17. 『誕生日にプロポーズされすぎて、園のホールがパンクしました』
「──明日は、ルカくんのお誕生日です」
園の先生が、いつもの朝の会でそう告げたとき。
教室に走った緊張感は、ちょっと異常だった。
「ついに……!」「あの“運命の日”が……!」
「準備は万端だ。渡すのは例の指輪だ」「うちは花束だぞ」
「僕は詩!手書きの詩!!!」
「いや!歌を作ってきた!!」
えっ、なにみんな、何をそんなに……
(あっ。これ、まさか……)
◇
翌日。
園では“お誕生日会”が開かれた。
通常なら、プレゼントを渡しておしまい──のはずが。
「ルカ様、こちら、私からの贈り物です」
「どうか、未来の伴侶としてお迎えください」
「はい!うちもです!こちらは婚約用指輪のレプリカ!」
「うちは式場をすでに予約済です!このままゴールインを!」
──なにそれ!?!?
誕生日じゃなくて、結婚申し込み会になってるよ!?!?
先生が、裏で小さくつぶやいた。
「去年の園児が“ルカ様の未来の伴侶になれなかった”と泣いたせいで、今年から“申請解禁”になって……」
いや、その“制度”どう考えてもおかしいでしょ!?
5歳の誕生日で生涯の契約って、誰が考えたの!?!?
◇
ホールには、用意された壇上とマイク。
「次、ユリウスくん」
「はいッ!!」
金髪の王子系園児が、バラの花束を抱えて現れる。
「ルカ。僕はいつも君を見てる。君の涙も、笑顔も、全部大切にしたい。
だから──これを受け取ってほしい。僕の心の花束を!」
(あ、ちょっと詩的でかっこよかった……)
次、レオン。
「ルカ、お前は俺の全てだ。
何もかも守る。ミミルも、寝顔も、声も。俺の全部を、捧げる」
……重い。でもまっすぐすぎて泣きそう。
次、ノア。
「結婚という制度に縛られるのはおかしいと思う。
でも、俺がルカを好きだという事実には、何の矛盾もない。
……だから、これ。オリジナル魔法で作った“ルカルカ光線”」
(語感はダサいけど、光ってる……すごい……)
◇
結局、僕の目の前には、
贈り物と告白が137件積み上がった。
(……ミミル、たすけて……)
「みんな、ありがとう……。でも、ぼく──」
僕は、壇上から一歩前に出て、静かに言った。
「ぼくは、だれとも結婚しないよ。
だって、みんなだいすきで、えらべないから」
一瞬の静寂。
そして──
「「「それが……また……最高に好き……!!!!」」」
バタバタと倒れる園児たち。
その後、みんなでケーキを食べて、笑って、ミミルもケーキをもらった。
会場は崇拝と平和に包まれていた。
──その日以降、園の誕生日会は“式場の確保”が必須になった。
なぜなら、“ルカ様のプロポーズ日”として、国の祝祭にも組み込まれたからである。
「……ほんとに、普通に祝われたいだけだったんだけどなぁ……」
ミミルを抱いて、僕はそっとつぶやいた。




