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11. 『「ルカを養子にください」って手紙が山ほど届いたけど、全部お断りしました』

お披露目会から、わずか三日後。


僕の暮らす公爵家には──毎朝、バケツで水を汲むような勢いで、手紙が届いていた。


【ルカ様をご養子に迎えたい】

【婚約のご提案について】

【我が家の長男と引き合わせを──】

【いっそ当主として迎える準備がございます】


……えっと。何通目? 今日だけで……。


「67通です」


レイ(母)は微笑みながら、魔力で手紙を“灰”に変えていた。


「……ママ、燃やしすぎじゃない?」


「ええ、でも──」

「うちの子を“他の家の子”として見てくるような奴らに、ルカを渡す気はないわ」


後ろではパパ(ガルド)が大剣を研いでいた。

もう明らかに“穏やかな戦闘態勢”である。


「許可なくルカの名前を書いた家には、騎士団から直接“礼”をしてやる!!」


「礼」じゃなくて「制裁」って読みましたよ、今のトーン。


 



 


その日の昼、王城から正式な使者が来た。


「ルカ・エインズレイ様を、陛下の養子としてお迎えしたいと──」


「却下です」


ママが0.2秒で答えた。即答すぎて逆に使者が固まる。


「い、一度、ご本人のご意見を……!」


「ルカが自分で決めるわ。ね、ルカ?」


全員の視線が、僕に集まる。


僕はゆっくりと立ち上がって、ミミルを抱いたまま、はっきり言った。


「……お気持ちはありがたいけど、僕は、ここの子です」


「レイが、ママ。ガルドが、パパ。ミミルが、僕の家族。だから……お断りします」


使者の人が息を呑んだ。


そして──


「っ、ルカ様あああああぁぁ……ッ!!(泣)」


泣いた。え、泣いた!? 王宮から来た大人が!?!?


「そ、そんな尊いことを……この歳で……っ」


帰り際、彼は涙を拭きながら言っていた。


「やっぱり、ルカ様こそがこの国の“心”だ……」


 



 


その日の夜、僕はミミルを抱いてベッドに入りながらつぶやいた。


「……たぶん僕、またちょっと“広がって”しまったね、世界に」


でも、前と違って怖くはなかった。

誰かに利用されるんじゃないかと怯えたり、見返りを求められたりはしなかった。


──守ってくれる人が、ちゃんといるから。


「パパ、ママ、ありがとう……。僕、大丈夫だったよ」


ミミルが、ほんのりあたたかくなった気がした。


 


「でも、誰とも結婚はしないからね。全員、だいすき、だから」


それが、今の僕の答えだった。


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