18. 『王城から縁談が来たけど、パパが剣を抜いて全面拒否しました』
ある日の昼下がり。
お屋敷に、王城から一通の書状が届いた。
【王命通達】
──王太子レヴィ・フォン・アルクレイン殿下より、
公爵令息ルカ・エインズレイ殿へ、縁談申し入れの旨──
「は?」
ママは優雅に紅茶を置き、
パパは剣を抜いた。
「宣戦布告か?」
「いや、まだ戦にはなってないわ。たぶん」
「これは明確な奪還行為だ。うちの子に手を出したらどうなるか、身をもって知らせる必要が──」
「落ち着いて。今からルカに“どうしたいか”を聞くのよ」
「え、問答無用で却下じゃないのか?」
「本人の意志が最優先でしょう? 私たちの子なんだから」
◇
ということで、僕は呼ばれた。
リビングの大人たち全員がやたら神妙な顔をしていて、
僕はミミルを抱いて小さく首をかしげた。
「……なにかあったの?」
「ルカ。王太子から、およめさんに来てほしいって言われてるの」
「……それって、けっこん?」
「そう。そういう意味」
少しだけ、沈黙が流れた。
僕は、静かにミミルを見た。
「……ぼく、けっこんしないよ」
ママはふっと微笑み、パパは剣をゆっくり納めた。
「ですよね!!!」
「はい解決!!!」
「国王陛下には、“却下されました”って伝えときますね!!!」
魔法団から光速で伝令が飛んでいった。
◇
でも、その日の夜。
王城から、ふたたび文書が届いた。
【再申請】:王太子殿下からの「せめてお友達に」希望
【追加申請】:王族関係者12名より「ルカ様との文通許可」申請
【嘆願書】:王国民代表より「ルカ様の声をCDにしてほしい」
……なんでどんどんエスカレートしてるの。
「……ぼく、だれのものにもならないって、いったのに」
ミミルの耳にそっと頬をつけて、僕は小さくつぶやいた。
「だって、みんながだいすきだから。
みんながそばにいてくれるだけで、じゅうぶんだから」
ミミルはふわっとあたたかく光った。
まるで「うん、それでいいんだよ」と言ってくれているように。
──後日、王城では王太子が食事を3日間拒否し、
国王が「ルカ様は国民すべての光」と公式発言するに至った。
そしてこの日以降、国中ではこう呼ばれるようになる。
『ルカ様は、すべての者に等しく微笑む“天上のこども”である』
──総受け、ここに極まれり。




