20. 『精霊たちが勝手に崇拝してきて、ルカが“世界樹の守人”にされました』
その日は、少しだけ風が強かった。
園の裏庭で、僕はミミルを抱きながら木陰で昼寝していた。
気持ちいい。あたたかい。鳥の声もやさしくて──
「……ッ! この波動は……!!」
「主様……目覚められた……!」
「主様ァァァァァァ!!」
突然、空間がピシッと割れて、
キラキラとした“何か”が数十体──いや、数百体──飛び出してきた。
「……えっ?」
ミミルがふるふると震えてる。僕も、動けない。
「主様、ご無事で……!涙が……!枯れまする……!」
「なんと神々しい小ささ……!90センチ……理想形……!」
「これは……我ら精霊界総意による崇拝でありますッ!」
──え、ちょっと待って。何の話!?
◇
そこから、事態は急加速した。
【世界樹精霊界 公式声明】
・ルカ・エインズレイ様を、第四代世界樹守人に自動認定
・理由:波動値∞、魔力適性S、容姿SSS、愛され指数∞
・特例として、本人の意思は“後日聞く”こととする(即日発令済)
……聞く気ないじゃん!?!?
王都の魔法議会が対応に追われ、
園は精霊対策のバリアを常時展開し、
ガルド(パパ)は剣を抜いて言った。
「精霊だろうが何だろうが、うちの子を巻き込んだら斬るぞ」
「おちついて。とりあえずミミルが震えてるから、まずは慰めてあげて」
「ミミルが国宝になってから、責任感が重くなってるのか……」
◇
その夜。
精霊たちがやや静まり返る中、
一体の“長老精霊”が、僕の前にふわりと現れた。
「主様。我らは、前世でもあなたに救われました。
それを……今、あなたの魂が思い出しかけておられる」
「……ぼくは、みんなのこと……まだ、よくわからないよ。
でも、“そばにいたい”って気持ちは、あるの」
長老精霊はにっこりと微笑んだ。
「それで十分。主様が主様であるかぎり、我らは仕えましょう」
そう言って、精霊たちはそっと去っていった。
──その後、“世界樹守人ルカ様”の称号が王立魔法記録に記載され、
園でのルカのあだ名が「ルカ様(精霊ver.)」に統一された。
でも、僕は変わらない。
今日もミミルを抱いて、園の教室でにこにこと笑っている。
「ねえミミル。
ぼく、またちょっと、世界が広がったみたい」
ミミルはふわりと光って、僕の肩にそっと寄り添った。




