30. 『ルカ様を知らない新入園児が転園してきて、園児たちがザワついたけど最後は全員泣いた回』
その日、園はそわそわしていた。
先生「はい、今日から新しいおともだちがきますよ〜!
ルカ様のクラスに入ります!」
──ドアを開けて入ってきたのは、
短く刈った銀髪、無表情な瞳、そして──
両手をポケットにつっこんだ、妙に大人びた少年。
「……カインです。よろ」
空気、ピリつく。
ユリウス(小声)「あのテンション……ルカ様と正反対……」
レオン「自己紹介が“よろ”って初めて聞いた……」
ノア「ミミルが一瞬かたまった……」
◇
カインくんは、座っても誰とも目を合わせず。
休み時間はひとりで木陰にいた。
話しかけても、「べつに」「知らん」ばかり。
──でも。
ルカは、気にした様子もなく、そっと近づいた。
「……こんにちは。ルカだよ」
カイン「……見りゃわかる」
「うん。でも、“こんにちは”って言いたかったから」
ルカは、にこっと笑った。
──カイン、無言。
……でも、少しだけ頬が赤くなったように見えた。
◇
昼食後の語録タイム。
ルカは、ふとカインのほうを見て言った。
「さいしょは、しらないことがいっぱいで、こわいよね。
でも、“ここにいていいんだ”って思えると、すこしずつ笑えるんだよ」
カインの手が、ぎゅっとテーブルを握った。
◇
翌朝。
カインは無言でルカの隣に座り、
ミミルをなでたあと、小さく言った。
「……これ、おまえの横に置いていい?」
手には、小さなメモ帳。
そこには、こう書かれていた。
『きみの「こんにちは」が、ぼくをつれてってくれた』
ミミルが光った。
園児たちが目を潤ませて見ていた。
ユリウス「なんか……泣きそう……」
レオン「え、もう“仲間”じゃない……?」
ノア「これは……ルカ様、またひとつ心を救ってしまった……」
◇
その日の園便りにはこう記された。
《園長コメント》
「子どもが変わる瞬間って、誰かのやさしさがふれたときなんですね。
今日はその奇跡を見ました。」
その夜、ルカはミミルにこう言った。
「うれしかった。“こんにちは”って、すごい魔法かもしれないね」
──語録はこう記された。
『とびらをひらくのに、ひつようなのは、大きな力じゃなくて、ちいさな声だった』




