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16. 『ありがとうって言っただけなのに、日めくりカレンダーになって売れてました』

その日、園の帰り道。


僕はいつものように、ミミルを抱えていた。

荷物を拾ってくれた園児の子に、自然にこう言った。


「ありがとう。……君がいてくれて、助かった」


それだけの一言だった。


──なのに。


 


「……今の……」

「“君がいてくれて、助かった”……」

「なにその言葉……尊すぎて……泣ける……!!」

「うちの家訓にします!!!」


え、待って!? そんな大げさな話じゃ──!


 



 


数日後、園内でこんなメモが出回り始めた。


《ルカ様語録:保存版》

1日目:「ありがとう」

2日目:「ミミルがいるから、大丈夫」

3日目:「今日も、世界はやさしかったね」

4日目:「だいじょうぶ、まだ泣いてないから」

5日目:「泣いてもいいよ。ぼく、そばにいるから」


 


「……こんなに書いてたの?」


「はい!自主制作です!!」

「ルカ様が言った言葉、毎日記録してます!!」

「目標は365日分です!!」


──ルカの言葉は記録されていた。


しかも。


「王都の出版社から連絡がきてます」

「“魔法日めくり”として正式販売したいとのことで……」

「初版1万部、初日完売したそうです!!」


えっ!? もう商品化してるの!?!?


 



 


最終的に、国が動いた。


【魔法文化財認定】:

書籍名『ミミルとルカの日々』

分類:魔法付き日めくり詩録(光魔法反応式)


・毎朝、1ページに魔法がかかり、ルカの声で“今日の言葉”が再生される。

・使用者の感情波を読み取り、必要な言葉が選ばれる。

・1日1回、魔力で“癒しの光”が発動。


 


──つまり、“精神安定魔具 × カレンダー × ルカボイス”である。


 


「いや、そんなつもりじゃ……」


僕がそう言っても、園児たちは目をキラキラさせて言った。


「ルカが“がんばってるね”って言っただけで、心が洗われた……」

「僕、毎朝泣いてる……」「それが生きる力になってる……」


……ルカ語録、恐るべし。


 



 


夜、僕はベッドの中でミミルを抱きながらつぶやいた。


「ありがとう。……でもほんとは、僕のほうこそ、みんなに“いてくれて助かってる”んだよ」


今日の魔法日めくりカレンダーには、こう書かれていた。


『君がいるだけで、ぼくは笑える』


──たしかに、僕が言った言葉だった。


でもそれは、僕がこの世界に“愛されてる”からこそ、出てきた言葉。


「ミミル。僕、ちゃんと、前を向けてるかな」


ミミルは変わらずあたたかく、ただ寄り添ってくれていた。


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