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8. 『魔法訓練で「火を出して」と言われたので出したら、花壇が浮きました』

発熱も無事おさまり、園に復帰した翌週。


今日はついに──

魔法授業の日。


「ルカ様……ついに……!」

「我々、覚悟しております……!」

「初の全属性チート覚醒をこの目で……!!」


園児も先生も、なぜかみんな緊張していた。

(※ちなみに僕は“全属性魔法適性あり”という前代未聞の結果が出ている)


でも僕自身は、ただ“迷惑をかけないように”って、それだけを考えていた。


「……ミミル。落ち着いてやるね」


ぬいぐるみにそっと語りかけると、ミミルの毛並みが少しだけあたたかくなる。

いつも僕の気持ちをわかってくれる、不思議で優しい存在。


 



 


「では、まず“火”の魔力を手のひらに浮かべてみましょう」


魔法教師の先生が穏やかに言った。


隣ではユリウスが薔薇のような炎を浮かべてるし、

レオンはコンパクトな火球を正確に保ってる。

ノアは火をハートの形にしてニコニコしてるし……すごいな、みんな。


 


(……僕も、やってみよう)


深呼吸して、手を出して──


「ふわっ」


手のひらに、“ちいさな火”を──と思ったら、


ボウッ!!!


「きゃっ……!?」


突然、目の前の花壇がごと、浮いた。


「え?」「あれ?火?浮いた?花……花壇!?」


花壇の中に咲いていた花々が、魔力の圧でふわっと舞い上がり、

まるで空中庭園みたいにくるくると回転を始めていた。


先生:「……芸術ですね(泣)」

ユリウス:「……やっぱり君は、奇跡だ」

レオン:「今日も、尊かった……」

ノア:「ルカがふわってするだけで、全部浮いちゃうんだね♡」


園児たちの顔がどんどん赤くなってく。


 


「ちょ、ちょっと強かったかな……。ごめんね……」


僕がぺこりと頭を下げると、全員が同時に崩れ落ちた。


「ひえええ天使が謝った……!」「悪くないのに……!」「罪深い……!」


「ルカ……っ!」

ユリウスが膝をついて手を差し出す。

「ごめん、泣きそうだから、抱きしめてもいい?」


「ダメ。ルカは俺が今守ってる」

レオンがミミルごと僕を抱き上げる。


「ふわふわルカ発動中♡今なら3秒以内に心臓止まる自信ある♡」

ノアが頭をなでようとして、ママの魔法感知結界で阻止された。


 


こうして、「初めての魔法訓練」は僕にとっては“ちょっと火を出しただけ”。

でも、園にとっては「歴史に残るレベルの騒動」になったらしい。


僕自身はただ──

「誰かの迷惑にならないように」って、それだけを考えてるつもりなのに。


なのに、みんなはなぜか、そんな僕を「神聖視」してくる。


(……いいのかな、僕なんかが、こんなに……)


ふとよぎる不安を、ミミルがぬくもりで包んでくれた。


「……ありがとう、ミミル」


火も水も風も、僕が動かせる魔法より、

このぬいぐるみのぬくもりのほうが、ずっと強い魔法みたいだった。


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