』
ミミルも、ぴぃと鳴いた。
──風邪は、すぐ治った。
でも、なんだか心は前よりもぽかぽかしてた。
みんなの中に、ちゃんと“ぼくの居場所”がある気がした。




