表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/59

32. (カイン視点) 『“ルカ様になろう”として、ぼくは自分を見失いかけた日』

ルカは、きれいだった。

ちがう、見た目のことじゃない。いや、見た目もおかしいくらいきれいだけど──

内側から、光ってるみたいだった。


 


誰かが泣いたら、近づいて。

転んだ子には、手を差し出して。

ミミルをぎゅっと抱いて、あったかい声で話す。


 


最初は、意味が分からなかった。


“なんでそんなに、やさしくできるの?”

“なんでぼくにも、何も求めずに、笑ってくれたの?”


 


──でも、あの日からずっと考えてた。

ルカみたいになれたら、ぼくも少し変われるんじゃないかって。


 



 


「……おはようございます」

言った。声が変になった。

ルカが“ぽかん”としてた。


「ミミル、かわいいな」

「……語録、いいと思う……」

うまく、言えない。けど、必死だった。


 


──でも、視線が痛かった。


ユリウスがじっと見てる。

ノアもそっとノートを閉じた。

レオンは笑ってたけど、目が笑ってなかった。


 


“まねっこ”。

その言葉が、頭の中をぐるぐるした。


 



 


昼過ぎ。

胸が、苦しくなった。


「はっ……はっ……あ、ああっ……」

手が震えてる。息が、吸えない。

魔封の呪符が熱くなる。──また、暴れる。


怖い。

また、壊しちゃう。

また、嫌われる。


 


──そのとき。


「カインくんっ!」


小さな手が、ぼくの手を握った。


 


「深呼吸して……だいじょうぶ、ぼくがいるから」


──ルカだった。

ミミルを抱いて、震えるぼくの前にいた。


 


「まねしなくていいよ。

カインくんのままが、いちばんだよ」


 


……その言葉が、

胸の奥に落ちた。


 


はじめてだった。


言葉って、こんなに、

泣かせるんだなって。


 



 


その日の夜。

誰にも見られないように、はじめて日記を書いた。


『あんなふうにはなれない。

でも、あの子は、“ぼくのままでいい”って言ってくれた。


それが、こんなにうれしいなんて──知らなかった』


 


明日、また“おはよう”って言おう。

今度は、“ルカのまね”じゃなくて。

“ぼくの声”で。


 


──魔封の呪符が、うっすらと光を弱めた気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ