第2話 大女優ベラと獣人ムウ
ベラは大女優だ。
何でも演じる事ができて、瞬時に感情を操る事ができる。
技術が優れているだけでなく、見た目も美しかった。
だから、誰もが彼女の虜になった。
しかし、そんな彼女に振り向かない存在もいる。
それは獣人の男性ムウだった。
ムウは、舞台の小道具を制作する人間であり、たまにベラと話す仲だ。
しかし、他の者と違て、ベラに夢中になりはしなかった。
そんな彼が気になったベラは、自分から話しかけていくうちに、いつしか恋に落ちた。
小道具制作や舞台の事にしか興味を向けないムウを、振り向かせようとやっきになる。
しかし、ベラの努力は実らない。
ムウは、ある日恋をしたが、その相手は何の才能もない少女で、尚且つどこにでもいるような凡庸な見た目の人間だったからだ。
プライドを引き裂かれたベラは、その少女に嫌がらせをするようになった。
その行動がばれたため、ベラは命を落とす事になる。
愛した獣人のムウによって。
舞台の上、小道具で首を絞められたベラは、生を終える。
だが、彼女はその恨みを忘れない。
死んだあとも舞台をさまよい、ムウと同じ種族である獣人を呪い続けていくのだった。
彼女のその行為は、魂の形を失い、ベラであった事などうかがい知る事が出来なくなるまで続いた。
獣人だけでなく、舞台に立つすべての物を呪い殺し始める。
だから彼女は最後に、ベラとしてではなく、怨霊として退治される事になったのだった。