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29. 『ルカ様ごっこが園児たちの間で大流行し、全員の性格がやさしさに染まりました』

きっかけは、いつもの遊びの時間。


ユリウスが、おままごとのセットを前に突然こう言い出した。


「今日のぼくは“ルカ様”だから。

このミミル役はノア、レオンは料理係ね。異論は認めない」


 


──それを皮切りに、

クラスのあちこちで“ルカ様ごっこ”が始まった。


「ぼく、クッキー配ります。これ、ルカ様の気持ちです」

「きみの心に、そっと寄り添いたい……ルカ様風に言ってみた」

「今日の語録ごっこタイム、始めまーす!」


 



 


【ルカ様ごっこのルール(園児たちが勝手に決めた)】


・言葉づかいはていねいに

・誰かをぎゅっとしていいのは、許可をとってから

・困ってる子には、まず「だいじょうぶ?」って聞く

・最後は「ハグでしめる」こと(※ミミルをかかえて)


 


先生がそっとメモしていた。


「この子たち……人としての基礎が、ルカ様ベースになってる……」


 



 


昼休み。

“ルカ様ごっこ”の中心になっていた数名が、僕のところに来た。


「ルカ様〜っ! 本物のルカ様〜っ!!」


「う、うん。どうしたの?」


「今日、全員ルカ様になって過ごしてるの! ルカ様になれるかな!?」


 


僕は少しびっくりしながら、ふっと笑った。


「うーん……なれるかは分からないけど、

きみの中の“やさしいとこ”を大事にしてくれたら、うれしいな」


 


──その瞬間。


全員が正座。


レオン「本人 降 臨」


ノア「本物の“語録”が出た瞬間、空気が変わった……」


ユリウス「尊すぎて……鼻血出そう……」


 



 


その日の園は、まるで神殿のような空気感だった。


誰も怒鳴らず、誰も泣かず。

おもちゃを譲り合い、手を取り合い、言葉で気持ちを伝えていた。


園長がボソッとつぶやいた。


「これ……理想の人類じゃない? 世界、救えるんじゃない?」


 



 


その夜、僕はミミルといっしょにお風呂でつぶやいた。


「ぼくみたいになるのは、ちょっと難しいかもだけど──

誰かの気持ちを、大事にしてくれるのは、うれしいなぁ」


ミミル「ぴぃ〜……」


──そして語録には、こう記された。


『なりたい“ぼく”より、やさしい“きみ”でいてくれるのが、いちばんうれしい』


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