21. 『ルカ様専用の空中庭園が完成し、パパが“俺の庭より豪華やん……”と沈黙しました』
ある朝のこと。
目覚めた僕の枕元に、一通の封書が置かれていた。
【魔法団・建築局より】
──“ルカ様おひとり専用”空中庭園が完成しました。
本日10時、竣工式をおこないます。
どうか、お時間よろしければ、お越しくださいませ。
「……へ?」
僕はまだ寝起きの頭で、ミミルをぎゅっと抱きしめながら、ママに聞いた。
「これって……ぼく、何か頼んだっけ?」
「ううん。魔法団が勝手に“ルカ様の癒しのため”って言って建てちゃったみたい」
「勝手に?」
「ええ。しかも国費全額負担よ」
「……うそでしょ……?」
◇
午前10時。
僕はお屋敷の中庭から空中庭園へと向かった。
案内された先には、ふわふわと宙に浮かぶ巨大な魔法庭園。
・浮遊ベッドゾーン(完全防音+温度調整+ミミル用サブベッド)
・夜空観察用「星見の塔」(透明ドーム天井+自動星図魔法)
・“絶対にルカ様しか入れない”専用バリア(音声認証+感情波判定)
・庭園中を優しく漂う香り魔法(ルカの好む果実+花のブレンド)
「──こ、これ……」
「ルカ様のストレス値を常時モニタリングし、必要な癒し効果を自動展開するよう設計されております!!」
誇らしげに胸を張る魔法団員たち。
一方、後ろで腕を組んだまま沈黙する人物がいた。
そう。パパ(ガルド)である。
「……わしの訓練場より、整備が完璧じゃ……」
ボソッとつぶやいて、少し離れた柱の影で膝を抱え込んでいた。
「パパ、落ち込まないで……!これはみんなの気持ちだから……!」
僕は急いで駆け寄り、ミミルごとパパに抱きついた。
パパは驚いた顔のまま、そっと抱き返してくれた。
「……ルカが喜んでるなら、まぁ……ゆるす」
◇
夜、庭園の「星見の塔」で。
ミミルを膝に乗せ、僕はそっと空を見上げた。
「……ほんとうに、みんな優しいね」
ミミルはふわりと光り、星たちがそれに呼応して瞬いた。
この世界で僕は、
“誰かの特別”にはならない。けど、
“みんなにとっての光”でいられるのなら──
それは、きっと幸せなことなんだ。
そっと呟いた言葉が、魔法で記録され、
明日の魔法日めくりカレンダーの言葉になった。
『だれかのものじゃなくていい。
でも、だれかの理由になれたらうれしい』
──空中庭園は、この日から**“ルカ様の心を守る聖域”**として、国の保護対象に指定された。




