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15. 『ぬいぐるみのミミル、ついに“国家級魔法聖具”になりました』

その日、王都魔道具研究会の偉い人たちが、

公爵邸にやってきた。


「本日は、“魔力共鳴型守護道具”の検証のため──」


……はい、つまり「ミミル」の話である。


 


きっかけは、先日の“夜泣き事件”だった。


ルカの涙とともに、

ミミルが反応し、周囲の空間魔法が暴走するのを見て──


「このぬいぐるみ、ただ者ではない」

「明らかに、意志がある」

「もしかして、生きてないか?」


と、魔法学者たちが騒ぎ始めたのだ。


 


「……でも、ミミルは、ただのぬいぐるみなんだよ?」


僕は不安そうに言った。


「生まれたときに、ママが魔力で作ってくれたの。

僕の心を守るために、“世界に一体だけ”の、僕の友達」


そう話したとき、魔道具審査会の最長老がそっと言った。


「──つまり、“愛”から生まれた魔具、ということですな」


 



 


魔力感応、魔力融合、記憶波測定──


たくさんの術者が検証をした結果、

驚きの事実が明かされた。


【ミミルの構造魔法解析】


・製造者:レイ・エインズレイ(魔法団長)

・材質:高精度魔力糸+魂感応核

・中核魔法:感情同調型魔力安定結界

・特性:

 ①持ち主の魔力に完全同調

 ②周囲の感情波に自動反応し、主を癒す

 ③転移/自動召喚/共鳴防御システム搭載

・危険度:0(完全にルカ専用のため、他者には無害)

・分類:国家級魔法聖具(A-0001号)


 


──つまり、こういうことである。


ミミルは、「国家が認定した、世界に一体だけの愛の聖具」である。


 


「……ミミル、すごい」


僕がそう言って、いつものように頬をすり寄せると、

ミミルはほんのりあたたかくなった。


「……でも、僕にとってはずっと、“ミミル”のままなんだ」


「ただ、僕のそばにいてくれるだけで、十分なの」


 


審査会の大人たちは、全員が立ち上がって深く礼をした。


「──ルカ様。

あなたの心が、この国に奇跡を生んでいるのですね」


僕は少し照れて、ミミルの耳をくしゃっと撫でた。


 



 


後日、国から正式に書簡が届いた。


【ミミル:国家管理下登録証明】

→ 魔法遺物第1号「心護ミミル

→ 保護対象:ルカ・エインズレイ

→ 国費による保守・結界・修繕体制を整備済


 


──ちなみに、その日から「ミミル防衛部隊(非公式)」という名の護衛班が設立され、

ミミルが床に落ちそうになるたび、10人の騎士が同時に飛び込むようになった。


(なんか、前より過保護になってない?)


それでも、ミミルをそっと抱きしめながら、

僕は微笑んだ。


「ありがとね、ミミル。僕のこと、いつも守ってくれて」


 


“ぬいぐるみ”が、“家族”になって、“国の宝”になった。


でも、僕にとってはいつも変わらず──

ミミルは、僕だけのミミルだった。


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