19. 『ルカ様に癒された国民の声が一冊の本になって、ベストセラーになりました』
ある日、屋敷に届いたのは──
木箱にぎっしり詰まった手紙だった。
差出人:王都魔法通信社
件名:【読者投稿「ルカ様へ」封入箱/第1便】
「……これ、全部?」
「はい。現在、毎日約2,000通の手紙が届いておりまして……」
「な、なんで……?」
◇
きっかけは、あの魔法日めくりカレンダーだった。
そこに添えられたQR魔法コードに、
“あなたの感じたことを教えてね”と軽い募集が載っていたのだが──
・「“大丈夫”って言われて、電車に乗れました」
・「会社辞めようとしてたけど、もう一度がんばろうって思った」
・「誰にも必要とされてないと思ってた。でも、泣いてもいいよって言われて、泣けました」
・「生きてていいんだって、思いました」
──ルカの言葉に“救われた”という声が、爆発的に届いたのだ。
魔法通信社は、急遽プロジェクトを立ち上げた。
【書籍化企画】:
『この国の光──ルカ様に癒された人々の記録』
初版:5,000部 → 初日完売 → 緊急増刷中
発行:王都第一魔法出版社
編集:魔法通信社ヒューマン局
そして発売日。
朝から本屋に人が並び、
魔法書店のサーバーが一時ダウンし、
TV塔の電波で**“朗読特番”**が放送された。
その日──ルカはただミミルと遊んでいただけだった。
◇
パパとママが、あらためてルカの前に座った。
「ルカ。今回の本で得た印税と寄付金が、かなりの額になっていて──」
「このお金は、ルカの“好きなこと”に使っていいんだって」
僕は一瞬考えて、こう言った。
「……じゃあ、絵本をつくりたい。
みんなに“こわくない”って伝えられる絵本」
ミミルを撫でながら、僕は続けた。
「おとなも、こどもも、だれかのことをすきって思える世界がいい。
それって、きっと、“だいじょうぶ”って言ってもらえる場所だから」
◇
こうして、ルカは初めて“自分から与える”本をつくる決意をする。
それは、全員に等しく手を伸ばす、
“総受けの子”から“希望の子”への一歩。
でもきっと、ルカは変わらない。
今日も、ミミルと小さく笑っている。
──この日以降、国中の教科書には“ルカ様の言葉”が載るようになった。




