第4話 吸血鬼トールの物語
吸血鬼の少年トールは、いつも人を信用せず生きてきた。
どれだけ親切にされても、相手に心の内を明かす事はない。
それは人を操れるという種族の特性が関係していた。
だから、自分の本当の種族を隠すように生きてきたトールは、自然と用心深くなったのだ。
そんなトールでも、唯一心を許せる人間がいた。
トールはその人間の為なら、命をかけても良いと思う程だった。
しかし、トールは大切なその人を失ってしまう。
信用できない大勢から守ろうとした結果、小さな檻を作って彼女を閉じ込めたのだが、彼女はそんな檻の中では生きられなかったのだ。
大切な人を失ったトールは、自分も後を追う事を決めたが、死ぬことはできなかた。
その理由は分からない。
トールは様々な方法を試したが、とうとう死ぬ事はなかわなかったのだ。
取り返しのつかない失敗から逃げ出す事の出来なくなった彼は狂ってしまう。
吸血鬼の力を使って、たくさんの人を困らせ、死なせたのだ。
そんな彼を、かつて友人だった者が討伐した。
彼は死ねないと思っていたが、その瞬間に体が灰になっていく。
友は泣いたが、トールは笑った。
ーーああ、やっとここから逃げられる。
彼にとって、現実世界で生きる事は織の中に閉じ込められる事と同じだったからだ。