22. 『ルカ様語録、ついに“朝の読み上げ”として園の正式カリキュラムに組み込まれる』
「──それでは本日の“ルカ様語録”、ユリウスくんお願いします」
「はいっ!!」
園の朝礼。
先生の掛け声に、前に出た金髪園児・ユリウスが手に持った魔導タブレットを掲げる。
「今日の言葉は……」
『ミミルが笑ったから、今日もいい日。』
「「「はぁぁぁぁあああ……(尊)」」」
園児たちが揃って胸を押さえ、目頭をおさえ、静かに頷く。
──そしてこう呟くのが、もう日課となっていた。
「……これで、今日も戦える……」
「ルカ様の言葉が、全身に染みわたる……」
◇
きっかけは数日前の魔法通信社からの連絡だった。
【新刊スピンオフ企画】
書名:『朝のルカ様語録365』
特徴:毎朝1語、心に効く。魔法朗読機能付き。
価格:国家推薦枠で園に無償配布。
「ありがたい……でもちょっと、怖くない……?」
僕はミミルを抱きながら、ママに小声で聞いた。
「大丈夫よ。ルカの言葉が“正しさ”じゃなくて“やさしさ”として広まってるから」
「でもさ、朝から僕の言葉を聞いて、みんな一斉に頷いてるの、なんかこう……宗教っぽいよ……?」
「安心して。パパがチェックしてるわ。“信仰じゃなく、愛慕として成立してる”って」
パパの職業:騎士団総隊長+非公式の“ルカ信仰監視官”
◇
翌週。
国営魔法放送で、こんな番組が始まった。
【毎朝7:00〜】
『ルカ様といっしょ・ことばのおはよう便』
内容:その日の“ルカ語録”を、ルカのボイスでお届けする。
《録音されたルカの声》
「きょうも、おきてくれてありがとう。
ミミルとぼく、きみがいるだけでうれしいよ」
──全国に、深いため息が流れた。
「今日会社クビになったけど、ルカ様の声で生き返った」
「ルカ様がいる世界に転生できてよかった」
「これもう天上界では?」
“癒し”が、宗教を越えて国家安定機能になろうとしていた。
◇
その日の夜、僕は空中庭園の星見塔でつぶやいた。
「……だれかの心に、そっと灯をともせたら、うれしいな」
ミミルはふわっと光って、僕の言葉に反応した。
明日の語録には、こう記される。
『泣いたあとに、笑えるなら、それって、いい涙だったってことだよ』
──またひとつ、やさしい朝が生まれていた。




